POPs条約の基礎知識を解説!対象となる残留性有機汚染物質は?

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POPs条約の概要を解説

1.POPs条約とは?

正式には、「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」といいます。
この残留性有機汚染物質の英名である”POPs”(Persistent Organic Pollutants)をとって「POPs条約」と呼ばれています。

この条約は、環境中での残留性・生物蓄積性・人や生物への毒性が高く、長距離移動性が懸念されるポリ塩化ビフェニル(PCB)、DDT等の残留性有機汚染物質の、製造及び使用の廃絶・制限、排出の削減、これらの物質を含む廃棄物等の適正処理等を規定している条約です。

 

2.POPs条約の経緯

1990年代初めに、海洋汚染の原因となっている合成有機化合物の問題について国際的な取り組みが開始され、1995年のワシントン宣言において、特に早急な対応が必要であると考えられる12の残留性有機汚染物質の減少に向けての国際的な枠組みが採択されました。

2001年外交会議において、POPs条約が採択、2004年に発効されました。
2020年現在、181か国、EU、パレスチナ自治区が締結しています。
なお、条約事務局はジュネーブの国連環境計画(UNEP)内に設置されています。

 

3.POPs条約の目的

まずは、POPs条約の法目的を見てみましょう。

第1条
この条約は、環境及び開発に関するリオ宣言の原則15に規定する予防的な取組方法に留意して、残留性有機汚染物質から人の健康及び環境を保護することを目的とする。

 
第1条は簡潔に法目的が記載されていますが、詳細な目的やその理由がこの条約の前文に記載されています。
 
「残留性有機汚染物質が、・・放出源から遠く離れた場所にたい積して陸上生態系及び水界生態系に蓄積することを認識し、・・・将来の世代への影響・・食品の汚染・・残留性有機汚染物質について世界的規模の行動をとる必要性を意識」する必要性が述べられています。

そして、「自国の管轄又は管理の下における活動が他国の環境又はいずれの国の管轄にも属さない区域の環境を害さないことを確保する責任を有することを再確認・・」として、締約国は、その国の領域の外についても責任があることが明記されています。

また、「残留性有機汚染物質の製造者が、その製品による悪影響を軽減し並びにこのような化学物質の有害な性質についての情報を使用者、政府及び公衆に提供する責任を負うことの重要性を強調し、残留性有機汚染物質がそのライフサイクルのすべての段階において引き起こす悪影響を防止するための措置をとる必要性を意識・・」と、製造者の責任についても記載されており、前文の結びとして「人の健康及び環境を残留性有機汚染物質の有害な影響から保護することを決意」して協定を結ぶこととしています。

 

4.残留性有機汚染物質(POPs)

本条約の対象となる残留性有機汚染物質(POPs)とは、毒性が強く、残留性、生物蓄積性、長距離にわたる環境における移動の可能性、人の健康又は環境への悪影響を有する化学物質が対象とされています。追加が決定している物質であるPCN、HCBD、PCP も含め、以下の物質が該当します。
[農薬・殺虫剤][工業製品][非意図的生成物]に分類されることがあります。

 

(1)農薬・殺虫剤

《DDT》

DDT

DDTは農薬、シラミなどの伝染病を引き起こす衛生害虫の駆除剤等として第二次世界大戦後に広く使用されていました。なお、一部の国ではマラリア対策の目的で殺虫剤として現在も使用されているようです。
発がん性があるとされており、生体濃縮されます。

 

《ディルドリン(Dieldrin)》

ディルドリン

ディルドリンは、過去に農薬、(家庭用)殺虫剤、シロアリ駆除剤等として使用されていました。

DDTもディルドリンも化審法によって製造等が禁止されています。

 

(2)工業製品

ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)とその塩及びペルフルオロ酸オクタンスルホニルフルオリド(PFOSF)ブロモジフェニルエーテル類ヘキサブロモビフェニルヘキサブロモシクロドデカンが挙げられています。

 

《ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)》

ペルフルオロオクタンスルホン酸

ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)とその塩については、撥油性と撥水性を兼ね備えた界面活性剤として、半導体用反射防止剤・レジスト、金属メッキのミスト防止剤、泡消火薬剤等に使用されていました。

