【医薬品製剤入門】経口液剤とは?種類・特徴など要点解説

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経口液剤

経口液剤は、内用液内服液などがありますが、大変飲みやすい剤形といえます。
胃薬などで処方された方も多いのではないでしょうか。

今回は、医薬品製剤のうち「経口液剤」についてまとめてみました。

なお、「シロップ剤」も経口液剤に含まれますが、その解説は「シロップ剤とドライシロップ剤」のページに別途まとめていますので、そちらをご覧いただけますようお願い致します。

1.経口液剤とは?

日本薬局方では、
「(1) 経口液剤は,経口投与する,液状又は流動性のある粘稠なゲル状の製剤である.本剤には,エリキシル剤,懸濁剤,乳剤及びリモナーデ剤が含まれる.」
と記載されています。

経口液剤の種類

では、経口剤の種類についてみてみましょう。

エリキシル剤は、「(1) エリキシル剤は,甘味及び芳香のあるエタノールを含む澄明な液状の経口液剤」と日本薬局方で記載されています。エタノールは溶解目的であったり、芳香付けで添加されたりして、その含量は4~40%とさまざまです。甘味剤としては白糖が用いられるようです。

懸濁剤は、「(1) 懸濁剤は,有効成分を微細均質に懸濁した経口液剤である.」で、有効成分が水に不溶であることが特徴です。

乳剤は、「(1) 乳剤は,有効成分を微細均質に乳化した経口液剤である.」で、乳化剤による分散させた製剤です。

リモナーデ剤は、「(1) リモナーデ剤は,甘味及び酸味のある澄明な液状の経口液剤」で、酸としては希塩酸、クエン酸、酒石酸などが用いられ、甘味剤としては単シロップが用いられます。長時間置くと糖が分解するため用時調整されます。

なお、経口の液状製剤にはこの他、エキス剤(生薬の浸出液を濃縮して製したもの)、酒精剤(生薬等で揮発性の有効成分をエタノール又はエタノールと水の混液に溶解して製した液状の製剤)などがあります。
 

2.経口液剤の条件

経口液剤の条件としては、主に下記のものが挙げられます。

  1. 飲みやすいこと(味や香り等が良いこと)
  2. 長期間安定であること(分解、配合変化等がないこと)
  3. 雑菌等の繁殖がないこと など

 

3.経口液剤の特徴(メリット・デメリット)

経口液剤は、一般的に下記のようなメリットがある製剤です。

  • 他の固形製剤(錠剤、カプセル)により服用しやすい
  • 吸収が速くなることが期待される など

ただし、下記のようなデメリットもあります。

  • 保管・携帯に不便な面がある
  • 薬剤の安定性に注意が必要(分解、変質等)
  • 開封後は長期保存ができない(微生物による汚染・繁殖)
  • 配合変化が起こりやすい など

 

4.経口液剤の製造方法

経口液剤の製法としては、日本薬局方に下記の記載があります。

“(2) 本剤を製するには,通例,有効成分に添加剤及び精製水を加え,混和して均質に溶解,又は乳化若しくは懸濁し,必要に応じて,ろ過する.”
 
エリキシル剤は、“(2) 本剤を製するには,通例,固形の有効成分又はその浸出液にエタノール,精製水,着香剤及び白糖,そのほかの糖類又は甘味剤を加えて溶かし,ろ過又はそのほかの方法によって澄明な液とする.”

懸濁剤は、“(2) 本剤を製するには,通例,固形の有効成分に懸濁化剤又はそのほかの添加剤と精製水又は油を加え,適切な方法で懸濁し,全体を均質とする.”

乳剤は、“(2) 本剤を製するには,通例,液状の有効成分に乳化剤と精製水を加え,適切な方法で乳化し,全体を均質とする.”

