【品質保証塾・中級編】製造業で行われる監査とは?種類や方法、進め方などを解説
監査と聞くと、会計監査などドラマに出てくるようなものをイメージする方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、製造業での監査では、実際に工場の生産ラインを見たり、現場の書類や、組織の決まり・ルールなどの監査を行います。
今回は、製造業で行われる監査にはどのような種類があるのか、方法や進め方について解説をしていきます。
目次
1.監査とは?
製造業における監査とは、企業が正しい手順に従って製品を製造しているか確認を行うことです。
製品が規制に適合し、顧客の要件を満たしていることを確認するプロセスになります。
有名な監査の1つに、企業の品質管理システムが適切に機能しているかどうかを判断するために行われる『ISO9001の外部監査』が挙げられます。
2.監査の種類
製造業における監査には、大きく分けて内部監査と外部監査の2つの種類があります。
(1)内部監査
内部監査は、主に企業内の品質管理チームが行います。
品質管理チームは、企業の品質管理システムの評価を行い、システムが適切に機能しているかどうかを判断します。内部監査は、企業の品質管理プロセスを改善するために役立ちます。
(2)外部監査
外部監査には、第二者監査と第三者監査があります。
「第二者監査」は、組織に関わる関係者(主に顧客)による監査になります。
大きな不具合問題が是正されているのか現場を確認したり、品質マネジメントシステムが規定以上のレベルを満たしているのか、量産前の現場監査などがあげられます。
「第三者監査」は、独立した監査機関によって実施されます。
監査機関は、企業の品質管理システムが国際的な規格に適合しているかどうかを確認します。外部監査は、企業の品質管理システムが第三者によって評価されることを保証するために重要です。
3.監査の目的
製造業における監査の目的は、次のとおりです。
- 品質管理システムが適切に機能しているかどうかを判断すること
- 製品が顧客の要件を満たしているかどうかを確認すること
- 製品が規制に適合しているかどうかを確認すること
- 品質管理プロセスを改善するためのフィードバックを提供すること
製造業で取り扱う主な監査は組織の品質に着目した監査です。
4.監査のプロセス(監査の流れ)
製造業における監査のプロセスは、以下のステップで構成されます。
ステップ1:監査計画の策定
監査計画は、監査機関によって策定されます。
監査計画には、監査の目的、スケジュール、監査対象となる部門、監査手順などが含まれます。
ステップ2:監査の実施
監査チームは、監査計画に基づいて監査を実施します。
監査チームは、品質管理システムの運用状況、製品の品質、規制遵守状況などを確認します。監査チームは、観察、面談、文書レビューなどの手法を使用して、評価を行います。
ステップ3:監査報告書の作成
監査チームは、監査報告書を作成します。
監査報告書には、監査の評価結果、発見された問題、改善策の提案などが含まれます。監査報告書は、企業に提出されます。
ステップ4:是正措置の実施
監査報告書を受け取った企業は、報告書に記載された問題を解決するための是正措置を実施します。
是正措置は、問題を解決し、再発防止策を確立することを目的としています。
ステップ5:監査結果の検証
監査機関は、是正措置の実施状況を検証します。
監査機関は、是正措置が適切に実施されているかどうかを確認します。監査機関は、再監査を実施することがあります。
ステップ6:再監査
再監査は、企業が是正措置を実施した後に行われます。
再監査は、問題が解決されているかどうか、是正措置が効果的であるかどうかを確認するために行われます。
再監査は、必ず行われるわけではなく、ケースによっては割愛されることもあります。
5.製造業監査の規格
製造業における監査は、多くの場合、国際規格に基づいて実施されます。
主要な製造業監査規格には、次のものがあります。
- ISO 9001:品質管理システムに関する国際規格であり、企業が品質管理システムを適切に構築し、維持するための要件を定めています。ISO 9001は、企業が顧客の要求を満たし、製品やサービスの品質を改善するために使用されます。
- ISO 14001:環境管理システムに関する国際規格であり、企業が環境保護に対する責任を果たすための要件を定めています。ISO 14001は、企業が環境負荷を軽減し、持続可能な事業活動を実現するために使用されます。
- ISO 45001:労働安全衛生管理システムに関する国際規格であり、企業が従業員の健康と安全を確保するための要件を定めています。ISO 45001は、企業が労働災害や健康障害を防止し、労働環境を改善するために使用されます。
6.製造業における監査の重要性
製造業における監査は、品質管理プロセスを改善し、製品の品質を向上させるために不可欠です。
監査を行うことで、企業が顧客の要件を満たし、規制に適合するために必要な品質管理システムを運用しているかどうかを確認することができます。即ち、品質管理システムの問題点を特定し、改善策を見出す効果も見込めます。
更に、監査により企業が法令や規制を遵守していることを確認することができるため、企業の信頼性を高めることができる効果も見込めます。
製造業における監査は、製品の品質と安全性を確保するために非常に重要な役割を担っているのです。
製造業の監査は、サプライヤーの監査、品質管理システムの監査、工場の監査などがありますが、これらの監査は、製品やサービスの品質を確保するために実施されるため、監査により製造業者が自らの製造プロセスを改善することで、企業と消費者の両方にとってメリットがあります。
監査は、製造業者が規制や規則を遵守していることを確認するためにも重要です。製造業者は、消費者の安全を確保するために、法律や規制に従って製品を製造する必要があります。監査によって、製造業者がこれらの規制や規則に適合していることが確認され、これにより、消費者の安全を確保し、企業の信頼性を高めることができます。
7.監査員のスキル
製造業の監査員には、多くのスキルが求められます。その中でも、最も重要なのは、生産プロセスに関する深い知識と経験です。監査員は、プロセスの機能性や複雑さ、品質管理の基準について深い理解を持っている必要があります。さらに、監査員は、プロセス改善に関する情報を提供し、問題解決に貢献する能力が求められます。
監査員は、コミュニケーション能力が高く、問題を的確に説明することができる必要があります。監査員は、企業のスタッフや管理職、顧客、及び関係者との良好な関係を維持し、プロセス改善に必要な情報を収集することが重要です。
また、監査員には、法律や規制に関する深い知識が求められます。監査員は、製造業が関与する国内外の法律や規制に関して深く理解する必要があります。製造業者は、環境や健康・安全に関連する規制にも従う必要があるため、監査員はこれらの問題にも精通している必要があります。
監査員は、上記のスキルを持つだけでなく、クライアントの期待に応えるためにも、信頼性や誠実性に関する高い倫理観を持っている必要があります。監査員は、クライアントとの関係を構築し、問題解決のために信頼性の高い情報を提供することが重要となります。
8.まとめ
今回は、製造業で行われる監査のステップと重要性について解説しました。
監査は、品質担保のみでなく、法規にも関わる問題を予防する効果があります。
- 企業が正しい手順に従って製品を製造しているか確認を行うこと
- 企業が正しい手順に従って製品を製造しているか確認を行うこと
- 監査の流れは、監査計画の策定→監査の実施→監査報告書の作成→是正処置の実施→監査結果の検証→再監査
- 製造業における主な監査企画はISO9001の他にもISO14001やISO45001がある
- 監査により、企業が品質、法令、規制を遵守していることを確認することができるため、企業の信頼性を高める点でも重要
次回は、製造業における再発防止の取り組みの基本知識や方法について解説します。
(アイアール技術者教育研究所 Y・S)