 

《ポリブロモジフェニルエーテル類(PBDEs)》

ポリブロモジフェニルエーテル類

ポリブロモジフェニルエーテル類(PBDEs)は、2つのベンゼン環がエーテル結合でつながれた基本骨格に臭素が複数ついた化合物群で、このうち製品として世界的に製造され、大量に使われた2種類(テトラ/ペンタブロモジフェニルエーテル類とヘキサ/ヘプタブロモジフェニルエーテル類)が条約の対象となっています。
プラスチック樹脂等の難燃剤として使用されていたもので、PCB同様に脂溶性が高く、生物蓄積されやすい物質です。

 

(3)非意図的生成物

製品の過程などで副生成物として意図せず生成してしまうもので、主に、ダイオキシン類(ダイオキシン、ジベンゾフラン)が挙げられますが、ヘキサクロロブタジエンヘキサクロロベンゼンペンタクロロベンゼンPCBポリ塩化ナフタレンも非意図的生成物として生成してしまう場合があります。
これらは、できる限り廃絶することを目標として削減することが求められています。

 

《ダイオキシン類》

ダイオキシン類
ポリ塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシン(PCDDs)とポリ塩化ジベンゾフラン(PCDFs)という、2つのベンゼン環と塩素、酸素からなる合わせて200種類以上の化合物の総称です。
PCB も含めて『ダイオキシン類』と呼ばれています。

ダイオキシン類は、物を燃やしたり、塩素を含む有機化合物を製造する工程で、副生成物として生成するもので、廃棄物の焼却施設、金属の精練、紙の塩素漂白などの工程からも発生します。

 

《PCB(ポリ塩化ビフェニル)》

pcb

過去にトランスなどの絶縁油や熱交換器の熱媒体、感圧複写紙等に使用されていました。日本ではカネミ油症事件の原因となった物質として知られています。

 

《ペンタクロロベンゼン(PeCB)》

pecb

海外では農薬として使用されていたようです。
他の農薬の不純物・分解生成物、PCB の副生成物として生成することがあるようです。

 

5.POPs条約締約国の義務

各国が講ずべき対策としては、下記項目が定められています。

  • 製造、使用の原則禁止、排出の削減:特定の農薬や化学物質の製造、使用の原則禁止、非意図的生成物の排出の削減をしなければなりません。対象化合物が具体的に付属書A~Cに挙げられています。
  • 残留性有機汚染物質を含むストックパイル・廃棄物の適正管理及び処理、国内実施計画の策定することが義務付けられています。
  • その他にも下記が挙げられています。
    • 新規残留性有機汚染物質の製造・使用を予防するための措置
    • 残留性有機汚染物質に関する調査研究、モニタリング、情報公開、教育等
    • 途上国に対する技術・資金援助の実施

 

6.POPs条約に関する日本国内の対応

POPs条約を遂行するにあたり、日本国内では種々の法律によって、禁止、規制等の対策が立てられています。

 

化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)

化審法は、難分解性、高蓄積性及び長期毒性又は高次捕食動物への慢性毒性を有する化学物質を第一種特定化学物質として、製造又は輸入の許可、使用の制限等が規定されています。
POPs条約の附属書A又はBに挙げられている化学物質の多くは、化審法の第一種特定化学物質として指定されており、これらは化審法によって禁止、規制等がされています。

 

農薬取締法

残留性有機汚染物質で農薬に関するもののうち、アルドリン、クロルデン、ディルドリン、エンドリン、ヘプタクロル、DDTは、日本では既に農薬としての登録が失効しており、販売できないことになっています。
また、HCB、マイレックス及びトキサフェンについては登録実績がないことから、日本では製造・使用されていない状況です。

 

その他の法律

その他ダイオキシンやPCBについては、ダイオキシン類対策特別措置法ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理に関する特別措置法などによって対策が講じられています。

 

7.POPs条約関連情報(資料など)

POPs条約に関する詳細については、環境省の下記ページ・資料を参照してください。

 

以上、今回はPOPs条約の基礎知識を解説しました。

 

(日本アイアール株式会社 S・T)

 

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