3分でわかる技術の超キホン アミノグリコシド系抗生物質・5選(配糖体と医薬品の解説)

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前回のコラムでとり上げた「マクロライド系抗生物質」に続く配糖体の抗生物質・抗菌剤の解説として、今回は「アミノグリコシド系抗生物質」についてご紹介します。

アミノグリコシド系抗生物質=アミノ配糖体抗生物質

アミノ糖を構成成分とする抗生物質で、薬剤によって抗菌作用の範囲に違いがあるものの、グラム陽性菌、グラム陰性菌、結核菌などに対して効果があります。

血中濃度が高いほど殺菌作用が強くなる濃度依存性抗生物質であることから1 回の投与量を高くすることで強い抗菌作用が得られます。欧米では1 日投与量を分割せずに1 回で投与する方法が確立されています。一般的には、経口投与では吸収されにくいため、通常は静脈内投与されています。

作用機序としては、アルカリ性環境下で効力を発揮し、細菌のリボゾームの30Sサブユニットに作用して、タンパク合成を阻害することで抗菌作用を示します。

アミノグリコシド系薬剤は細菌のリボソームに作用し、動物細胞のリボソームに対しては作用が弱いことから、化学療法薬としての選択毒性が発揮されます。ヒトには安全性が高いといえます。

しかし、耐性菌が認められており、その耐性菌ができる機構としては、酵素による薬剤の不活化、リボゾーム 30Sサブユニットの変異、薬剤の透過性の低下及び排出ポンプによる薬剤の排出によるものが知られています。
 

①トブラマイシン (Tobramycin)

メキシコの土壌から分離されたStreptomyces tenebrariusの培養によって産出されるnebramycinと呼ばれる一連の抗生物質複合体が発見され、そのうち、最もすぐれた抗菌作用を有するものがトブラマイシンです。
緑膿菌、変形菌、クレブシエラ、大腸菌、エンテロバクターのグラム陰性桿菌に殺菌的に作用するとされています。
敗血症、深在性皮膚感染症などの感染症や膀胱炎、腎盂腎炎などに使用されます。

トブラマイシン
 

②ストレプトマイシン (Streptomycin)

米国New Jersey 州で分離された放線菌Streptomyces griseusの培養液中に発見されたアミノグリコシド系抗生物質で、ペニシリンに次ぐ2 番目の抗生物質として開発されましたが、ペニシリンが効かないグラム陰性桿菌及び結核菌にも強く作用し、特に結核治療では第一次選択薬として広く用いられているとされています。

ストレプトマイシン
 

③ゲンタマイシン (Gentamicin)

放線菌の1種であるMicromonospora purpurea及びMicromonospora echinosporaが産生するアミノグリコシド系抗生物質の成分のうちGentamicin C群の物質が、グラム陽性球菌及びグラム陰性桿菌にすぐれた抗菌活性を示し、既存のアミノグリコシド系抗生物質に対する耐性菌に有効であることから、製品化されました。

黄色ブドウ球菌及び緑膿菌を含むグラム陰性桿菌に対する抗菌力に優れ、ペニシリン系及びカナマイシンなどに耐性な病原菌による感染症に対する優れた効果が認められました。
緑膿菌(呼吸器感染症や尿路感染症などの原因となる菌)に対しても抗菌作用をもつ感染性心内膜炎などに使用される場合もあります。

ゲンタマイシン
 

④カナマイシン (Kanamycin)

長野県の土壌から分離した放線菌の一新種Streptomyces Kanamyceticus の培養液中に産生されるアミノグリコシド系抗生物質で、グラム陽性菌・陰性菌及び抗酸菌に抗菌作用を示し、各種細菌感染症並びに結核に効果が認められています。
注射剤は主に結核などへ、内服薬は主に腸管感染症(大腸菌、赤痢菌などが原因となる)などへ使用されます。
カナマイシン一硫酸塩は内服によって消化管からほとんど吸収されないため、大腸菌、赤痢菌、腸炎ビブリオによる感染性腸炎に効果が期待できるとされています。

カナマイシン
 

⑤アルベカシン (Arbekacin)

カナマイシン耐性菌の耐性機構の研究から生み出されたアミノグリコシド系抗生物質で、各種のアミノグリコシド不活性化酵素に安定であり、MRSA を含むブドウ球菌、緑膿菌に対して強い抗菌作用を有しているとされています。敗血症、肺炎を適応症としています。

アルベカシン

この他、淋菌(淋菌感染症の原因菌)に対する抗菌作用をもつトロビシンやMRSA(MRSA感染症の原因菌)に対する抗菌作用をもつハベカシン、腸管内で作用する殺管腔アメーバ剤のパロモマイシン、腎障害・神経障害が強いので主として外用剤として用いられているフラジオマイシンなどがあります。
 

アミノグリコシド系抗生物質について特許検索してみると?

