バイオリファイナリー立ち上げに向けた課題とは?

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バイオリファイナリー立ち上げに向けた課題

1.バイオリファイナリーとは?

バイオリファイナリー」という言葉をお聞きになったことがあるでしょうか?

リファイナリー(製油所)が原油から各種燃料や原料を生産する石油会社の工場を指すのに対して、バイオリファイナリーはセルロース系(草木等)のバイオマスや油脂を原油の代わりに原料として用いて、燃料等を生産する拠点のことを意味します。

従って、石油会社には必ずしも直結しない独立の生産設備に関する概念なのですが、近年、海外の石油会社がリファイナリーをバイオリファイナリーに転換する動きがみられます。日本の石油業界もこの転換を検討中のようです1)

二酸化炭素排出量削減の潮流の中でも液体燃料は必要ですから、リファイナリーの設備や蓄積した技術を転用してバイオリファイナリーを目指すのは理にかなっていると思われます。
 

2.バイオリファイナリーで具体的に何を生産するのか

IEA(国際エネルギー機関)が各種バイオ燃料のコスト評価を2020年に発表しました2)

IEAが見積もったコストの内訳を図1に示します。図1で縦軸のコストの単位はEUR/MWhです。Lowは低めの、Highは高めの見積もりです。

図1で特に注目していただきたいのは、A)早期上市への期待が高いセルロース系エタノールとB) 既存設備の転用が容易で相対的にコストが低いHVO(Hydrogenated Vegetable Oil=水素化植物油)です。HVOはバイオジェット燃料等に利用されるものであり、先行してバイオリファイナリーに導入されています。

 

IEAによるバイオ燃料のコスト見積もり
【図1 IEAによるバイオ燃料のコスト見積もり】
出典:IEA, Advanced Biofuels2)

 
その一方で、セルロース系エタノールはコスト高となっており、導入も進んでいません。
 

3.セルロース系バイオエタノールは何故高コストなのか?

セルロース系エタノールは草木や廃棄物が原料なので原料コストは低いはずなのに、図1に示したように、原料コストがほぼ1/3を占めています。
これはセルラーゼセルロースをグルコースに分解する工程で使用する酵素が高コストであるためです。

セルロース系エタノールをバイオリファイナリーに導入するためには、セルラーゼコストを低減する必要があります。
 

4.セルラーゼについて

セルラーゼは身近なものです。人間が消化できないセルロースをウシは消化します。これは、ウシやウマなどの草食動物やシロアリは、体内に存在する腸内細菌が生産するセルラーゼを利用してセルロースを分解しているためです。

セルラーゼがセルロースを分解する様子については、日本学術協会のWEBサイト「セルロース分解に関わる酵素の分子メカニズムの解析」をご参照ください3)
セルラーゼは、セルロースの表面に吸着するための結合部位と、分解反応を行う触媒部位とから構成される機能性が高い酵素です。その分解機構はまだ完全には解明されておらず、東京大学等で研究が進行中です。

なお、現在工業的に使用されているセルラーゼは、カビの仲間の菌体が生産するセルラーゼを分離回収したものです。
 

5.セルラーゼコスト低減の試み

セルロース系エタノールの生産を計画している企業は、当然ながら、セルラーゼコストの低減に取り組んでいます。セルラーゼをメーカーから購入するのではなく、自社プラントで内製する動きもみられます。

その中で、国際農研らが微生物の培養だけでセルロースを糖化する技術、即ち、微生物糖化法によりセルラーゼのコストをゼロにする技術を最近発表しました4)

図3に示すように、好熱嫌気性セルロース高分解菌クロストリジウム・サーモセラムと、新たに排水汚泥から発見された好熱嫌気性サーモブラチウム・セレラ A9 菌という二つの微生物を培養するだけで効率よくグルコースを生産できるとしています。注目に値する技術です。
 

国際農研らによる微生物糖化法
【図2 国際農研らによる微生物糖化法】
出典:国際農研 WEBサイト4)
※URL:https://www.jircas.go.jp/ja/release/2022/press202203

 

6.今後のバイオリファイナリー

セルロース系バイオエタノールの導入を目指して、セルラーゼコストの低減に向けた研究開発が今後も継続されると予想されます。

バイオリファイナリーは、水素化植物油に加えてセルロース系バイオエタノールが実用化した段階で、その名にふさわしいものに進化すると思われます。

 

(日本アイアール株式会社 特許調査部 N・A)
 
 


《引用文献・参考文献》


 

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