医薬品工場における教育訓練の重要性と課題|リソース不足には外部の専門家とeラーニング活用がカギ

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医薬品工場(医薬品製造所)では人の命を預かる製品を作っていることから、法律による規制が厳しくGMPを始めとするルールも多岐にわたります。その法律の改正や技術の進歩もあるため、人材の育成には高度かつ継続的な教育訓練が必要となります。

本コラムでは、医薬品製造における教育の重要性と課題についてご説明いたします。

1.医薬品工場における教育訓練は難易度が高い

医薬品製造は、GMPはじめ各種法令に準拠している必要があります。
医薬品は品質と安全性が求められるため、各段階で厳格な品質管理が求められるためです。

例えば、以下のような課題があります。

  • 新しい技術や規制についていく必要がある
  • データや記録についても厳格な管理が求められる

これらの要因から、現場の関係者全員が関係する法令を理解し、それに沿った行動を実践できる必要があるため、他の産業に比べて教育訓練の難易度も高くなってしまうことは、製薬メーカーの教育ご担当者の皆様が日頃お感じのことでしょう。

 

2.医薬品製造所で教育訓練をするべき3つの理由

教育訓練すべき3つの理由

ここで基本に立ち戻り、医薬品製造所で教育訓練をするべき理由は何かを整理してみましょう。

  • 1. 正しい知識がないと行政処分を受ける可能性がある
  • 2. 行政による査察強化への対応が必要
  • 3. グローバルな基準に対応する専門的人材が不可欠

とくに、行政処分は製造所全体の稼働・企業の存続にもかかわってくる重要な内容です。
それぞれ、詳しくご説明いたします。

 

(1)正しい知識がないと行政処分を受ける可能性がある

昨今では、業務停止命令を受ける医薬品製造メーカーが増えています1)
業務停止命令を受ける背景には、国が承認していない方法で製造されていたなど法令違反が見られたことが理由です。

きちんと国からの承認を受けていたにも関わらず、実際は承認されていない方法で製造される理由は、製造現場での慢性的な人手不足や製造日程の圧迫、海外との熾烈な価格競争など要因はさまざまです。
ただし、承認されていない方法での製造は、最悪のケースでは健康被害につながることもあるからこそ、一度発覚すれば製造所は長期間操業停止となります。
出荷が滞れば、市場で医薬品不足になり人命にかかわるばかりか、たとえ操業停止が解かれても信用問題は残るため、企業の存亡にかかわる危機を招きます。

このような事態を防ぐためにも、GMPをはじめとした正しい知識が必要です。
また、GMPについては教育訓練を行うこと自体が省令に定められています。製造現場で働くひとり一人が同じ意識を持ってGMPを遵守した製造を行わなければいけません。正しい知識を持っていれば、GMPを遵守した製造かどうか判断できるようになります。

 

(2)行政による査察強化への対応が必要

これまでは、都道府県による製薬メーカーへの立ち入り調査は事前に日程などを通告したうえで行われていました。
ただし、行政処分が相次いだため、事前通告せずに行う「無通告査察」の機会が増えています。不正しているかもしれないという前提で「抜き打ち」を行い、査察を強化しています。

抜き打ち調査が来ても、不正がない状態にするためには従業員の教育が大切です。
同時に、抜き打ち調査があっても慌てずに対応できるよう、自主点検も強化する必要があります。

抜き打ち調査への対応や、自主点検の重要さを理解するためにも従業員の教育が必要です。

 

(3)グローバルな基準に対応する専門的人材が不可欠

GMPは、医薬品製造における製造管理や品質管理に関する国際的な共通基準です。経営・事業のグローバル化が進むなか、専門的な人材は必要不可欠となっています。

ただし、GMPの知識は多岐にわたります。基礎知識の教育から、文書の制定や改定時の周知、様々な実務スキル・ノウハウなどです。これらの知識を習得していくためには、継続的かつ長期の教育訓練が必要となります。

 

3.医薬品工場における教育訓練|4つの課題

教育訓練4つの課題

上述のように、医薬品製造所では教育訓練が必要不可欠ですが、これらの教育訓練にはどのような課題があるのでしょうか?
多くの医薬品製造企業でみられる問題(悩み)として、以下のような事項があります。

  • 1. 人事部門が必ずしも教育にあたれるわけではない
  • 2. 品質保証など専門的知識を有する人材のリソースが足りない
  • 3. 新人と既存社員の教育のバランスが難しい
  • 4. 社員を集めて教育するのが難しい

それぞれの課題について、詳しくご説明します。

 

(1)人事部門が必ずしも教育にあたれるわけではない

多くの医薬品メーカーでは、人事部門で自社業務に関する導入教育を行っていることでしょう。
ただし、例えばGMPに関連する教育については、医薬品製造に関する実際の業務経験も重要であり、人事専門のスタッフのみで完結することが難しいケースもあります。そのような場合に適切な教育を行うためには、専門知識を有する関連部署の協力が必要となります。

 

