【医薬品製剤入門】シロップ剤とドライシロップ剤

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シロップ剤

シロップ・ドライシロップ剤は、小児科で処方されことが多い剤形ですね。
味の悪い抗生物資などに使われます。

今回は、シロップ・ドライシロップ剤に焦点を当ててみました。

1.シロップ剤とは?ドライシロップ剤とは?

日本薬局方では、次のように記載されています。
 

① シロップ剤

“(1) シロップ剤は,経口投与する,糖類又は甘味剤を含む粘稠性のある液状又は固形の製剤である.本剤には,シロップ用剤が含まれる.”
 

② ドライシロップ剤

“(1) シロップ用剤は,水を加えるとき,シロップ剤となる顆粒状又は粉末状の製剤である.ドライシロップ剤と称することができる.
(3) 本剤は,通例,用時溶解又は用時懸濁して用いる.”
 

「シロップ剤」とは、白糖の溶液または白糖その他の糖類または甘味剤を含む医薬品を濃稠な溶液や懸濁液とした液状の内用剤をいいます。

また、用時溶解または懸濁して用いる製剤を「ドライシロップ」といいます。ドライシロップは、経時変化する薬剤(例えば、抗生物質、化学療法剤、抗がん剤など)に用いられます。

 

2.シロップ剤等の利点

シロップ剤・ドライシロップ剤は、苦み等をマスクできる小児・嚥下困難な高齢者などの服用が容易になる等のメリットがある製剤です。

その一方で、保存性・携帯性に劣る等のデメリットもあります。
 

3.シロップ剤等の製造方法

シロップ剤・ドライシロップ剤の製法としては、日本薬局方に下記の記載があります。

① シロップ剤

“(2) 本剤を製するには,通例,白糖,そのほかの糖類若しくは甘味剤の溶液又は単シロップに有効成分を加えて溶解,混和,懸濁又は乳化し,必要に応じて,混液を煮沸した後,熱時ろ過する.”
 

② ドライシロップ剤

“(2) 本剤を製するには,通例,糖類又は甘味剤を用いて「1.3.顆粒剤」又は「1.4.散剤」の製法に準じる.”

(顆粒剤や散剤の製法につきましては、顆粒剤や散剤のコラムをご参照願います)

 

4.単シロップとは?

「単シロップ」とは、白糖の水溶液で、甘味剤として種々の配合剤の味付けに使用されます。

上記のようにシロップ剤の製造に用いられますが、服用時にも用いられることもあります。
例えば、タミフルは苦いため、ドライシロップ剤としての製剤がありますが、それでも小児が嫌がるときには、単シロップと混合して服用させる方法があるようです。

 

5.シロップ剤等の添加物

シロップ剤に用いられる添加剤としては、白糖,その他の糖類若しくは甘味剤があり、ドライシロップ剤には、さらに結合剤が用いられことがあります。

 

6.シロップ剤等の製剤試験法

日本薬局方では、医薬品として製造されたシロップ・ドライシロップ剤が下記試験法に適合することが定められています。
 

(1)製剤均一性試験法

個々の製剤間での有効成分量の均一性の程度を示すための試験法です。
有効成分の含量が、表示量の一定範囲内にあることを確認し、均一性を保証します。
製剤含量の均一性は、含量均一性試験又は質量偏差試験のいずれかの方法で試験されることになっています。
第17改正日本薬局方6.02に詳細な試験法が記載されています。
 

(2)溶出試験法

シロップ剤で懸濁した製剤は溶出試験法に適合することが定められています。
溶出試験法は、経口製剤について溶出試験規格に適合しているかどうかを判定するために、また、著しい生物学的非同等を防ぐことを目的としている試験です。
第17改正日本薬局方6.10に詳細な試験法が記載されています。
 

(3)崩壊試験法

ドライシロップ剤で用時溶解して用いる製剤以外は、さらに崩壊試験法に適合することが定められています。
崩壊試験法は、シロップ用剤が試験液中、定められた条件で規定時間内に崩壊するかどうか否かを確認する試験法です。
製造工程のバラツキが小さいことを確認するための品質管理が主目的としています。
第17改正日本薬局方6.09に詳細な試験法が記載されています。

