【早わかり電子回路】ロジックICの基本|標準ロジックICの種類・使い方など要点解説
当連載で以前にご紹介した、IC(集積回路)の種類のうち、今回は「ロジックIC」、特に「標準ロジックIC」について解説します。
1.標準ロジックICとは
ロジックICの中でも、論理回路として必要な基本ロジックを業界標準により、機能とピン配置に互換性を持たせた製品群を「標準ロジックIC」(または「汎用ロジックIC」)と呼びます。
標準ロジックICは何に使う?
標準ロジックIC は、テレビ、冷蔵庫などの民生機器からパソコン、車載用まで様々な用途で使われています。様々な電子工作で使用されるという方もいらっしゃるかと思います。
役割としては、CPU、メモリー等のシステム間を繋ぐインターフェースでの使用が多いです。
主な用途して、信号の駆動能力向上(バッファ)、波形整形、信号出力のタイミング調整などに使われます。また、システムIC の信号仕様が変更されてシステムの小修正が必要となった場合、標準ロジックICを使用することで簡単に回路を修正することができます。
小型パッケージでは一部例外もありますが、互換性を持たせたパッケージをICメーカー各社が販売しています。標準ロジックICは。機能番号が同じであれば、同一機能で同一ピン配置の製品です。
2.標準ロジックICの構成(種類・機能番号など)
標準ロジックICでは機能、回路数、入力回路、出力回路の情報を含めて機能番号が割り振られています。
図1は、機能番号と機能名を示す一例です。
機能番号 | 機能名 |
00 | Quad 2-input NAND |
02 | Quad 2-input NOR |
04 | Hex Inverter |
05 | Hex Inverter (Open-Drain) |
07 | Hex Buffer (Open-Drain) |
08 | Quad 2-Input AND |
14 | Hex Schmitt Inverter |
17 | Hex Schmitt Buffer |
21 | Dual 4-Input AND |
32 | Quad 2-Input OR |
74 | Dual D-Type Flip-Flop with Preset and Clear |
86 | Quad Exclusive OR |
【表1 標準ロジックICの主な機能番号一覧】
表1において、機能番号00は“Quad 2-input NAND”とありますが、日本語にすると、“4回路2入力NAND”という意味です。これは、「2入力のNANDゲートが4個入ったIC」ということです。
図1に、このICのブロック図を示します。
【図1 製品名TC74HC00APのブロック図】
図1は、例として「TC74HC00AP」(東芝製)というICの内部ブロックとピン配置を示した図です。
「74HC00」という名称の”00″という部分は、上記、機能番号”00″の”4回路2入力NANDのIC”という意味で、メーカーが異なっても74HC00がIC名に入っていれば、同じ機能でピン配置も同じというものです。
“TC”は東芝製ICを表しており、”74″はシリーズ名となります。なお、この「74シリーズ」は標準ロジックICの代表的なシリーズとして広く普及しています。
図1からは、”2入力のNANDゲートが4個”入っていることがわかります。
同様に、表1の機能番号”02″は”2入力のNORゲートが4個”、機能番号”04″は”インバータが6個”入っていることになります。(Dualは2個、Quadは4個、Hexは6個という意味です)
このように、標準ロジックICは、メーカーが異なっても機能番号が同じならば、同じ機能でピン配置も同じという特徴があります。機能を参照したい場合は、メーカーが提供するデータシートを確認しましょう。
[※関連コラム:基本的な論理回路の解説はこちらをご参照ください]
3.NANDゲートの応用例
NANDゲートの応用例としては、次のようなものもあります。
【図2】
図2において、左側のNANDゲートの入力端子をつないで接続すれば、右側のように論理回路的にはインバータとして使うことができます。
【図3】
また、図3においては、左側のNANDゲートにインバータ(NANDゲートから作成した)を接続すると、NANDゲート2個で、右側の1個のANDゲートになることを示しています。
【図4】
さらに、図4においては、左側のNANDゲートから作成した2個のインバータに1個のNANDゲートを接続して、右側の1個のORゲートになることを示しています。
このように、NANDゲートから様々な論理回路が作成することが可能です。
「TC74HC00AP」が1個あれば、1個のICに4個のNANDゲートが入っているため、インバータやANDゲートやORゲートの代わりにもなるのです。
以上、今回は標準ロジックICの基礎知識を解説しました。
標準ロジックICは応用範囲が広く、デジタル回路全盛の現在では最も重要なICの1つといえるでしょう。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 E・N)