同時進行型の開発 (SE, CE) で失敗しないためのポイント

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サイマルテニアスエンジニアリング、コンカレントエンジニアリングのポイント

同時進行型の開発は、「サイマルテニアス・エンジニアリング」(Simultaneous Engineering、SE)、あるいは「コンカレントエンジニアリング」(Concurrent Engineering、CE)と呼ばれます。
本来は、QCD(品質、コスト、納期・生産性)の優れた製品やシステムを、効率良く、より短期間で製品化するためのものですが、仕事の進め方が複雑化するだけで充分な成果が得られない場合があります。

本コラムでは、同時進行型開発の実践において重要となるいくつかのポイントについて説明します。

 

1.同時進行型開発は、早い段階での提案・協議が重要

同時進行型ではない通常の開発量産化の場合、開発から量産までの流れは、[開発完了⇒製造工法&工程の設計⇒外製品の調達先設定⇒物流設定]というように、各分野の担当者が棒繋ぎのように活動します。

これに対して、同時進行型開発では、プロジェクト組織を作り、早い段階から、各分野のメンバーが情報を共有し、ともに活動します。開発の評価が進み、仕様が完全に決まる前から、製造工法&工程、外製品の調達先、あるいは物流を最適化するための検討を行い、逆に製造、調達、あるいは物流に適した仕様となるよう変更を開発サイドに提案し、ともに検討・協議を行います。これには、品質不良を起こしにくく、また品質管理の負担が少なくなるような製品にしておくというような活動も含まれます。
最適な解・構成が設計の基本構造に近ければ近いほど、開発評価が進む前の早い段階で、提案・協議が行わなければなりません。
また、異なる分野の側面からの最適解は、方向性が相反する場合があります。これらについても、早い段階で協議することにより、バランスの取れた仕様とすることができます。

 

2.仕様の確定部と流動部の見える化

先行段階で各分野の担当が行う検討が無駄になることを低減するためには、検討結果を分かりやすく見える化して、共有・理解しなければなりません。

開発部門からは、各評価段階において、充分評価されて仕様確定して、変更を想定しない確定部分と、変更の可能性のある流動部分とを伝えなければありません。確定部は、具体的な構造の場合もあれば、見かけの構造ではなく、評価された基本原理の場合もあります。これらは他の部門からは、分かりにくいので、説明を必要とします。

生産技術分門からは、提示された暫定仕様に対して実施した工法検討で前提としたポイントを伝えなければなりません。例えば、既存の生産設備の流用を想定している仕様部分などです。

調達部門は、精密加工前の素材の調達先について、鍛造メーカーを想定しているか、あるいは粗加工メーカーを想定しているかなどを情報共有しなければなりません。

品質部門は、検査能力・精度など、想定している検査システムの情報を共有しなければなりません。

一方、これらの情報が早い段階で共有され、その時点で流動可能部分に関係するものであれば、仕様の方を、製造や調達、品質管理の検討結果に適合させることにより、コストを低減させ、生産性を向上させることができます。

 

3.品質ゲート管理との組み合わせ(開発の節目管理)

同時進行型開発では、部門間での部分的なコミュニケーションは活発になりますが、関係者全員が集まり全体状況を確認し、全体の方針決めや調整を行うチャンスが重要となります。

大きい節目の機会としては、品質ゲート管理と組み合わせることが有効です。
「品質ゲート管理」とは開発の節目管理のことで、開発の節目で活動状況の確認を行い次のステップに進んでいく方法です。もっとも大きい品質ゲートをDR(デザインレビュー)のタイミングと合わせる場合があります。図1は開発段階における、DRのタイミングの設定例を表しています。

デザインレビューのタイミング

開発の節目では、状況に応じて、方針決定や軌道修正を行わなければなりません。
大きい節目としては、以下があります。

  • 1)量産化活動を行うということを決定するタイミング
  • 2)製造設備に関係するような製品の基本仕様を決定するタイミング
  • 3)工法・工程も含めて量産の仕様を決定するタイミング
  • 4)実際の量産ラインでの評価結果に基づき、実際の量産を決定するタイミング
  • 5)量産後ある時間の経過後に量産の状態を評価するタイミング

より後半の品質ゲートでの決定により変更を導入する場合は、変更範囲・内容に関する制約条件が多くなります。さらに、評価が不充分な仕様変更をどうしても採用しなければならない場合は、リスク管理(影響度評価&対応策準備)が必要となります。

同時進行型開発では、早期より活発な活動が進められていることにより、時間の経過に応じて、仕様確定度が高くなるため、後半の品質ゲート評価で変更が決定されることが低減され、品質ゲート会議でも、規定された項目の確認作業(データ類のチェック)だけで、次のステップへ進む決定を行うことができます。
例えば、実際のコストが目標コストを達成できないとか、工程能力が充分でないことが、後半の品質ゲートの詳細な評価で初めて分かって変更を導入しなければならないというようなことも防げます。

 

4.活発なコミュニケーションは必須

同時進行型開発はプロジェクト方式で行われるため、関係メンバー間での目的や詳細計画の共有のみならず、最新状況情報の効率的な共有方法や、活動を軌道修正する場合の決定プロセスも重要なポイントとなります。

大規模の新規開発に同時進行型開発を用いる場合にはプロジェクトマネジメントがより重要になり、強いリーダーシップとメンバーシップが必要とされ、活発なコミュニケーションが必須となります。

討議の結果、大幅な軌道修正が必要になった場合には、最終決定責任者とのコミュニケーションにおいて、討議結果を分かりやすく伝え、正しい判断が早期に決定されるようにしなければなりません。
通常の活動で、共有すべき情報が分かりやすくまとめられていれば、関係者が増えても有効に活用できます

 

5.フロントローディングを実行するには強い信念が必要

同時進行型開発プロジェクトで早期に深い議論ができるということは、多様な意見を、うまくまとめていかなければならないという負荷がかかることになります。

先に苦労をしておいて、後半はスムーズに、質の高い良い結果を得る方法を「フロントローディング」(Front loading)と呼びます。同時進行型開発ではフロントローディングが必要になります。
通常の開発プロセスに比べ、初期段階での負荷は増加しますが、初期段階での負荷に対応することにより、より質の高い開発が可能となります。

例えば、実際の開発において、後段階で目標コストが未達成であることが判明し変更をせざるを得ないというような場合には、図2に表すように、後段階での変更の対応のために、想定した負荷変化(A)に対して負荷が大幅に増加し(B1)のようになります。さらに、急な変更により評価不足となった影響で品質不具合が発生し、(B2)のように追加の負荷が発生する場合もあります。

フロントローディング

一方、フロントローディングを行う同時進行型開発では、(C)のように、初期段階の負荷は増加しますが、後期の負荷は小さくなり、不具合対応などの追加の負荷も防止できます。

「言うは易(やす)し、行うは難(かた)し」で、フロントローディングの実行には、強い信念が必要です。
同時進行型開発は、フロントローディングの実行を前提とした開発方法です。

 
(アイアール技術者教育研究所 H・N)
 

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