製造業技術者が知っておきたい「標準化」の基礎知識
1.標準化って何?
私たちが日常便利に使っている『物』は、いくつかの部品が組み合わさって『物』となっています。
使う上ではこの『物』がどのようなルールに則って作られたかなど殆ど気にしません。
安全に、便利に、安く、簡単に使えることがとても重要なのです。
そうした『物』が不具合なく使えていることは、実は標準化の恩恵にあずかっていることが多いのです。
オフィスや自宅にあるプリンターなど、身近な例で考えてみましょう。
(1)デジュール標準
プリンターには記録紙が必要です。
記録紙のサイズには、A4やA3といったサイズがあります。どこで購入してもA4サイズは同じです。
これは、国際標準の「ISO標準」(ISO=International Organization for Standardization)に準拠しているからです。
一方、プリンターの近くにテレビを置いても雑音が気になることがありません。
また、プリンターのインクやトナーの交換のため機械のどこに触れても感電したりしません。
スマホのバッテリーからの発煙などもありません。
こうした電気的な事柄は、「IEC標準」(IEC=International Electrotechnical Commissio)として定められています。
さらに、プリンターの中にはFax機能が備わったものがあります。
Fax機能のような通信にかかわる規格は、「ITU-T標準」(International Telecommunication Union’s Telecommunication Standardization Sector)に則って作られています。
通信の場合には互換性の確保がとても重要です。機器の製造メーカーを問わず、機器を使用する場所、国を問わず相互に通信できることが最も重要となります。
以上のISO、IEC、ITUの標準は、公的な機関によって制定される標準です。
これらの標準を「デジュール標準」といいます。
(2)デファクト標準
毎日仕事やプライベートでなくてはならないスマートホン。
現在多く使われているスマートホンを分類するとiPhoneとAndroidです。
これらはスマートホンの基本ソフトであるOSの違いですが、どちらも市場に受け入れられています。
このように多くの顧客に受け入れられ、市場に普及した技術を「デファクト標準」といいます。
私たちがよくスマートホンを用いて、インターネットに接続し通信をします。
通話をする相手がどこのメーカーのスマホートホンでも、どこのキャリアとの契約でも問題なく会話やメールの送信、受信ができます。このときWi-Fiといった無線の技術を使います。こうしたスマートホンの無線接続の規格などは業界団体が作った規格です。このようにして作られた標準もまた、デファクト標準といいます。
2.各種「標準」の整理
また、『物』ではなく、企業活動の円滑な運営や、人類が長期にわたって持続可能な地球、社会、人々であるために大きな影響がある『こと』の標準、「マネジメント標準」も存在します。
この『物』や『こと』についての取り決め、ルールこそが『標準』なのです。
標準を整理すると次のようになります。
① 公的機関が定める標準=「デジュール標準」
- 機械的、物質的な事柄についての標準=「ISO標準」
- 電気的な事柄についての標準=「IEC標準」
- 機械とも電気とも言えない乃至は電機と機械の両方にまたがる領域(情報技術、エネルギー分野等)の標準=「ISO/IEC標準」(JTC1およびJTC2にて標準策定される)
- 通信に関する標準=「ITU標準」
② 『物』、ではなく、『こと』、に関する標準=「マネジメント標準」
(例:ISO9000、14000など)
② 業界や市場が中心になって定める標準=「デファクト標準」
(例:iPhone OS、Android OS、Windows、DVD、W3C、IEEEなど)
次回は、デジュール標準について解説いたします。
(アイアール技術者教育研究所 M・O)