【機械製図道場・入門編】補助投影図の描き方・使い方
前回のコラム「投影図の数と部分投影図の活用」で、立体形状を投影法で三面図に展開した図面を、物体形状に応じて見やすくして誤解を生じることがないようにするための手法である「部分投影図」についての解説および例題演習と、関連知識として「局部投影図」の解説とその使用例の紹介、を行いました。
今回は、投影図のもう一つのバリエーションである「補助投影図」の使い方について演習と解説を行います。
補助投影図は、物体に斜面部分がある場合に、その傾斜部の実形状を図示する必要があるときに用います。
実際、世の中に存在する機械やその構成部品は、互いに直交する三方向からの投影面に対して、傾いた斜めの面を持つ形状が少なくありません。
下図の例のように、斜面に対して角度を持ったまま平面に投影した図面は、その面を正確に表したものとは異なるものになります。
補助投影図は、斜面の部分に対して直交する方向から光を当てた時にできる投影図です。
前回のコラムで学んだ二つの投影図バリエーション、すなわち「部分投影図」の形で描くことも「局部投影図」の形で描くことも可能です。
では、簡単な例で演習してみましょう。
【例題】補助投影図を描く
《 問題 》
下図形状の物体は、左上斜面に穴や長孔があいています。
普通に側面図や上面図を描いたのでは、穴、長孔の形状、寸法、位置関係を正しく表示するのが困難です。
どのように図面を描くのが良いでしょうか?
《 解答 》
《 例題の解説 》
こんなときはどうする?状況に応じた補助投影図の使い方
回答例のように補助投影図を斜め上方向に展開して描くと、製図用紙の枠からはみ出してしまう場合は、下図のように、中心線をかぎ状につないで下にずらすか、矢印を用いた矢視図として、正面図の側方近傍に補助投影図を置く、などの方法があります。
また、例題の場合には、斜面形状は単純な長方形ですが、穴と長孔のみが、面垂直方向から見た図に示さないとわかりにくくなっています。
面全体は大きいが、表示させる必要がある部位は狭い範囲という場合は、傾斜面全体を描かずに、穴などの表示させたい部分だけを抜き出して局部投影図として描くこともできます。
全体を補助投影図として描くのか、局部投影図としたほうが良いのか、適切に選択しましょう。
例題の他にも、色々な傾斜形状を持つ物体の図面を描いて、補助投影図をうまく活用してわかりやすい図面を描く力量を高めてください。
次回の連載では、主投影図(正面図)の選び方について解説します。
(アイアール技術者教育研究所 S・Y)