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LTspiceで学ぶシグナル・パワーインテグリティ設計・解析の基礎(セミナー)
2024/12/12(木)10:00~17:00
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今回は、電子回路部品のうちコイルについて説明します。
電子回路を構成する部品のうち、コイル(インダクタとも言う)は、抵抗やコンデンサと並んで、重要な働きをしています。例えば、スマートフォンが電話の電波を送受信するためには必要で、スマートフォンには無くてはならない電子回路部品なのです。
目次
まず、コイルの概要を見ていきましょう。
コイルとは、簡単に言うと、線をグルグルと巻いたものの総称です。
電気とは関係ありませんが、グルグル巻いたバネのことを「コイルスプリング」と呼んだりします。
つまり、線をグルグルと巻いた形状のものをコイルと言っています。
導線に電流が流れると、その導線を中心に同心円状の磁界が発生します。
磁界は電流の流れる方向から見て右回りに発生するという特性があります。
いわゆる「右ねじの法則」といわれるもので、下図のようなイメージとなります。
この電流が流れる時の磁界を利用するのがコイル(インダクタ)という部品です。
コイル(インダクタ)の役割は大きくは二つあり、一つはエネルギーを蓄えるという役割です。
もう一つは、交流電流を流さないようにする(周波数に大きく依存する)という役割です。
では、その二つの役割について、具体的にみていきましょう。
コイルに電圧を加え、電流を流すと「磁束」というものが発生します。
これは磁石の磁束と同じものです。この磁束は外部の電源を切り離してもそのまま残ります。
このことは、コイルに電流を流すことでコイルが磁化されたことを意味します。
つまり、電気エネルギーが磁気エネルギーに変化してコイル内部に蓄えられたことになります。
単位電流あたりの磁束を作り出す能力を「インダクタンス」と呼びます。
蓄えられる磁気エネルギー量は、このインダクタンスで決まり、単位はヘンリー(H)です。
式で表すと、
Φ=L×I Φ:磁束(Wb)
[L:インダクタンス(H)、I:電流(A)]
となります。
また、蓄積できるエネルギーは、次式で表されます。
W=(1/2)×L×I×I W:エネルギー(J)
[L:インダクタンス(H)。I:電流(A)]
コイルに”直流電流”を流したとき、コイルは一瞬その流れを妨げた後は、ただの導体として作用し、直流電流をすんなり流します。
しかし、“交流電流”は、時間とともに周期的に大きさと向きが変化する電流です。
コイルに電流が流れようとすると、その電流による磁界が他の巻き線を横切るため誘起電圧が生じ、その電流変化を妨げようとします。
特に電流が急に増加しようとすると、電流と反対方向、つまり電流を減少させる方向に起電力が発生し、電流の増加を妨げます。逆に電流が減少しようとすれば、増加する方向に働きます。
交流電流の場合は電流の向きが入れ替わり続けるため、コイルもそれを妨げようとし続けます。
このようにコイルには、交流に対しては抵抗のように作用し、また、周波数が高くなるほど流しにくくするという性質があります。
コイルの種類には、どんなものがあるのでしょうか?
巻線の構造から分けると、主に巻き線コイル、積層コイル、薄膜コイルの3つに分けられます。
「巻き線コイル」は、絶縁被膜付き銅線をプラスチックのボビンやフェライトコアに、バネのようにらせん状に巻いたものです。
「積層コイル」は、導体金属をシートや基板の上に印刷して、何層にも重ねたものです。
小型になり、高周波特性に優れています。
「薄膜コイル」は、スパッタリングや蒸着技術を使って、印刷よりもさらに薄い金属膜でコイルを形成したものです。
小型で高精度なコイルが可能です。
また、機能で分けると下記のようなコイルがあります。
主に電源回路に使われるコイルを「チョークコイル」と呼んでいます。
交流電流を一方方向の電流に整えたり、ノイズを取り除いたりします。
特定の周波数の信号を取り出すのに用いられます。
主に、無線回路やオーディオ回路に用いられます。
AMラジオの内部を見てみるとフェライトの棒に導線を巻き付けたバーアンテナが見つかります。このアンテナもコイルの1種です。
トランスもコイルの1種です。使用される場面によって種類があります。
交流電圧を変換する電源トランス、音声信号を変換するオーディオトランス、中間周波数を選択する中間周波トランスなど、電圧、電流、周波数等によって多くの種類に分けられます。
以上、今回は電子回路の重要部品の一つであるコイル(インダクタ)の必須基礎知識を解説しました。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 E・N)
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