【自動車部品と制御を学ぶ】制御システムの「基本構成」の考え方がこれで分かる!
システム全体の機能を高めるためには、個々の機能を高めることと、それらの機能の連系能力を高めることが必要です。
この連載コラムシリーズ「自動車部品と制御を学ぶ」では、主に自動車関連技術を例として、部品の機能と制御について解説します。
今回は制御システムのレイアウトについて取り上げます。
制御システムの基本構成(検出⇒演算と出力決定⇒作動)
人間の行動とシステムの作動を比べると、図(A)と(B)のようになります。
システム制御を考える時に、人間のしくみはとても参考になります。
(最近では、人間の臓器が脳からの指令を受けるだけでなく、独立で互いにコミュニケーションを行っているというようなことも分かってきたようです。)
基本的理解として、まずは図のように三つの領域に分けます。
システムでは「検出」の領域がセンサ、「演算&出力決定」がコントローラ(コントロールユニット、制御モジュール)、そして「作動」の領域がアクチェータ(actuator、作動機械要素)となります。
システムの分担
技術の進歩により、センサ、コントローラ、そしてアクチェータが分担する機能範囲には様々なバリエーションが生じました。
以下の図で、基本構成の(C1)と比較して分担の例を示します。
(C2)のケースは、コントローラがより多くの仕事をするケースで、(C3)では逆にコントローラの仕事が少なくなります。
ケース(C2)と(C3)のメリットとデメリットは以下のように裏表の関係にあります。
- ケース(C2)では、シンプルなセンサやアクチェータが使用できる一方で、コントローラのハードウェアとソフトウェアの設計が複雑になる。
- ケース(C2)では、適用するセンサやアクチェータのタイプが異なり、電気的特性が変ると、コントローラにおいて、センサの信号処理回路やアクチェータの駆動回路などのハードウェアを変更しなければならない。ケース(C3)では、その必要がない。
- ケース(C3)では、センサとアクチェータが高機能化とともに複雑化する。
- ケース(C3)では、センサ部で検出されたアナログ信号が信号後処理によってデジタル出力でコントローラに送信され、コントローラからアクチェータへもデジタル出力で送信できる。
(アクチェータで目標値に対応する駆動電流の演算と発生を行う)
このようなデジタル通信の場合、センサとコントローラ間やコントローラとアクチェータ間のワイヤハーネス(配線)が長くなっても、外部や他機器からの電磁ノイズに対して強くなる。 - ケース(C3)では、センサやアクチェータの製品バラツキ(特性バラツキ)の補正が可能となる。
センサとアクチェータの「インテリジェント化」
ケース(C3)のようなセンサやアクチェータを「インテリジェントセンサ」「インテリジェントアクチェータ」あるいは「スマートセンサ」「スマートアクチェータ」と呼びます。
システムではシステムの故障診断を行い、バックアップ制御などを行わなければなりませんが、図(D)で示すように、センサやアクチェータがインテリジェント化されていると、自己故障診断を行うこともできます。
センサとアクチェータの「一体化」
アクチェータのインテリジェント化をさらに進めた姿として、コントローラとアクチェータを一体にする場合もあります。
この場合には、熱、振動などアクチェータの搭載環境にコントローラ部も耐えられるようにしなければなりません。一方、コントローラとアクチェータ間の配線が不要になります。
アクチェータの制御においては、アクチェータ搭載場所の環境条件による補正やアクチェータの駆動状態によるフィードバック制御を行う場合がありますが、アクチェータにセンサを組み込む、すなわちセンサとアクチェータを一体化すると、補正や制御の精度向上が可能になります。
分散制御と統合制御
多くのセンサを用い、多くのアクチェータで複数の機能を実現する場合には、図(F)に示すように、コントローラを統合していくか、分散したままで、コントローラ間で通信を行うかという選択があります。
分散制御と統合制御の主な特徴は以下のようになります。
- (F1)分散制御では、個々のシステムの技術がそのまま適用可能のため、独立開発が可能。
- (F2)統合制御では、コントローラ系のトータルコスト削減が可能で、複数のアクチェータを連動させて制御することが容易になる。
- (F2)統合制御では故障の影響が複雑となる
これらのメリット、デメリットを考慮して、独立システムと統合システムの割合(組み合わせ)を最適化することが必要です。この場合には、技術変化をより長期に捉えた戦略が重要となります。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 H・N)