【品質保証の仕事入門】製造業における品質保証とは何か?品質管理(QC)との違いなど要点解説
製造業の3要素はQCDであるといわれています。
この中でもQ(Quality)=品質については、良い品質の製品を世の中に送り出すことは製造業の使命であることは論を待たないところでしょう。
顧客に供給する製品の品質を守る・維持する、といった役割の名称として「品質管理」と「品質保証」という二つの言葉があります。
本コラムでは、両者の相違も含めて、品質保証とは何か、について解説します。
目次
1.品質保証と品質管理の相違
品質保証と品質管理の相違については、書籍あるいは会社によって微妙に異なる場合もありますが、下記の解釈が妥当であろうと考えます。
品質保証QA(Quality Assurance)
自社の製品・サービスの品質が顧客要求を満足することを顧客に保証するための体系的な活動のことであり、製造業の目的の一つといえます。
そのため、品質保証は、製造部門だけでなく、営業や設計、アフターサービスまで含めた全社的にわたる活動を求められます。
品質管理QC(Quality Control)
顧客が要求する品質を提供するために、製品と仕事のやり方を総合的に維持・改善する活動(しくみとプロセス重視)のことであり、品質保証活動の中の手段の一つです。
つまり、品質保証の方が品質管理より広範囲に及ぶということができます。
「品質管理という手段」を用いて、「顧客に対して品質を保証する」という解釈が適切かもしれません。
2.別の切り口による品質保証と品質管理の比較
完成品の品質保証と、製造プロセスの品質管理、という区分もできます。
≪品質保証の仕事は?≫
出荷される製品や提供されるサービスが顧客要求を満足していることを確認する。確認結果は、顧客に文書で通知し、保存する。荷製品やサービスに不具合が生じた場合に対策を講じると共に、再発防止を図り、製品やサービスの改善に努める。
ということで、品質保証は、より顧客に向いた立ち位置にあるといえます。
≪品質管理の仕事は?≫
製品の不良発生に関する現状分析、不良発生の原因の究明、不良率低減のための改善策の立案、改善のためのしくみ(手順)構築、従業員への教育、など製造プロセスにおける管理と改善を図る。
つまり、品質管理は、社内、主に製造部のサポートと品質改善活動が中心となります。
3.そもそも「品質」とは何でしょう?
JIS Q 9000では次のように定義されています。
「本来備わっている特性の集まりが、要求事項を満たす程度」
ここで要求事項とは、「明示されている、通常、暗黙のうちに了解されている若しくは義務として要求されている、ニーズまたは期待」としています。
旧JIS Z 8101の定義によれば「品物またはサービスが使用目的を満たしているかどうかを決定するための評価対象となる固有の性質・性能の全体」とあり、何やらまわりくどい表現ですが、一言でいえば「品物やサービスの良さをしめすもの」ということになるでしょう。
4.品質に対する考え方の変化
かつては「製品品質が、いかに規格に合っているか」が重要視されていました。
しかし現在では「製品を含むあらゆるサービスの品質が、いかに顧客の要求に合っているか」と顧客要求重視の考え方に変化しています。
では、顧客の要求する品質とは何でしょうか?次のようなことがいえるでしょう。
「良いものを、より安く、必要な量を必要な時に納品することができて、安全に使うことができる」、すなわちQCDすべてを含むといえます。
このような顧客要求を満足するためには「製品やサービスそのものの質」のみならず「仕事のやり方としくみの質」も高める必要があります。
5.品質保証活動の変遷
図1に示すように、品質における顧客要求重視への変化に伴い品質保証が重点を置く活動が、製造プロセスの下流から上流に移行してきました。
当初は、完成後の製品検査に重点が置かれ、不良品を外へ出さないという考え方でしたが、量産する上で限界があり、製造工程で品質を作り込むことで不良品を作らないという考え方に移行しました。
しかし「製造工程に問題がなくとも、設計に問題があれば良品を生み出すことはできない」ということで、近年は最上流の開発・設計段階で、顧客要求を把握した上で評価検討をしっかり行い品質を作り込む、という考え方が主流になっています。
6.品質保証部門の特徴
品質保証部門の責任と権限は、図2のようになります。
品質保証部門は、顧客に対する責任を果たすために、社内各部門からの独立性を確保する必要があります。
品質が改善されるまで出荷を止める権限、社内各部門を監査する権限を有することからも明確な独立性を有していなければなりません。
品質保証部門はコンプライアンス遵守の砦!
残念なことに昨今、品質データの改ざんや、無資格者検査、など製造業の信頼性を根幹から揺るがす不祥事が少なからず発生しています。
あろうことか品質保証部門がデータ改ざんを行っていたという事例もあります。
製品の安全性には問題ないとか、納期が迫っているとか、会社のために良かれと思ってのことなのでしょうが、「長年築き上げた顧客信頼は、不正によって一日で失われる」ことを肝に銘じ、「顧客の信頼に応え、顧客要求を満たす製品を送り出す」ことを使命と心得て、品質保証活動に取り組むことが大切です。
以上、今回は品質管理との相違や、品質保証の変遷(近年のトレンド)などを中心に、品質保証とは何かその概要を解説しました。
次回は、ISO9001などから考える「品質保証業務のあり方」についてご説明します。
(アイアール技術者教育研究所 S・Y)
- 品質保証実務の不具合解析を極める(講師:技術士 小田愼吾 氏)