「あわて者の誤り」と「ぼんやり者の誤り」をするべからず(技術者べからず集)

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「慌て者の誤り」と「ぼんやり者の誤り」とは

あわて者の誤り」と「ぼんやり者の誤り」は、学問的にも議論がされています。

データの統計に基づき仮説に対して検定を行う場合に、「あわて者の誤り」(アワテ者の誤り)は、”第一種過誤“、”Type I error“、”偽陽性“、”False positive“、”α error” などと呼ばれます。
一方、「ぼんやり者の誤り」(ボンヤリ者の誤り)は、”第二種過誤“、”Type II error“、”偽陰性“、”False negative“、”β error” などと呼ばれています。

「あわて者の誤り」は、統計結果では充分な根拠が表されていない仮説を誤って正しいと判定することを意味し、「ぼんやり者の誤り」は、統計結果ですでに表れている考えの根拠を見逃し誤った判定をすることを意味しています。

本コラムでは、エンジニアが開発や市場不具合対応において、「あわて者の誤り」と「ぼんやり者の誤り」をしないようするための考え方を説明したいと思います。

あわて者の誤り・ぼんやり者の誤りを防ぐには?

(1)不具合は課題と考える

新製品の開発や市場展開においては、大なり小なり不具合の発生がともないます。
不具合はイヤなものですが、与えられた「課題」と考え、一つ一つ乗り越えていかなければなりません。

開発段階では、むしろテスト方法を工夫して、起こりえる不具合・故障をたくさん出し、市場での想定外不具合の発生を防ぐ努力をしなければなりません。またそのような経験から多くを学ぶことができます。
 

(2)現状把握をしっかりと行う

問題解決で最も重要なことは、最初にしっかりとした現状把握を行うことです。
これができずに、「大変だ大変だと慌てて無駄な動きを行い、誤った方向に進む」ことが、エンジニアの「あわて者の誤り」です。

エンジニアは、データベースでものごとを考えなければなりませんが、一つのデータでも色々な可能性を考えなければなりません。
複数の可能性(仮説)に対して、どのような情報収集やデータ採取が必要かを考え、行動計画を立てて実行します。

「慌てて無駄な動きを行う」間に行うべきことは、現状を深く考えることです。
 

(3)三現主義による現状把握

不具合の検討のために机上検討や実験評価を行いますが、検討のためのインプットとして三現主義の要素、すなわち現場・現物・現実(現象)に関する情報を集め、現状の把握・理解をしなければなりません。

実際の場所では想定と異なる環境因子があったり、思いもよらない使われ方をしていることがあります。
現物には手がかりが残っていたり、詳しい現物分析で新たな発見があるかもしれません。
検討・評価は、ある仮説に基づいて行われますが、想定した考えと実際の不具合現象とは矛盾なく合致していなければなりません。
 

(4)FTAを工夫する

不具合解析ではFTAを用い不具合分野や要因系の絞り込みを行っていきますが、難しい不具合では、FTAの展開後も不具合原因が分からず、再びFTA上流の項目の検討にもどらなければならないときがあります。
この場合には、FTA上流で絞り込んだときの判断が合っていたかを確かめることとなりますが、充分な情報やデータに基づいているか、それらに対して正しい理解を行ったかという視点で確認を行います。

FTAのフォーマットに予め以下のような評価結果分類記号や色分けがしてあると、関係者の理解も同一にでき、調査の優先順位を決めるにも役立ちます。

  • 〇 / OK: 充分な理論検討・評価と情報収集がなされ判定OK
  • (〇)/ 見切りOK: 現場、現物及び現象に関する状況でOK
  • △ / 現状結果OKだが追加確認要: 検討方法や実験方法が不充分、n増し確認が必要
  • (x)/ NG可能性有り: 追加確認のための検討・評価が必要
  • x / NG: データベースで不具合要因と判定

 

(5)想定外を必死に考える

充分な現状把握ができたのちには、合理的な推定を行いますが、「合理的」が、自分の知る範囲の合理的となってしまわないように、考えを膨らませて「想定外」のことを必死に考えることが必要です。
 

(6)兆候を見逃さない

エンジニアが「ぼんやり者の誤り」をしないためには、データの意味することを見抜く力を高めるとともに、ものの差や兆候を見逃さない感性を磨くことも必要です。不良品あるいは故障にいたっていないものでも既に兆候が表れている場合があります。

たとえば耐久品の調査でも、OK/NGのような判断だけでなく、観察をしっかりして考察を行うと、OK品に存在する不具合の兆候を見つけることができます。
たとえば、結果はOKでも、同じ負荷を与えているのに劣化状況が異なるとか、負荷に対して劣化が大き過ぎるなどの場合には考察が必要です。

何か差を見つけたときに、「あわて者の誤り」を防ぐためには、「バラツキにより当然ある差を異常な差だと早合点して対策」してはいけません。
一方、「ぼんやり者の誤り」を防ぐには、「ただのバラツキだと決めつけ無視」することもしてはいけません。
せっかくとらえた兆候を無駄にせずに、データを重ねデータベースで考察をしなければなりません。
 

(7)チャンスを逃さず素早く行動する

「ぼんやり者の誤り」を防ぐには、チャンスを逃さず素早く行動することも重要です。
「素早く行動する」というと「あわて者の誤り」との区別がまぎらわしいと思いますが、エンジニアが陥ってはいけないのは、「現状把握をせずに、対応策に素早く走ってしまう」ことです。
ここで述べる「素早く」は、「現状把握のための情報収集のチャンスを逃さないように素早く行動する」ということです。現場で物を見るチャンスとか、人にものを聞くチャンスなどは、常に存在するわけではありません。

また、対応策が決まった後のスピード感も重要です。
短時間でデータが得られれば、対応策が完全に合っていない場合にも、新たな現象・事実がつかめ、軌道修正をしたり、知見を本格対策に反映する時間ができます。
 

エンジニアの「野生的カン」はどこから来るのか?

「ベテラン刑事のカン」ではありませんが、不具合対応において、どう判断して、どの方向に進むかには、「エンジニアの野性的カン」が活躍します。
なんとなく感じたことや違和感をデータで裏打ちさせることもあります。
正しい野性的カンは、真剣に悩んだ多くの経験と繋がっており、実は単なるカンではなく理由があるのだと思います。

エンジニアにとって、5年、10年はアッという間です。
この間に、実験レポートに、結果だけしか書かない「ぼんやり者」のエンジニアと、常に考察も書くエンジニアとでは、「エンジニアの野性的カン」に大きい差が表れます。

 

(アイアール技術者教育研究所 H・N)
 

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