 

7.シロップ剤の医薬品・ドライシロップ剤の医薬品

添付文書情報で、シロップ・ドライシロップ剤を抽出してみました。

種類 医薬品数(*) 主な医薬品
シロップ剤  115以上 「アシクロビル」「アセトアミノフェン」「オキサトミド」「ケトチフェン」「セネガ」「バルプロ酸Na」等々
ドライシロップ剤  150以上 「アシクロビル」「アンブロキソール」「カルボシステイン」「クラリスロマイシン」「クレマスチン」「テオフィリン」「フェキソフェナジン」「プランルカスト」「プロカテロール」等々

(*)医薬品数はジェネリック医薬品なども含みます。

なお、シロップ剤、ドライシロップ剤の両方あるものも多く見受けられます。

 

8.シロップ剤・ドライシロップ剤に関する特許・文献の調査

J-Platpatを用いてシロップ・ドライシロップ剤の特許を調査してみました。(調査日:2021.3.29)
 

(1)シロップ剤・ドライシロップ剤に関する特許検索

① キーワード検索
  • シロップ/CL*A61K/IP ⇒ 2409件

(※医薬品に関するメインの分類(FI)の「A61K」に限定しています。)
 

② IPC(国際特許分類)による検索

シロップ剤の特許を見てみると、「A61K9/08」(特別な物理的形態によって特徴づけられた医薬品の製剤 ・溶液剤)、「A61K9/10」(・分散剤;乳剤)あたりが多く付与されているようですので、これを用いて検索してみます。

  • シロップ/CL*A61K9/08/IP ⇒ 611件
  • シロップ/CL*A61K9/10/IP ⇒ 712件

ドライシロップ剤の場合は、「A61K9/10」の他、「A61K9/14」(・粒状剤,例.散剤)、「A61K9/16」(・・塊状剤;顆粒剤;マイクロビーズレット)で検索してみました。

  • ドライシロップ/CL*A61K9/10/IP ⇒ 58件
  • ドライシロップ/CL*A61K9/14/IP ⇒ 131件
  • ドライシロップ/CL*A61K9/16/IP ⇒ 99件

これらの中には、「ドライシロップ剤」「高含量L-カルボシステインドライシロップ剤」「塩酸エピナスチンドライシロップ剤」「難水溶性薬物を含むドライシロップ剤」等々の特許が見受けられました。
 

③ Fタームによる検索

シロップ剤に対応するFタームとしては、「4C076AA22」(懸濁剤、シロップ剤)がありますので、これを用いて検索してみます。

  • 4C076AA22/FT ⇒ 6451件

この中には、IPCでヒットしたものと同じ特許が多くヒットしていました。

なお、シロップ剤には「4C076AA11」(溶液剤)や「4C076AA16」(分散剤、乳剤)が、ドライシロップ剤には「4C076AA16」「4C076AA29」(粉末剤)などが付与されているものもあるようですので、調査によっては考慮する必要がありそうです。

  • シロップ/CL*4C076AA11/FT ⇒ 717件
  • シロップ/CL*4C076AA16/FT ⇒ 963件
  • シロップ/CL*4C076AA29/FT ⇒ 758件

 

(2)シロップ剤・ドライシロップ剤に関する文献調査

J-STAGEを用いて文献調査を行ってみました。(調査日:2021.3.29)

  • 全文検索: シロップ剤 or ドライシロップ剤 ⇒ 625件
  • 抄録検索: シロップ剤 or ドライシロップ剤 ⇒ 37件
  • 全文検索: (シロップ剤 医薬) or (ドライシロップ剤 医薬) ⇒ 283件
  • 抄録検索: (シロップ剤 医薬) or (ドライシロップ剤 医薬) ⇒ 0件

「ドライシロップ剤を添加したシロップ剤の秤取精度の評価」などの文献が見られました。

 
これらの特許情報や文献の内容を確認してみたい方は、ぜひ実際にデータベースで検索してみましょう。
 
[※シロップ剤以外の経口液剤の基礎知識はこちらのページをご参照ください。]
 

(日本アイアール株式会社 特許調査部 S・T)
 

医薬品関連の特許調査なら日本アイアール

 

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