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2024/12/12(木)10:00~17:00
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三端子レギュレータは、最も簡単な電源用のICです。
名前の通り3本の端子を備えており、定電圧回路を簡単に構成することが可能で、多くの電気製品の電源部に使用されています。
近年、電源はスイッチング電源が主流となっていますが、オーディオ回路などのノイズの影響を受けたくない回路や少ない部品で簡単に定電圧を作る場合などに多く利用されています。
図1は、当連載の「電源回路の基本を解説」の回で示した、電源回路の出力による分類です。
【図1 電源回路の分類(出力での分類)】
図1において、三端子レギュレータは赤色の部分で、DC/DCコンバータの「リニアレギュレータ」のうちの「シリーズレギュレータ」に当たります。
【図2 リニアレギュレータの動作原理】
図2は、リニアレギュレータの動作原理を示す図で、三端子レギュレータも同じです。
図2において、出力検出部の2つの抵抗の接続部には、負荷にかかる電圧に比例した電圧が現れます。
その電圧を比較部に入力し基準電圧と比較します。
比較部の出力には、それぞれの電圧の差分が出力され、調整部のトランジスタで負荷に流れる電流を制御します。
三端子レギュレータの長所(メリット)としては、
などが挙げられます。
反対に短所(デメリット)としては、以下のような点があります。
三端子レギュレータは、各ICメーカから、同じ性能のものが共通の型番で販売されています。
“78”シリーズが一般的で、78の後の数字で出力電圧を表します。
また、78の後にアルファベットをつけて出力電流を表します。
例えば、7805ならば、出力電圧5Vで出力電流1A、78M12なら、出力電圧12Vで出力電流0.5A、78L05なら、出力電圧5Vで出力電流0.1Aなどです。
出力電圧としては、5V~24V程度までのバリエーションがあります。
また、“79”シリーズもあり、こちらは負極性(-電圧を出力)となります。また、可変電圧出力のものもあります。
さらに、入出力間電圧差を改善した、低飽和型のものも増えてきました。
「低飽和型」とは、入出力間電圧差が1V弱で動作するもので、最近のパソコンに使用されている3.3Vとか2.5Vなどの低電圧の回路に用いられます。
ICメーカによって品揃えが違ってきますので、ICメーカの仕様を確認することが必要です。
図3は、三端子レギュレータの使い方を示す回路図です。
三端子レギュレータには、IN、OUT、GNDの3つの端子があり、INを入力電圧に接続し、OUTを負荷回路に接続します。
基本的には、それだけで動作しますが、出力側に発振成分が載ることがあるので、発振防止用コンデンサを付加します。また、電圧安定化のために平滑用コンデンサも用います。
さらに、出力側が入力側の電圧より高くなると三端子レギュレータが故障する可能性があるので、図3のように接続する保護用ダイオードを用いることもあります。
【図3 保護用ダイオードを使った構成】
三端子レギュレータは、降圧型のDC/DCコンバータで、高い電圧から低い電圧を作っています。この電圧の差は、熱となって放出されます。
例えば、入力電圧8Vで、負荷への出力が、5V、0.3Aの場合は、
電力損失は、 (8-5)×0.3=0.9(W)となり、
0.9Wが熱となって放出されます。
この熱の値が大きくなると、放熱器(ヒートシンク)が必要となるので、大きな出力電流の三端子レギュレータの回路を設計する場合は、このような熱量の計算が必須となります。
[※関連コラム:ヒートシンクの解説はこちらをご参照ください。]
(日本アイアール株式会社 特許調査部 E・N)