- 《大好評》LTspice設計実務シリーズ
LTspiceで学ぶシグナル・パワーインテグリティ設計・解析の基礎(セミナー)
2024/12/12(木)10:00~17:00
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水晶振動子は、聞きなじみのない名前の部品という方もいらっしゃるかもしれませんが、その名の通り水晶を用いた電子部品です。
水晶といえば、占いの水晶玉とか美しい輝きを持った宝石としての水晶が思い浮かべられますね。
しかしながら、ここでは水晶を用いた電子部品について説明します。
水晶振動子は、現在の高性能電子機器にはなくてはならない部品となっています。
例えば、クォーツ時計がその代表でしょう。
また、パソコンの性能で、よくクロック何メガヘルツとか言われていますが、このクロックを発生させているのが水晶振動子、またはその応用部品であるからです。
ちなみに、この水晶振動子を含む水晶デバイスは、「産業のコメ」ならぬ「産業の塩」とも称されています。(「産業の塩」はネジでしょ!ともよく言われますが)
水晶振動子の原理の発見は古く、今から百数十年前、フランスの物理学者キューリー兄弟(兄はキューリー夫人の夫)によって発見されました。
それは、図1(a)のように水晶の結晶に機械的に圧力をかけると、表面に電気が発生すること(圧電効果)と、図1(b)のように、水晶に電圧をかけると、機械的にひずみを発生する(逆圧電効果)ことです。
水晶振動子は、この原理を応用しています。
現在の水晶振動子は、人工水晶でできています。
人工水晶は、「ラスカ」と呼ばれる天然の水晶が原料です。
このラスカを高温高圧中で溶かして、高い純度で再結晶させた人工水晶を用いています。
水晶振動子は、水晶の結晶をごく薄い板状の切り出した切片の両側に電極を取り付けたもので、電圧を加えると振動します。
水晶は、互いに直角な方向にX、Y、Zの結晶軸を持っています。その軸に対してある一定の角度で板状に切り出すと、周波数―温度特性がよく、安定して振動する水晶片が得られます。
この中で、現在よく使われているのは、MHz(メガヘルツ)帯でよく用いられている「ATカット」と呼ばれる角度でカットしたものです。
水晶振動子の役割は、2つほどあります。
1つ目は、安定した周波数を維持するということです。
スマートフォンなど電波を利用する電子機器は、その機器の電波によって、ある一定の周波数が割り当てられています。ここで周波数が狂うと、ほかの人と混信して通話やメールができなくなってしまいます。
水晶振動子は、精度の高い一定の周波数を生みだすため、この周波数を基準信号として安定した周波数を維持し、それぞれの機器に合った電波の送受信を可能にしているのです。
そして2つ目は、規則正しい基準信号を作り出すということです。
パソコンでは、CPUをはじめメモリー等、様々なICが使われていますが、それぞれがうまくタイミングを合わせて作動しないと、正常な動作ができません。
タイミングを合わせるためには、規則正しい基準信号を作る必要があります。
最も身近で利用されているのが、クォーツ時計です。
昔は機械式時計でしたが、最近では高精度な時計は、水晶振動子とそれを利用したICで構成されています。
例えば、水晶振動子の代表的な周波数として32.768kHzがあります。
この32768HzをICにより1/2に分周し続けると、時計の基準の1秒1パルス(1Hz)ができます。その1パルスが秒針を1秒進めます。
次に使い方ですが、実は、水晶振動子は発振回路を持たないので、水晶振動子単体ではクロック信号を出力することができません。必ず発振回路と組み合わせて使います。
図2は、一般的なCMOSインバータを用いた水晶発振回路の例です。
C-MOSインバータやトランジスタなどを用いた増幅回路において、出力を入力に戻す (フィードバック) ようにループを構成し、増幅が継続するようにした回路を「発振回路」と呼びます。
水晶振動子を介してフィードバックすることにより、インピーダンスの低い(負荷時)共振周波数の信号のみを選択的に増幅することができます。
実際には、水晶振動子メーカーのデータシート等を確認しながら設計します。
また、水晶振動子と発振回路が一体となった「水晶発振器」という部品があります。(「水晶モジュール」や「クロックモジュール」とも言います。)
これは、電源電圧を加えると所定の発振周波数が出力されるので、発振回路の設計を考慮せずに済むので便利です。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 E・N)