【機械製図道場・中級編】形状バリエーションに応じた寸法表示方法(半径/直径表示、対称図形など)
【機械製図道場・初級編】では、基本的な寸法表示方法・寸法補助記号について数回にわたり学びました。
今回は”中級編”として、形状のバリエーションに対応した表示方法について、いくつかご紹介します。
目次
1.半径表示と直径表示
円弧を半径で表示するのか、直径で表示するのかの区分は、円弧中心角度が180°以下のときは半径とし、180°を超えるときは直径とするのが原則です。
ただし、180°以下であっても、その製品の機能上、あるいは加工の都合上、直径寸法を必要とする場合には、直径寸法の表示とすることも可能です。
2.対称図形の寸法表示
本連載・初級編の「形状の一部を省略して図面を描く(図形を省略できる場合の表示法)」で説明した内容に関連する事項ですが、対称図形の片側を省略する場合は、寸法線は中心線を超えた適宜の位置まで伸ばし、図を省略した側には矢印をつけません。
多数の直径寸法が並ぶような場合は、寸法線は中心線を超えずに寸法数字の位置をずらして見やすくすることもできます。
3.面の交差部に”丸み”あるいは”面取り”
面と面が傾斜をもって交差し、交差部に丸みあるいは面取りをつける場合は、丸みや面取り部分の先まで細線で面を延長して、面の交点を寸法表示の起点として示します。
必要あれば、面の交点を黒丸表示とすることもできます。
では、簡単な例で演習してみましょう。
【例題】形状バリエーションに応じた寸法表示
《 問題 》
下図は、正面図が片側省略断面、側面図は片側省略部分投影で、描かれています。
右端外周には4か所、外形丸み半径50の耳が付いています。
外周部は段差のあるテーパ状で、段差部には小径側に丸み、外径側に面取りされています。
耳の外周円弧と、段差部の直径を製図してください。
《 解答 》
《 例題の解説 》
【関連知識】こんなときの寸法表示はどうする?
(1)複数寸法を並列に表示するとき(並列寸法)
複数寸法を並列に表示するとき、大きい寸法を内側に持ってくると、寸法線と寸法補助線が交錯して読みづらくなるので、小さい寸法を内側にします。
表示寸法が多くて寸法線の間隔が狭くならざるを得ないときは、寸法数字を左右あるいは上下に振って表示することで、見やすくすることができます。
(2)キー溝が断面に現れるとき
ポンプや圧縮機の羽根車ボス部など、回転機にはトルクを伝達するためのキー溝が加工されている構造の部品が数多くあります。
キー溝が現れる断面に直径を表示するときは、図のように、キー溝のある側の寸法線の矢印をつけず、寸法補助記号φをつけて、内径寸法を表示します。
機械部品の形状には、様々なバリエーションがあります。
色々な形状の寸法表示を数多く経験して、作り手に設計意図を明確に伝えることのできる製図技術を高めてください。
(アイアール技術者教育研究所 S・Y)