生産管理業務の内容と進め方《日程計画と負荷計画、手配、進捗管理の基本》
1. 生産管理とは
企業間の競争がグローバル化し、競争が激化している現在、企業がいかに素早く適切な対応をとるかが成否の分かれ目となります。製造業においては、生産管理の良し悪しで決まるといっても過言ではありません。これは製造会社の仕事は、生産管理が中心となり進められているからです。
社内だけでなく、顧客、購入先も含め効率的に仕事を進めるリーダ役が生産管理です。
生産管理の業務を「計画」「手配」「進捗管理」に分け、生産管理業務の進め方のツボを説明します。
2.生産管理における「計画」とは?
生産管理の計画は、日程計画と負荷計画に分類できます。
生産計画の内容を月日で表すと「日程計画」になり、仕事の量(生産量又は生産時間)で表すと「負荷計画」になります。
(1)日程計画とは
まず、全体の計画を示した大日程計画を作成します。顧客と約束した納入期日に間に合わすために、関連部署と調整しながら、大日程計画を作成します。
具体的な関連部署とは、設計、生産技術、生産現場、品質保証、資材・調達、生産管理など多岐にわたりますが、生産管理は全体のリーダ役を発揮し、整合性のとれた無理のない日程をつくり込むことが重要です。この大日程計画作成は非常に重要で、計画作成を誤ると、納入遅延につながり顧客の信用が失墜してしまいますので、大日程計画は十分に練り直す必要があります。
この大日程計画に基づき、関連部署が、実務ベースの詳細日程計画に落とし込みます。この詳細日程計画は、抜けがなく詳細に作ることが大切です。後述する進捗管理の基本になるからです。
(2)負荷計画とは
負荷計画とは、現在の「生産能力」と「仕掛中の生産量」を分析し、新たにどれだけ生産負荷が追加できるか「余力」を計画することです。
余力=「生産能力」-「仕掛中の生産量」
生産能力に対し余力がありすぎる場合は、現場を遊ばせることになります。逆に余力がない状況で大量の受注が来た場合は残業が多くなり、場合によっては対応できなくなり、顧客のみでなく従業員に迷惑をかけることになります。
従って、余力に見合った仕事を探す必要があります。
このグラフの例では、5月は仕掛中の生産量が多く余力がありませんが、5月以外は余力があり、生産負荷の追加が可能なことがわかります。
昨今、いわゆる「働き方改革」が重要になっていますが、生産管理の「負荷計画」が検討不足だと、生産現場に悪影響を及ぼすことに繋がるので、十分検討しましょう。
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3.生産管理における「手配」とは
日程計画、負荷計画検討完了後、受注された製品をつくるためには、以下の手配が必要になります。
- モノの手配:部品、材料の手配・・・・・・主に生産管理が担当
- ヒトの手配:必要な作業人員の手配・・・・主に生産現場が担当‘(生産管理はフォロー必要)
- 生産準備:設備の手配・・・・・・・・・・主に生産技術が担当(生産管理はフォロー必要)
生産管理が主体となって実施するモノの手配は、以下のようなものがあります。
- 工場内への生産手配(作業表の発行)
- 外部調達先への発注手配(購買先、外注先に部品・材料の注文書発行)
- 倉庫部門への出庫手配(出庫表の発行)
大きい工場では手配件数が膨大なことと、手配部署の分担が細分化されているため、実際にはコンピュータで処理します。手配部署(又は、担当者)毎に仕分けられ、手配書も自動的にアウトプットされます。
4.「進捗管理」の重要性
計画と実績の差異を的確につかみ、その差異の原因を明らかにして、対策を立てて計画に近づけるために関連部署と調整することを「進捗管理」と呼びます。
(1)進捗会議の開催
進捗管理の手段として各部門の担当者を集め、進捗管理状況を報告しあう「進捗会議」を設定する方法があります。
この場で進捗管理担当者は常に目標の日程計画と比較し、遅れがないかチェックする必要があります。
会議のポイントとしては、
- 各部門の進捗度合いを把握し、問題点を全員で共有する
- 一つの部門の遅れに対し、関連部門がどの程度調整可能か検討する
- 遅れの対応策を、会議メンバーで検討する
(2)理屈を超えた行動力
いくら良い計画を立てても進捗管理が甘いとプロジェクトは大幅に遅れ、納入遅延などの大問題につながる可能性があります。従って、進捗管理はリーダ役である生産管理業務の最も大切な仕事の一つとも言えます。
上述の進捗会議の開催にあたり、事前に各部門の現場に直接足を運び、自分の目で確認しておくことが重要です。その時に、必要に応じ現場の人の「生の声」を聞いておくことが非常に参考になります。
モノづくりは所詮は人間が行う行為である以上、理屈を超えた意欲や意識が効果を発揮することが多いです。
以上、今回は最低限知っておきたい生産管理業務の基本について解説しました。
(アイアール技術者教育研究所 T・I)