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当連載コラムではプロドラッグの例をご紹介しています。今回は、降圧剤のプロドラッグです。
目次
テモカプリル塩酸塩は、体内で活性体であるテモカプリラート(Temocaprilat)に変化し、アンジオテンシン変換酵素を阻害して、アンジオテンシンIIの生成を抑制することにより降圧作用を示します(ACE阻害剤)。
テモカプリルは、おそらくヒト小腸では加水分解を受けずに、そのまま吸収され、肝臓に移行して加水分解を受けると考えられています。
テモカプリルは、高い有効性、持続性が確認され、また動物試験において低毒性でした。
さらに既承認の ACE阻害剤がいずれも主に尿中に排泄されるのに対して、本剤は主に胆汁中へ排泄されるなどの特徴を有することが明らかにされています。
アンジオテンシン変換酵素阻害薬の活性体の基本骨格には、2-アミノカルボン酸部分およびアミド結合の窒素原子に結合したアミノ酢酸という2つのカルボン酸があります。
後者のアミノ酢酸をエステルとすると生体内で加水分解されず、薬理活性が低下するとされています。そのためすべてのACE阻害薬は、2-アミノカルボン酸をエステル化しています。
次に説明する、2.イミダプリル、3.キナプリル、4.エナラプリル、5.ペリンドプリルエルブミンも同様です。
イミダプリルは、ACE阻害活性を有するイミダプリラト(imidaprilat)のエチルエステル体であり、経口投与後にイミダプリラートとなって、作用を発現するプロドラッグです。
ACE阻害薬に特有の空咳、浮腫などの副作用が少なく、腎機能障害のある高齢の患者にも投与が可能となっています。
日本で初めて糖尿病性腎症注の効能・効果を取得したACE阻害薬で、有意に尿中微量アルブミンを減少させる特徴があります。
肝臓で機能を持つ代謝物キナプリラト(Quinaprilat)に変換されるプロドラッグです。
キナプリルは、組織移行性を高める 3-isoquinolyl 基を有し、経口投与後、速やかに吸収され、加水分解された活性代謝物のキナプリラートが血管壁などの標的臓器において、強力かつ持続的なACE阻害作用を示すとされています。
服用後、主として肝臓において、経口投与後加水分解によりエナラプリラート(Enalaprilat)となり、アンギオテンシン変換酵素を阻害します。
すなわち、生理活性のないアンギオテンシンIから強い血圧上昇作用を有するアンギオテンシンIIへの変化が阻害されるために血圧が下がるとされています。
ペリンドプリル エルブミンは、経口吸収後、主に肝臓でペリンドプリラート(Perindoprilat)に加水分解され、持続的なアンジオテンシン変換酵素阻害作用を示すプロドラッグです。
オルメサルタン メドキソミルは、経口吸収性を考慮し、イミダゾール環カルボキシル基をエステル化して、プロドラッグとしたもので、経口投与後、主に小腸上皮においてエステラーゼにより加水分解を受け、活性代謝物であるオルメサルタン(Olmesartan)に変換され、アンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬として降圧作用を示します。
オルメサルタン メドキソミルは吸収率を上げる目的でプロドラッグ化されました。
経口投与時のカンデサルタンは生物学的利用率が低く、プロドラッグ化したカンデサルタンシレキセチルが経口投与で持続的なアンギオテンシンⅡ受容体拮抗作用を示すことが確認されました。
カンデサルタン シレキセチルは、腸壁のエステラーゼで完全に加水分解されてカンデサルタン(Candesartan)となり吸収されるプロドラッグです。このプロドラッグ化の目的は、AT1受容体への阻害活性を上げることとされています。
アジルサルタン(Azilsartan ・アジルバ)はアンジオテンシンⅡ(AⅡ)受容体拮抗薬(ARB)で、AⅡタイプ1(AT1)受容体を選択的に阻害する薬剤です。
アジルサルタン メドキソミルは、アジルサルタンのプロドラッグ体であり、米国においてはプロドラッグ体であるアジルサルタン メドキソミルが開発され、2011年2月に承認されました。
一方、国内ではアジルサルタンとして臨床試験を行い、2012年1月に製造販売承認がされています。
ミノキシジルは1965年に降圧薬として開発されましたが、日本では降圧剤としては承認されておりません。
降圧薬として使用した患者に、多毛という副作用が生じることがわかり、この副作用を主作用として承認を取得したのが発毛薬です。
ミノキシジルもプロドラッグであり、ミノキシジルが生体内で代謝を受けて生じた活性代謝物であるサルフェート体(硫酸ミノキシジルMinoxidil sulfate)がATP-感受性Kチャンネルを活性化することにより、細胞形質膜が過分極し、血管平滑筋が弛緩します。この結果血圧が低下するとされています。
また、発毛作用もサルフェート体によるものと考えられています。
ミドドリンは、低血圧治療剤として使用されています。
健常成人に本剤と等モルの活性本体を経口投与し、活性本体(DMAE)のAUCを比較すると、AUCは直接活性本体を投与した時より本剤投与時の方が有意に高く、プロドラッグ化によるバイオアベイラビリティの改善し、また緩和で持続的な効果発現を可能としたものとされています。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 S・T)
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