エロージョン、コロージョン、そしてHICC
エロージョン(erosion)は「浸食」でコロージョン(corrosion)は「腐食」ですが、実際の不具合現象では、組み合わせで起こる場合も有ります。
エロージョンとは?
キャビテーションエロージョン(cavitation erosion)は、流体中での流速や圧力変化により局部的に飽和蒸気圧以下の圧力となることにより発生した気泡が再び流体中に溶け込み消滅することなく、一気に破裂する時の衝撃エネルギーにより、金属などの表面が削り取られる現象を意味します。
一方、流体中の硬質異物などの高速での表面接触通過により、表面が削り取られる現象は、コンタミネーションエロージョン(contamination erosion)と呼ばれます。
キャビテーションエロージョンでは、表面が引張り応力により破壊し、コンタミネーションエロージョンでは、コンタミネーションの切削力により破壊しますので、元々の表面の状態も影響します。例えば、コロージョンピット(腐食孔)のように腐食による表面荒れが発生しているような状態では、エロージョンに対しての耐性も低下します。浸食という言葉の替わりに壊食という言葉を使う場合もあります。
コロージョンとは?
エロージョンが機械的作用による材料表面の損傷であるのに対して、腐食は、化学的、あるいは電気化学的作用による表面劣化です。
酸自体が存在すれば化学反応で腐食が起こりますが、たとえ窒素酸化物NOxや硫黄酸化物SOxであっても、それらが水分と化合した場合には、硝酸や硫酸を生成するため、強い腐食作用を及ぼします。
電解腐食(electrolytic corrosion, 電食)では、二種類の金属が通電性の液体(例えば水)に接触している時に、低電位側の金属がイオン化して溶出していくことにより腐食が起こります。
腐食に対する耐久性を評価する代表的な試験として、塩水噴霧試験※1(SST, Salt Spray Test)や複合サイクル腐食試験※2(CCT、Combined Cyclic Corrosion Test)があります。
※1:5%NaCl水溶液を噴霧する
※2: 塩水噴霧,乾燥,湿潤をサイクリックに繰り返す
HICCとは?
HICCは、Hydrogen Induced Corrosion Crack (水素誘起腐食割れ)を表します。
破損のメカニズムは、
水素発生
↓
水素原子が材料に拡散
↓
腐食
↓
腐食による表面荒れ
↓
荒れによる切り欠き効果によって応力集中
↓
亀裂発生
↓
破壊
です。高温では特に材料中への水素拡散が進みます。
工程中に材料又は表面処理部に水素が残る可能性のある工程には、電気メッキ、リン酸塩処理、酸洗いなどがあります。
電気メッキの場合には、水素発生対策として「ベーキング」と呼び、メッキ表面を焼いて発生した水素を除去する工程があります。加熱により材料に侵入した水素の強制放出が行われます。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 H・N)