アミノグリコシド系抗生物質についての特許調査を、特許庁の”j-Platpat”を用いて行ってみました。
(※いずれも2019年11月時点における検索結果です。)

Ⅰ.アミノグリコシド系抗生物質の特許検索

(1)キーワード検索

「ストレプトマイシン」等アミノグリコシド系抗生物質の物質名をキーワードで検索すると多数の特許がヒットします。
例えば、ストレプトマイシンは49466件、ゲンタマイシンは20015件など、それぞれのヒット件数は数千~数万件になりますので、実際の特許調査では、絞り込みやコード検索等が必要になると思われます。
 

(2)FIによる検索

アミノグリコシド系抗生物質のFIはありませんが、関係しそうな下記のFIが使えそうです。

  • A61K31/7028・・グリコシド結合により,糖類でない化合物と結合した糖類基を持つ化合物
  • A61K 31/7034・・・炭素環と結合したもの,例.フロリジン
  • A61K31/7036・・・・炭素環に直接結合した少なくとも1個のアミノ基を持つもの,例.ストレプトマイシン,ゲンタマイシン,アミカシン,バリダマイシン,フオルチマイシン

このうちA61K31/7036は、800件程度でしたが、上位概念のFIは5000件またはそれ以上でした。
 

(3)Fタームによる検索

アミノグリコシド系抗生物質に関連するものとしては、例えば下記のようなものが挙げられます。

  • 4C057CC04・・NH2 4C057糖類化合物
  • 4C086EA09・・・・シクロヘキサン環  EA00炭水化物,糖類
  • 4C086ZB35・・・抗菌剤 ZB00医薬用途・生体防御

この中で、A61K31/7036を用いて公開年度推移を見てみました。(縦:件数、横:年)
 アミノグリコシド系抗生物質の特許調査
概ね、年20~40件程度で推移しているようです。
 

Ⅱ.各物質の特許検索

上記のFI、Fタームなどを用いて各物質の特許を調べてみました。

①トブラマイシン
  • KW(全文) : トブラマイシン : 5845件
  • KW(請求範囲): トブラマイシン : 652件
  • FI: A61K31/7036 * KW(全文): トブラマイシン : 307件
  • Fターム: 4C086EA09 * KW(全文): トブラマイシン : 338件

 

②ストレプトマイシン
  • KW(全文) : ストレプトマイシン : 49466件
  • KW(請求範囲): ストレプトマイシン : 931件
  • FI: A61K31/7036 * KW(全文): ストレプトマイシン : 277件
  • Fターム: 4C086EA09 * KW(全文): ストレプトマイシン : 329件

 

③ゲンタマイシン
  • KW(全文) : ゲンタマイシン : 20015件
  • KW(請求範囲): ゲンタマイシン : 1103件
  • FI: A61K31/7034 * KW(全文): ゲンタマイシン : 356件
  • Fターム: 4C086EA09 * KW(全文): ゲンタマイシン : 415件

 

④カナマイシン
  • KW(全文) : カナマイシン : 27010件
  • KW(請求範囲): カナマイシン : 913件
  • FI: A61K 31/7036 * KW(全文): カナマイシン : 402件
  • Fターム: 4C086EA09 * KW(全文): カナマイシン : 457件

 

⑤アルベカシン
  • KW(全文) : アルベカシン : 669件
  • KW(請求範囲): アルベカシン : 85件
  • FI: A61K31/7034 * KW(全文): アルベカシン : 61件
  • Fターム: 4C086EA09 * KW(全文): アルベカシン : 56件

※今回は、FIはセクションAを、Fタームは4Cを対象に検索をしてみましたが、実際の調査では上記検索式を組み合わせるだけでなく、調査の目的に応じて他のセクションやFターム・キーワードを用いた検索式を組み立る必要があります。

 
(日本アイアール株式会社 特許調査部 S・T)
 


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