3分でわかる技術の超キホン PINフォトダイオードとアバランシェフォトダイオード
1.PINフォトダイオード(PIN PD)とは?
「PINフォトダイオード」(PIN PD: PIN PhotoDiode)は、P型半導体とN型半導体で絶縁性の真性半導体、いわゆるI型半導体(Intrinsic semiconductor)を挟んだ構造のフォトダイオードです。
図1に示すように、PINフォトダイオードは、PIN型のフォトダイオードになります。
[図1 PINフォトダイオード]
PINフォトダイオードは、PN型フォトダイオードに比べると、逆方向バイアスをかけたときに空乏層と同じ役目をする領域を広げることができます。
フォトダイオードに照射した光は吸収されます。そして、空乏層で発生したキャリアが電界によって移動し、光電流が生じます。しかし、P型側またはN型側でキャリアが発生した場合には、電界がないことにより、電子も正孔も運動により再結合するため、光電流が生じない場合があります。
したがって、空乏層を広げてキャリアを多く発生させ、電流を増大させることで受光感度は向上します。PN型フォトダイオードの空乏層を広げるためには高電圧が必要になりますが、I層を形成したPINフォトダイオードでは、低電圧で受光感度を向上させることが可能です。
空乏層で作られるドリフト電流は、電界の影響により速い応答を示します。一方、空乏層外で作られた拡散電流は、応答時間が長くなります。
空乏層に加えてI層を形成することによりドリフト電流が大きくなるため、PINフォトダイオードでは、応答時間が速くなります。
光通信システム用のフォトダイオードは、応答時間が短いことが要求されるため、主にPINフォトダイオードが用いられます。
[※pn接合(P型半導体/N型半導体)と電界の発生・空乏層に関する前提知識の解説はこちら]
2.アバランシェフォトダイオード(APD)とは?
「アバランシェフォトダイオード」(APD: Avalanche PhotoDiode)とは、電子のなだれ現象を利用して受光感度を高めたフォトダイオードです。
アバランシェフォトダイオードは、高い電圧(10~200V程度)をかけて使用します。
高電圧の逆方向バイアスをかけることで、空乏層の電界を大きくしてキャリアを加速させます。
「電子のなだれ」(Avalanche)とは、加速された電子が半導体の原子に衝突してイオン化させることで新たな電子と正孔を生成させ、生成された電子がまた別の原子に衝突することで、電子、正孔を連鎖的に生成させていく現象です。この過程を繰り返して、キャリアはなだれのように増加するので、微弱な光でも大きな電流となり出力されます。
すなわち、アバランシェフォトダイオードは、電子のなだれ現象を利用することで大きな電流を得ることができるため、受光感度が高くなります。また、大きな内部電界によってキャリアが加速されるので、応答時間も速くなります。
図2にP+PN+型のアバランシェフォトダイオードの構造を示します。アバランシェフォトダイオードの構造は、pn接合ですが、例えばP型半導体をキャリア濃度の高いP+層とP層にしたり、N型半導体をキャリア濃度の高いN+層となるようにするなど電子のなだれが起きやすくする工夫をしています。
[図2 アバランシェフォトダイオード(P+ PN型の場合)]
アバランシェフォトダイオードでは、照射した光子数以上のキャリアを発生させることが可能です。
すなわち、入力した光信号を増幅させる効果を得ることができます。
したがって、アバランシェフォトダイオードは、応答時間も速く微弱な光信号の検出に適しているので、光通信用の受光素子としては最適です。
しかし、実用上は高電圧の逆方向バイアスが必要な点や、高コストである点などから、適用範囲は限られています。
(日本アイアール株式会社 N・S)