高分子材料の粘弾性の基礎と応力/ひずみの発生メカニズムとその制御・評価技術
【Live配信】 2024/4/24(水) 13:00~16:30 , 【アーカイブ配信】 2024/5/10(金) まで受付(視聴期間:5/10~5/23)
お問い合わせ
03-6206-4966
スロット塗工に関する当連載の5回目は「バックアップ無しスロット塗工」について解説します。
一般のスロットダイでは、フィルムをバックアップロールにラップさせ、フィルム~ダイリップに100μm前後の狭いギャップを設定して塗工します。
一方、バックアップせずにスロットダイをフィルムに押し付けて塗工する特殊な方式もあります(図1)。
メーカー毎に、“DWTダイ”、”Off-Rollスロット塗工”、“R&R”等とも称されますが、ここでは学術的な表記である“TWOSD”(Tensioned Web Over Slot Die)に統一します(文献1)。
TWOSDは、磁性体フィルムにおける重層技術として1980年代に飛躍的に開発が進みました(文献2、3)。
2009年頃にはソウル大のナム・ジェウック教授による解析で理論的に体系化され、近年はMLCC、電池セパレータや光学材料など広範な産業分野で活用されています。本コラムでは、ナム教授の了承の元でミネソタ大の博士論文の内容を基に紹介します。
バックアップせずにダイを押し当てているため、フィルムはリップにラップしますが、ギャップは液で満たされるので、フィルムがダイに擦れることなく搬送されます(図2)。
リップではフィルムがラップされるので、フィルムは曲率を描いて搬送されます。
したがって、リップも曲面にする方が安定であり、数mmオーダーの曲率半径Rdが一般的です(文献1, 4)。
張力T(N/m)で搬送されたフィルムがリップ二次側にラップし(図2,3)、ダイ~フィルムの間隙を流れる塗工液は面圧P(Pa/m)に晒されます。
この面圧Pとリップ間の剪断応力のバランスにより、リップ~フィルムのギャップhが決まります。
塗工液量が多過ぎると、一次側でWeeping(液だれ)になり、少な過ぎると一次側でBead Breakup(ビード破断)になってしまいます。典型的な条件下の塗工ウィンドウを図4に示しました(※引用1)。
TWOSDのメリットは、リップ~フィルムの微妙なギャップ設定を要しないうえに背面減圧も不要なことが挙げられます。
一方、フィルム張力でギャップを与えるので、薄手フィルムで張力を調整しづらいこと、シワになる場合は塗工ムラを誘発しやすいことや、リップの曲率を塗工条件に合わせて設定しなければならないことがデメリットとて挙げられます。
(※この記事は AndanTEC代表 浜本伸夫 講師からのご寄稿です。)
≪引用文献、参考文献≫