(2)品質保証など専門知識を有する人材のリソースが足りない

品質保証や品質管理では、製造所全体の管理が必要です。また、相次いで発生した医薬品製造の不祥事を踏まえ、自社の管理方法の見直しなど業務は多岐に渡ります。

教育訓練を指導できるレベルの専門知識を持つ人材は、これらの仕事が集中して多忙であることが多く、教育訓練業務がこれらの方々に大きな負担となる可能性もあるようです。

 

(3)新人と既存社員の教育のバランスが難しい

新人に行う教育内容と、既存の社員に行う教育の内容は変わってきます。また、部署によっても優先すべき教育内容にも違いがでます。

それぞれのレベルや状況にあったカリキュラムを用意するには、リソースが必要です。多種多様なカリキュラムを用意するリソースが確保できず、課題を感じている製造所もあります。

 

(4)社員を集めて教育するのが難しい

医薬品に限らず、製造業では人手不足で悩んでいる会社も数多くあります。医薬品工場によっては2交代制や3交代制のところもあり、一度に社員を集めて教育する時間を取るのも難しいケースもあります。

感染症流行の影響で、大人数での集合研修をするようなスタイルも変化も少なくなりました。動画教材などで社員それぞれのタイミングに合わせて教育訓練を受けられるシステムを構築するなど、柔軟な対応と教育環境の整備が求められています。

 

4.医薬品工場における効率的な教育訓練方法

効率的な教育訓練2つ

医薬品製造所において教育訓練方法を効率化する方法としては、一般的・汎用的な知識の教育について、専門的な外部リソースを活用することが考えられます。具体的には以下の2つがあります。

  1. 専門家に講師を依頼する
  2. eラーニングを活用する

これらを活用した場合のメリットは以下の表の通りです。

メリット 理由
専門知識を習得できる 最新の知識と実践的な経験を持っている
法令の改正や最新技術についても学べる
時間とリソースが確保できる 人事部門、品質保証部門ともに、教育訓練に対する負担を軽減できる
カスタマイズが可能 企業のニーズや課題に合わせて教育内容をカスタマイズしてもらうことで、より効果的な学習ができる

ここからは、それぞれの方法を使うときのポイントについて説明します。

 

(1)専門家に講師を依頼する

例えば、GMPの専門的知識を有している人材のリソースが社内に足りない場合には、外部の専門家に講師を依頼する方法があります。

GMPやいわゆるGXPと呼ばれる医薬品関係の省令について指導できる専門家は、その多くが製薬の現場にて品質保証などの部門で指導的立場にあった方々です。
特に、現時点でこれらの専門家として活動する方々は、日本でのGMP制度の採用、製薬会社の社内での対応部門立ち上げなどGMP制度の草創期から社内外での仕組みづくりに携わった方が多く、制度の意義や現場での様々なトラブルのパターンを熟知しており、市販の書籍や、公営や無料の資料や教育では学びえない、あなたの会社ではどこまでどのような対策を行えば必要十分であるかという機微にも通じていることが多いです。
GMPなどの文書や運用については、各社それぞれが工夫して仕組みを作り上げているため、あらかじめその点を相談でき、個々のケースに柔軟に対応できるタイプの講師を選ばれるとよいでしょう。

 
社内での教育訓練に課題を感じている場合には、専門家に講師を依頼することも検討してみましょう。
教育対象となる人数が少ない場合は、定期的に開催されている公開セミナーに参加する方法もあります。

 

《医薬品製造や薬事のエキスパートによる研修サービス》

アイアールでは、出張研修サービスも提供しております。企業向けのオーダーメイド型研修となっておりますので、ご要望にお応えして研修を行います。
事業所への訪問はもちろん、オンラインでのライブ講義など、さまざまな形式での受講に対応可能です。
(※出張研修サービスについてはこちらをご参照ください。)

 

(2)eラーニングを活用する

eラーニングを活用すれば、教育訓練する側の社員の負担が軽減するのはもちろん、各人が自分のスケジュールに合わせて柔軟に受講できます。受講者管理ができるものやテスト付きのものにすれば、どの社員が受講してどのくらいの理解度なのかも管理できます。

 

《医薬品メーカーでも活用中!製造業向けeラーニング”Tech e-L”》

製造業向けeラーニング「Tech e-L」は、医薬品メーカーでの導入教育にも活用されています。
医薬品製造所に入社する新人社員や他業界からの中途採用におすすめなのが「GMP入門」です。絶対に押さえておきたいGMPの最重要基礎知識を習得するための講座で、概要や全体像を把握してその後の教育をスムーズにすすめることができます。
そのほかにも「医薬品業界の基礎知識」「医薬品製剤入門」「医薬品知的財産の基礎知識」など、導入教育レベルの社員に対して、その後のハイレベルな教育を円滑に進めるための基盤づくりを目指したプログラムを用意しております。(※Tech e-Lの講座リストはこちら)

 
医薬品工場における教育についてお悩みの方は、ぜひアイアールにご相談ください。

 
(アイアール技術者教育研究所 K・H)

 


≪引用文献、参考文献≫
  • 1)【詳しく】製薬会社の行政処分相次ぐ メーカーに何が?(NHKニュース WEBサイト)
    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220515/k10013610881000.html

 

 

 

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