ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、そして全固体電池《二次電池の用語解説》

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代表的な二次電池の種類と特徴
 
自動車、スマートフォン、PC、ロボットなどモバイル機器の電源として電池は重要ですが、その代表的な三種類の電池を取り上げ、その特徴について整理してみたいと思います。
 

ニッケル水素電池

乾電池のように放電後に再充電できないものを一次電池、充電できるものを二次電池と呼びますが、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、そして全固体電池は二次電池です。

電池の基本構成としては、正極、負極とその間の電解質があります。

ニッケル水素電池では、充電時には正極側から負極側に水素イオンH+が電解液中を移動し、放電時には水素イオンH+が負極側から正極側に移動します。

正極材としてはニッケル酸化化合物など、負極材としては水素化合物などを用い、電解液にはアルカリ溶液を用います。

電池で重要な特性値として、どのくらいまで電気を貯められるか(フル充電でどのくらい仕事ができるか)と、充放電時の最大パワー(どのくらい短時間で充電できるか、どのくらいの電気出力を発生できるか)があります。これら二つの特性を表すのが蓄電最大エネルギー密度(Wh/kg)と充放電最大パワー密度(W/kg)です。

ニッケル水素電池の特性値は以下です。

  • 蓄電最大エネルギー密度:60 – 120 Wh/kg
  • 充放電最大パワー密度 :250 – 1000 W/kg

 

リチウムイオン電池

リチウムイオン電池では、正極と負極の間の電解液中を移動するイオンが、水素イオンH+ではなく、リチウムイオンLi+となります。

正極材としてはリチウム遷移金属複合酸化物など、負極材としては炭素材料など、電解液には有機溶媒などを用います。

リチウムイオン電池の特性値は以下です。

  • 蓄電最大エネルギー密度:100–243 Wh/kg
  • 充放電最大パワー密度  :250–340 W/kg

リチウムイオン電池は電解液に有機化合物の液体を使っているため、いくつかの課題があります。
一つ目は安全性の課題で、電池に過大負荷がかかって電池の温度が過上昇すると、最悪の場合、有機化合物が発火します。
二つ目として、有機化合物の電解液が高温や低温に弱いことがあります。
高温側では沸騰や揮発のため70度程度がほぼ限界であり、低温側ではイオン伝導性の低下のため-30度程度が限界とされています。このため、電池の温度コントロールが必要となります。

 

全固体電池

現在開発されている全固体電池は、リチウムイオン電池の一種です。
従来のリチウムイオン電池と異なるのは、陽極と陰極間のリチウムイオンLi+の移動を電解液の替わりに固体電解質により行うことです。このため、従来のリチウムイオン電池の電解質が液体であるための課題を無くすことができます。

全固体電池は熱に強いという特徴ももっています。これにより急速充電時や大電流放電時に発生する熱を逃がすための構造や冷却機構を簡素化できるため、小型化が可能となります。

一方、固体電解質の課題は、イオン伝導率です。
イオン伝導率を向上するために、固体電解質をどのような構成にするのかが全固体電池のブレークスルー技術となります。
固体電解質には、硫化物系や酸化物系のような無機系固体電解質や、有機系固体電解質、そして高分子系固体電解質を用いる場合があります。

硫黄化合物を用いる場合には、発火性と耐水性への対応が必要で、電池の製造プロセス及び電池にした後に対しても対策が必要になります。

酸化物系の固体電解質を用いる場合には、硫黄系に比べてイオン伝導率は低く、蓄電エネルギー密度も低いですが、硫黄系固体電解質のように水に弱い、発火性が高いという弱点がないことから、長寿命とすることが可能です。

 

燃料電池自動車(FCEV)

電気自動車(EV)では、畜電池に充電された電気をモータに送り、モータにより車両を駆動しますが、蓄電地とモータを用いる点は燃料電池自動車(FCEV、Fuel Cell Electric Vehicle)でも共通です。

異なる点は、燃料電池自動車では、‘燃料電池’で、蓄電ではなく発電を行うことです。
燃料電池では、水の電気分解(水を電気により水素と酸素に分解する)の逆の原理で、水素と酸素を使い電気を発生させます。

生成された電気は、蓄電用の電池に蓄えられます。
ちなみに燃料電池自動車のトヨタ・MIARI(ミライ)ホンダ・クラリティで用いられている蓄電池は、それぞれニッケル水素電池とリチウムイオン電池です。

 

(アイアール技術者教育研究所 H・N)

 

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