3分でわかる技術の超キホン 電子部品「リレー」とは?構造・原理・役割と使い方を解説
目次
1.「リレー」とは?
電子回路を構成する部品のうち、「リレー」はマイクロコンピューター等から他の電子機器やモータなどを駆動する場合に多く使われています。リレーは、英語で「Relay」と書きます。運動会の種目としてよく知られている、バトンを渡すリレーと同じ意味の言葉です。
リレーは、基本的には電磁石と機械接点で構成されており、電磁石への通電をオン/オフさせることで、機械接点をオン/オフさせることができます。
近年では安価で高性能な半導体スイッチが普及し、リレーの用途は少なくなってきました。しかし、電気の制御盤(シーケンス制御)など、制御の場面ではリレーを使わざるを得ない場合もまだまだ数多くあります。
今回のコラムでは、機械接点を有するリレーについて説明します。
2.リレーの構造と原理
図1(a)は、リレーの構造と動作原理を示す概略図です。
また、図1(b)は、リレーの回路記号を示す図です。
【図1 リレーの概略図と回路記号】
リレーは、図1(a)のように電磁部とスイッチ部とから構成されています。
電磁部は、鉄芯にコイルを巻いた電磁石と、磁力により動作する鉄片(図の青色部材)と、鉄片の動きを接点に伝える可動片(図の緑色部材)から構成され、スイッチ部は、可動する接点と出力端子により構成されています。
図1(a)において、入力から信号が入力されると(例えばオン信号)、鉄芯がコイルにより磁化し、鉄片が磁力により鉄芯に接触します。すると、可動片がその動きを接点に伝えます。接点が接触することによりスイッチ部がオンし出力します。
また、図示していませんが、基本的には入力信号がなくなると、鉄片はバネの力で元の位置に復帰します。
3.リレーの役割・使い方
リレーの主な役割としては、主に以下の3つが挙げられます。
(1)小さな電流で、大きな電流を必要とする負荷のオン/オフを行う
図2は、リレーを用いて、大きな電流を必要とする負荷を動作させる場合の図です。
【図2 大電流負荷のスイッチのオン/オフ】
コイル部に電圧を加えるとコイルに磁束を発生させるだけのごく小さな電流が流れます。
これにより、入力側とは直接の接触がない出力側の接点が動いて導通します。
リレーを動作させて接点部に大きな電流を流して負荷を動作させることができます。
人間が大電流負荷の近くで直接スイッチを操作すると、スイッチによる火花が発生して危険な場合があります。
これを回避するため、遠くから小さな電流を操作するだけで、大電流負荷のスイッチをオン/オフできるようにリレーが使用されています。
(2)異なる種類の電気信号を伝達する
図3は、直流電源の回路で、交流電源を直接オン/オフして交流モータを動作させる場合の図です。
【図3 異なる電源間の信号伝達】
リレーは入力側と出力側は接していないため、別の種類の電源電圧を接続することができます。
直流電源から電圧を加えてコイルを作動させた場合でも、出力側には交流100Vの交流モータを接続し制御することが可能となります。
このように、異なる電源間で信号を伝えることができるのも、リレーの重要な役割です。
(3)ひとつの信号で複数の接点をオン/オフする
図4は、一つの信号で、複数の回路の接点をオン/オフして負荷を動作させる場合の図です。
【図4 複数の接点をオン/オフ】
出力側に複数の接点を持つリレーがあります。2接点、4接点、6接点などがあります。
入力側にひとつの信号を入れるだけで、これらの接点が同時にオン/オフするため、複数の信号として出力することができます。
リレーの基本の役割は、「信号を受け取り出力する」ことです。
複雑な制御システムも、これを複数組み合わせてつくられているといえます。
4.リレーを使用する際の注意点は?
リレーを使う際の注意すべき点について説明します。
(1)定格通電電流
リレー表示の20A、30Aは定格通電電流で、接点を開閉させずに、温度上昇も限度を超えないで連続して流せる電流の値です。
また、リレーによっては”最大電流30A”という表示があります。これは短時間であれば30Aまで可能と言う表示で、連続で流せる電流は20Aといった場合がありますので、使用時に注意が必要です。
(2)負荷の種類と突入電流
リレーは負荷の種類によって突入電流特性が違うため、ON/OFFの開閉頻度と関連して接点の容着を起こすことがあります。
白熱電球は定常電流の10~15倍、モータ類は5~10倍の突入電流が流れてから定常電流になりますので、リレー選択時は負荷の突入電流も考慮して製品を選ぶ必要があります。
(3)接点最大許容電流
接点開閉電流の最大値です。
接点が開閉される時に、接点間にアーク放電が起ることがあります。
電流は交流と直流があります。
交流はプラス、マイナスと変化するために電流がゼロの時点があり、アーク放電は消えます。しかし、直流は一度アーク放電が発生すると消えにくいため、交流より制御容量は低下します。
(4)逆起電圧に対する保護
リレーのコイルOFF時に、コイル両端に数百~数千ボルトの逆起電力(サージ)が発生します。
これは、リレーを駆動する電子回路を破壊する十分なエネルギーを持ち、周囲に電磁波を出して周辺機器の誤動作を引き起す可能性があります。
この逆起電圧対策として幾つかの方法がありますが、一般的にダイオードが使われています。
吸収効果が大きく回路が簡単のためリレーに内蔵されたタイプもあります。
(5)寿命
リレーの寿命としては、機械的寿命と電気的寿命に分けられます。
- 機械的寿命:接点に負荷をかけずコイルに定格電圧を加え入切りして、接点を開閉させた時の寿命回数
- 電気的寿命:接点に定格負荷をかけコイルに定格電圧を加え入切りして、接点を開閉させた時の寿命回数
一般的に制御容量が大きくなるにつれて、機械的寿命・電気的寿命は短くなります。
(6)チャタリング(バウンス)
リレーや機械的スイッチでは「チャタリング」という現象が起こります。
「チャタリング」とは、リレーのON/OFF直後に、出力が短い時間ON/OFFを繰り返す現象のことです。
理想的なリレーであれば、ONまたはOFF時に接点が1度でピタッと接続、または1度で接点が離れれば、チャタリングは発生しません。しかし、実際のリレーは、接点の「バウンド」または「擦れ」が発生し、これによりチャタリングが発生します。
「バウンド」とは、接点がONした瞬間、接点がぶつかって跳ね返る現象です。このバウンドが複数回繰り返され、この間は接点がON/OFFを繰り返し、最終的にONに落ち着きます。
リレーの出力側がデジタル回路の場合には、特に影響が出るので、ハードウェア的またはソフトウェア的な対策が必要です。
リレーには小電流から大電流用まで各種ありますが、使用用途にあったリレーを選ぶ事が必要です。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 E・N)