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ポリフェノールの基礎知識

ポリフェノールは、植物界に広く分布しており、天然物としてはこれまでに8000を超える化合物が確認されています。本コラムではポリフェノールの基礎知識についてご紹介します。

 

1.ポリフェノールとは

「ポリフェノール」とは、”たくさん(ポリ)のフェノール“という意味で、ベンゼン環に2つ以上の水酸基(OH基)が結合した化合物の総称です。

 

フェノール
【図1 フェノール】

 

ポリフェノールはほぼすべての植物が持つ苦味や色素の成分です。
ポリフェノールが注目されるようになったのは、「フレンチパラドックス」に関する研究発表がきっかけです。フランス人の食生活は肉やチーズなど高カロリーですが、他国と比べて心臓系の病気の死亡率が低く、その理由は赤ワインによるものという考察を、1992年フランスの科学者セルジュ・ルノー博士が発表しました。

以降、ポリフェノールに関する研究が加速度的に進められてきました。
甲南女子大学の寺尾教授・芝浦工業大学越阪部教授は、1985年から2020年12月31日に至る期間に「Polyphenol & Health」および「Food & Polyphenol & Health」の検索項目でPubMedに掲載された年度別の科学論文数を調査しました。近年ポリフェノールに関する論文数は顕著に増加しています。

 

「ポリフェノールと健康」に関する年度別発表論文数の変化
【図2 「ポリフェノールと健康」に関する年度別発表論文数の変化 ※引用1)

 

2.ポリフェノールの分類

ポリフェノールは、その構造によって分類されます。
代表的なポリフェノールの例では、赤ワインに含まれるアントシアニンやコーヒーに含まれるクロロゲン酸があります。ポリフェノールの分類を以下に示します。

分類 成分例 効果など
フラボノイド フラボン ルテオニン 抗アレルギー作用
フラボノール ケルセチン 脂肪の吸収性を抑制
フラバノン ヘスペリジン 血管強化作用
イソフラボン ダイゼイン 女性ホルモン整える作用
アントシアニン シアニジン ガンや糖尿病の予防
フラバノール カテキン 殺菌作用
カルコン カルタミン 食品着色料として利用
非フラボノイド フェノール酸 クロロゲン酸 肥満予防、がん予防
リグナン セサミン ガンや糖尿病の予防
スチルベン レスベラトロール 肌の弾力を改善
加水分解型タンニン ガロタンニン 生薬として利用
総合型タンニン プロアントシアニジン 抗アレルギー作用

【表1 ポリフェノールの分類】

 

フラボノイド類は、フラバン(A環ベンゼン環とB環ベンゼン環が炭素3原子で結ばれたフェニルクロマン構造)を基本骨格とし、C環のピラン環は開裂したもの(カルコン)や、フラン環となっているものもあります。

 

フラボノイドの基本骨格
【図3 フラボノイドの基本骨格】

 

フラボノイド類は最も研究されている分類であり、その中には緑茶に含まれるカテキン、大豆に含まれるイソフラボンなどがあります。

 

(+)-カテキンとイソフラボンの基本骨格
【図4 (+)-カテキンとイソフラボンの基本骨格】

 

3.ポリフェノールの市場

ポリフェノールを摂取すると、抗アレルギー作用抗疲労骨粗鬆症予防作用視覚機能調整作用などの有益な効果が、数多くの論文で報告されています。
フラボノイド類、縮合型タンニン類などは特定保健用食品や機能性表示食品として注目されており、70を超える成分が上市されています。
国内では高齢化社会における健康維持の需要やアンチエイジングへの関心の高まりから、ポリフェノールを含む特定保健用食品や機能性表示食品の事業、製品展開は続くものと考えられます。

2021年のポリフェノールの世界市場規模は16.8億米ドルで、2022年から2030年までの予測期間において年平均成長率5.3%で成長すると予測されています3)。ポリフェノールを含有する健康増進サプリメントや機能性食品への世界的な需要の高まりが、市場成長の要因となっています。

ポリフェノールは8000を超える化合物の存在が確認されていますが、化学構造によって効果が異なり、その作用メカニズムの多くは未だ解明されていません

今後の研究の発展により、さらなる市場拡大が期待されます。

 

(日本アイアール株式会社 特許調査部 Y・I)

 


《引用文献、参考文献》


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