先入観にとらわれるべからず(技術者べからず集)
人は先入観にとらわれやすく、技術者もまたしかりです。
メカニズムを解明する時は、とくに先入観を捨て、あらゆる可能性を考え実証実験をしていく柔軟性が必要となります。
今回は「技術者の先入観」について、いくつかの事例を紹介します。
技術者の先入観 事例1:「動く方が摩耗する」
通常摩耗するのは、激しく動く(摺動速度大)ことによってであり、摩耗対策は、とにかく摩耗に強い表面処理をすれば良いと考えます。
実際には、回転方向に動かないことによって、その場で微振動を受けて摩耗するという現象がありました。
必要な対策は、‘摺動方向だけでなく回転方向にも動かす’でした。
技術者の先入観 事例2:「部品同士が当たるから音がする」
部品同士の衝突音が異音を生じるとの仮説のもと、部品間の隙間を減らすなど金属どおしの衝突エネルギーを低減する対策をしたが、解決しなかったという事例もあります。
本当に衝突音だろうか?ということで、衝突する部分を実験的に削除して完全に接触しない状態でテストしたところ、全く同じ異音がしました。
金属接触音だと思われていたものは、実は油が高速で動く音だったのです。
技術者の先入観 事例3:「強度を上げた方が壊れない」
HIC(Hydrogen Induced Cracking,水素誘起割れ)現象においては、例えばメッキボルトの場合、強度の高い高硬度ボルトの方が、不利となります。
この場合には、ボルトの強度アップは完全に逆効果となってしまいます。
先入観を捨てることは本当に難しいことですね。
エンジニアは「先入観にとらわれるべからず」を常に意識しながら、日々の技術課題と向き合いましょう。
(アイアール技術者教育研究所 H・N)