産業界に入ってから気づいた「学び直したい分野」は? (学びのヒント)

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経済産業省が実施した、平成28年度産業技術調査事業「理工系人材を中心とする産業人材に求められる専門知識分野と大学等における教育の状況に関する実態調査」(以下、経産省の調査)の結果に加え、文部科学省が実施した平成27年度先導的大学改革推進したく事業「社会人の大学等における学び直しの実態把握に関する調査研究」(以下、文科省の調査)からのデータをご紹介します。

経産省の調査では、日本の大学を卒業した44歳までの正規雇用の技術系人材約1万人を対象にアンケートを行っています。企業ではいわゆる「若手」「中堅」に分類される人々が中心です。

また、文科省の調査では、企業等、社会人教育未経験者、社会人学生、大学等の教育関係機関の4つの立場に対してアンケートを行っていることが特徴です。
 

社会人は、結局どこで、何をどのように学びたいのか?

連載の第1回では、大学で学んできたのに産業界に入ってから社会人がミスマッチを感じている理工系分野、第2回では、大学で学びたいと思っても大学に学びの場がない理工系分野に関して取り上げてきました。

今回第3回では、社会人は何を、どこで学びたいと思い、その際どんなポイントを重視しているかということについてまとめたいと思います。
 

産業界に入って気づいた”学びなおしたい分野”

働き始めてから知識が必要と感じた分野の中でも、実際に学びなおしたいと考える人が多いのは、やはり職場ですぐに使える実践的な分野です。
これまでご紹介してきたような、プログラム系、機械工学、人工知能、通信系、回路系や建築などのいわゆる「ドライ」な技術系の分野が目立ちます。
ドライな技術系分野に比べて数の上ではマイナーになってしまっている有機化学やバイオテクノロジーなどの「ウェット」系の技術分野の中では、他の先端分野を抑えてトップクラスの需要を誇るのが食品科学、栄養学です。

これらの結果は、連載第1回の「業界中の技術者の割合が比較的大きい業界で、かつ技術系人材が感じているギャップが大きい業界の結果を反映していると考えられます。
つまり、業界の技術分野のすそ野が広かったり、絶滅危惧分野を大学で学べていなかったり、かたや大学で基礎研究をしてきたけれど就職先では応用的な技術の知識を必要とされていることを示していると考えられます。

また特徴的なのが、経営学や金融工学やリスクマネジメントなどの社会科学系分野が続くことです。
ここは、今世紀に入ってから日本の大学でMOT(技術経営)コースが大々的に設置される前に技術系の高等教育を受けた世代にとっては在学中に接する機会も少なかったかもしれない分野ともいえますし、個人レベルで経営的センスを要求される時代に入ったことを強く意識する人が増えてきたことを示しているのかもしれません。

学びなおしたい分野(理工系)

経済産業省平成28年度産業技術調査事業「理工系人材を中心とする産業人材に求められる専門知識分野と大学等における教育の状況に関する実態調査」報告書 P.110より引用

 
このような「学びなおしたい分野」として以下のものが挙げられています。

技術系人材が学びなおしたい分野

  • ハード・ソフト(OS、アプリ)、プログラム系
  • 機械工学(設計、エンジン、材料、流体等)
  • 通信、ネットワーク、セキュリティ系
  • 電力、アナログ・デジタル回路
  • 人工知能・機械学習、画像(CG等)、インターフェース系
  • 経営・サービス・金融工学、リスクマネジメント
  • 経営学(組織・戦略、ベンチャー論)
  • 電子デバイス系(ネット家電、ディスプレイ等)
  • ロボット・メカトロニクス
  • 建築計画、設計、デザイン、住居
  • データベース・検索系
  • 土木工学(構造・施工、海岸、地盤系)
  • 自動車工学/航空宇宙工学/船舶工学

など
 

“どこで”、”どうやって学ぶか “に求められるのはファストフード的手軽さ?

しかし、ここで重要なのはその学び直しの方法です。
経産省の調査では、自社内の研修や自主的な勉強会・研究会への参加、外部教育機関での学習や参考書などを活用しての独学に続いて、インターネットなどを利用したオンライン講座の履修という、会社やプライベートな時間を活用できるものを、大学でのリカレント教育的な学びよりも重視しているという結果でした。
経済産業省平成28年度産業技術調査事業「理工系人材を中心とする産業人材に求められる専門知識分野と大学等における教育の状況に関する実態調査」報告書 P.112

経済産業省平成28年度産業技術調査事業「理工系人材を中心とする産業人材に求められる専門知識分野と大学等における教育の状況に関する実態調査」報告書 P.112より引用

 
特にインターネットを使った大規模な講座であるMOOCsをはじめとした、オンライン講座で学ぶメリットについては、「時間の自由が利く」「通勤中スマホ・タブレットでも見られる」「費用が安い」等の理由や、「入学・履修に対しての敷居が低い」など、いつでも気軽に取り組める点が評価されているようです。
 
オンライン講座のメリット

経済産業省平成28年度産業技術調査事業「理工系人材を中心とする産業人材に求められる専門知識分野と大学等における教育の状況に関する実態調査」報告書 P.113より引用

 
もうひとつ、社会人自身が学び直しに何を求めているかを示すデータがあります。
技術系人材に限った調査ではなくなりますが、文科省の調査では、大学で学びなおす目的・動機、社会人学生が習得したい・企業等が身につけてほしい能力、重視してほしい(重視する)教育内容/教育方法/教育環境、職場への希望・企業等による取り組みについて調べています。
経産省の調査ではオンライン講座に水をあけられて人気のなかった大学ですが、やはりそこで学びの場として求められているものが、この時代の大人の学びに必要な要素でしょう。
 
重視する教育内容(文科省調査)P76

文部科学省平成27年度先導的大学改革推進委託事業「社会人の大学等における学び直しの実態把握に関する調査研究」報告書 P.76より引用

 
重視する教育環境(文科省調査)

文部科学省平成27年度先導的大学改革推進委託事業「社会人の大学等における学び直しの実態把握に関する調査研究」報告書 P.77より引用

 
修得すべき能力(文科省調査)P78

文部科学省平成27年度先導的大学改革推進委託事業「社会人の大学等における学び直しの実態把握に関する調査研究」報告書 P.78より引用

 

ここで見えているのは、早く・安く・おいしく、というファストフード的うまみのある教育であり、一般的には従来の大学像を塗り替えるようなものが望まれているのです。
具体的には、学びたい本人の社会人からの要望は「専門知識・基礎知識の復習」「授業料を安くする」ことで、社会人を抱える企業からは「専門的知識」「企業等の出身の講師や実務の最先端の講師による講義」「短期間で修了できるコース」が望まれており、また大学が重視しているのに社会人や企業からは重視されていないのが「体系的な教育課程の充実」という具合です。

これからの社会人に必要とされる学びは、スポット的に気軽に受けられるオンライン教材で、企業経験のある専門家が携わり、リーズナブルな価格、という「いいとこどり」ができるスタイルなのかもしれません。
 
(アイアール技術者教育研究所 M・H)
 


関連コラム:「入社後の業務のギャップと社会人教育」(連載)

 

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