経口液剤の製法としては、例えば、精製水、主薬成分を溶解した液に、プロピレングリコールにパラベン類を加熱溶解した液を加え、混和、冷却後、添加物を加え、pHを調整し、メンブランフィルター等で濾過、殺菌機で処理して容器充填します。
エリキシル剤等は日本薬局方に記載に準じて造られます。
 

5.経口液剤に用いられる主な添加剤

添加剤としては、精製水、甘味剤、香料、溶解補助剤、保存剤、抗酸化剤、アルコール類などが用いられることが多いようです。
 

6.経口液剤に関する製剤試験法

経口液剤は、製剤均一性試験法〈6.02〉に適合するとされています。
また、懸濁剤は、溶出試験法〈6.10〉に適合するとされています。
 

7.経口液剤の医薬品

添付文書情報で、経口液剤を調べてみると、以下のようになりました。

経口液剤の種類 医薬品数(*) 主な医薬品
内用液 100以上
アトモキセチン内用液」「アリピプラゾール内用液」「アンブロキソール塩酸塩内用液」「スクラルファート内用液」「ドネペジル塩酸塩内用液」「ピコスルファートナトリウム内用液」「リスペリドン内用液」等多数

(*)医薬品数はジェネリック医薬品なども含みます。
 

8.経口液剤に関する特許・文献の調査

(1)経口液剤に関する特許検索

J-Platpatを用いての特許を調査してみました。(調査日:2021.5.27)
 

① キーワード検索
  • 経口液剤/CL+内用液/CL+内服液/CL ⇒ 442件

他にも種々の表現・キーワードとなるものが考えられますので、実際の調査にはそれらを考慮した調査が必要と思われます。
 

② IPC(国際特許分類)による検索

国際特許分類としては、「A61K9/08」(特別な物理的形態によって特徴づけられた医薬品の製剤 ・溶液剤)がありますので、これを用いて検索してみます。

  • A61K9/08/IP ⇒ 15760件
  • A61K9/08/IP * (経口液剤/CL+内用液/CL+内服液/CL) ⇒ 285件

 

③ Fタームによる検索

溶液剤のFタームとしては、「4C076AA11」(医薬品製剤 形態 ・溶液剤)があります。

  • 4C076AA11/FT ⇒ 22572件
  • 4C076AA11/FT * (経口液剤/CL+内用液/CL+内服液/CL) ⇒ 307件

 
また、その下位概念として、次のようなFタームもあります。

  • 水溶液剤: 4C076AA12/FT * (経口液剤/CL+内用液/CL+内服液/CL) ⇒ 202件
  • 非水溶液剤: 4C076AA13/FT * (経口液剤/CL+内用液/CL+内服液/CL) ⇒ 7件
  • 油液剤: 4C076AA14/FT * (経口液剤/CL+内用液/CL+内服液/CL) ⇒ 2件

 

これらの調査結果の中には、「内服液体組成物」「アリピプラゾール含有内用液剤」「アセトアミノフェン含有経口液剤」「ドネペジル塩酸塩の内用液剤」「溶出制御した経口液剤」「スマトリプタンコハク酸塩を含有する内用液剤」「ゾルピデム酒石酸塩含有内用液剤」などの特許が検出されました。
 

(2)経口液剤に関する文献調査

JSTが運営する文献データベース「J-STAGE」を用いて文献調査を行ってみました。(調査日:2021.5.27)

  • 全文検索: 経口液+内用液+内服液 ⇒ 817件
  • 抄録検索: 経口液+内用液+内服液 ⇒ 29件

 

上記調査の結果には、「内用液剤の配合変化」「イトラコナゾールの経口液剤と注射剤の有用性とその臨床的意義」「L-塩酸システイン内服液の製剤化に関する研究」「懸濁性内服液剤における混合・充填工程のバリデーション」などの文献が見られました。

 

ということで、今回は経口液剤に関する基礎知識を整理してみました。
上記検索で得られる特許や文献の内容を確認してみたい方は、各データベースを使って調べてみましょう。

 

(日本アイアール株式会社 特許調査部 S・T)
 
 

医薬品関連の特許調査なら日本アイアール

 

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