3分でわかる技術の超キホン 光無線通信の種類・特徴・用途(赤外線/可視光線/レーザー光)

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光無線通信の解説(赤外線・リモコン)

今回は「光無線通信」についてお話ししたいと思います。

皆さんは「光無線通信」というと最初にイメージされるのが、船舶間での船員が見て解読する光モールス通信や、陸上での明滅による通信などを想像される人も多いかと思います。
また、1800年代後半にグラハム・ベルによる数百メートルの距離での光による電話であるフォトフォンの開発、さらに過去に遡ると古代ギリシャでは松明によるアルファベットの符号が使用されたということも言われています。

このように光を使った通信の歴史は古いのですが、現在の光無線通信についてどのような状況か説明に入りたいと思います。

1.光無線通信で使用される光の種類

光無線通信とは、波長でいえば数百nm~数µmというTHz(テラヘルツ)の周波数帯の赤外線や可視光帯の領域の通信です。

このように電波より周波数が高い通信では、どのような種類の光が使用されているのでしょうか?
ここでは「赤外線」「可視光線」「レーザー光」の3つについて基本知識を整理します。
 

(1)赤外線

赤外線(infrared)は波長でいうと700µm~1mm程度に分布します。
その中でも赤外線通信として利用されるのは、近赤外線と言われる領域で波長が700nm~2.5µmあたりです。
1対1で人の目では感じることができない高速点滅通信です。

そして、皆さんが最も身近に利用しているテレビジョン、ステレオなどの装置を遠隔で操作するリモートコントロールに使用されています。また、通信ではありませんが、最近では赤外線そのものの特徴を利用したヒトの皮膚に当てて体温を測る機器に利用されています。

これらは、ベンダー各社ごとに異なる仕様でできていました。
そこで、1990年代に入り、IrDA(Infrared Data Association)という赤外線通信によるデータ通信を規格化する団体が発足しました。
情報機器間の通信を定めたものでいくつかのレイヤー規格から構成され、規格によって通信距離としては~1m程度で又通信速度は115kbps~16Mbpsと様々に用意される通信です。

皆さんが名前は知らなくても、スマートフォンより以前の携帯電話(ガラケー)同士を向かい合わせて、電話番号・メールアドレスなどの相互データ通信に利用されていた人も多いかと思います。これがIrDA規格に準じた通信です。
 
赤外線
 

(2)可視光線(VLC : Visible Light Communication)

人の目に見える可視光線帯域(波長でいえば380nm~780nm)を利用した通信です。
例えば、照明光による通信などがそれに相当します。特に照明としてLEDや有機ELなどの照明が登場して、変調光を使用した通信が可能になったことが普及の一因です。

変調方法は光の輝度を用いるものなど様々です。
受信デバイスとしては、フォトダイオードやイメージセンサなどが用いられており、これをカメラやスマートフォンに利用する技術が開発されています。

また、LEDを使用した数Gbpsの通信速度を持つ「Li-Fi」という技術が開発されています。
電波を利用したWi-Fiに対する光版で、IEEE802.11規格を使用したものです。

可視光線
 

(3)レーザー光

レーザー光を利用した無線通信です。
レーザー光はレーザー発振器を使用して作られる人工的な光です。

レーザーを使用するにあたっては、安全性を考慮する必要があります。
国際的な標準であるIEC基準をベースに日本工業規格JIS C6802が作成され、これによりレーザー製品を危険度によりランク分けされます。
 

 
通信機器は、安全基準である「クラス1M」である必要があります。
通信速度も数百Mbps~1Gbpsと高速通信が可能で、通信距離も数百m~2km程度です。
この通信機器では、通信距離があるためお互いの機器間の光軸合わせが重要であり、これを機器が自動で合わせる技術が内蔵されるのが一般的です。

また用途としては、屋外でビル間での通信、河川を跨いでの通信、島嶼間の通信など幅広く利用されています。常設、仮設など柔軟性もあります。
機器間の通信距離にも関係しますが、屋外での環境の影響(例えば霧、雨、雪など)が通信不具合に影響することもあります。
 
レーザー光の通信機器
 

光無線通信の種類として、赤外線・可視光線・レーザー光について説明してきましたが、これらを通じて言えるのは、光は到達することで通信が可能ということです。
したがって、障害物である遮蔽があると通信が不能となります。

これは、逆に考えると壁などがあると室外へは届かないため、秘匿性が室内に限られるというメリットとも言えます。
また電波と違って干渉性が少なく、比較的高速な転送が可能です。
電波のように認可を取得する必要が無い点もメリットの一つです。

 

2.光無線通信の用途

光無線通信の用途について挙げました。
これらはすでに実用化されているもの、研究開発段階のものなどが含まれます。
 

① 赤外線による無線通信の用途

情報機器間通信、IrDAプリンター、赤外線LAN、など
 

② 可視光線による無線通信の用途

スマートフォン撮像素子受信アプリ 水中通信 可視光LAN 車車間通信、構内通信、など
 

③ レーザー光による無線通信の用途

衛星間通信、ビル間通信、島嶼間や河川を跨いでの通信 TV中継局、など

 

3.今後も光無線通信の活用は広がる?

ということで今回は、電波より周波数が高い赤外線から可視光線の帯域の光無線通信について説明しました。

一般的に、ワイヤレス通信には電波の利用がなされます。
しかし、電磁波の障害を受けたくない病院や工場などでは光無線の利用が多く提案され、使用されています。これは、環境の影響も受けにくく、安定していることも要因として挙げられます。
また、光無線は電波と棲み分けを行い、補完関係として利用されることもあります。

障害物には弱い光無線ですが、高速化が可能ですし、秘匿性が必要な通信に向いているため、今後も用途を広め開発が進むと思われます。

 
(日本アイアール株式会社 特許調査部 T・T)
 

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