医薬品開発における製剤開発の各段階で必要となる統計解析基礎講座
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医薬品の多くが「粉体」を扱っています。
粉体はいろいろな大きさの粒子の集合ですが、粒子の大きさを揃えることによって、流動性等の粉体の性質が変わります。
医薬品の製造工程でよりスムーズに粉体を扱うために、粒子の大きさを揃える「分級」という操作があります。今回は、この「分級」について基礎知識をまとめてみました。
目次
「分級」とは、粉砕や造粒によって得られた粉体を粒子径などによって分別することをいいます。
あるいは、粒度分布の範囲を限定する、同じような大きさの粒子を集めることともいえます。
通常、粉体物は、粒度分布を持っており、そのままの粉砕物を用いた製剤工程ではトラブルの原因になったりします。また、散剤や顆粒剤等粒度規格が設けられているものなどは粒度をそろえる作業が必須になってきます。
分級は、主に下記を目的として行われる工程です。
種類の異なる粉体を混合する場合は、粒子径が近いほど均一に混合されます(混合均一性)ので、粒子径を整えることは粉体ひいては製品の品質均一化につながります。
また、粒子径が異なるものを含むと、製剤化に悪影響が出たりします。例えば、錠剤製造の場合、打錠障害や硬度に影響が出たりします。これらを回避するために分級が行われます。
分級をすることにより、下記のようなメリットが得られることが期待されます。
ただし、下記のようなデメリットもあります。
これらのメリット・デメリットを踏まえて、個々の医薬品に最適な分級に用いる機械や条件が選択されます。
ちなみに、粉体によっては粉じん爆発の恐れがあります。
酸化や粉じん爆発を回避する目的で、窒素ガス雰囲気で分級を行う設備もあります。
分級には以下のような方法があります。
医薬品製造において最も用いられる方法で、網ふるいを用いて通過する粉体と通過しない粉体を分ける方法です。
網ふるいを振動させて分級する方法が主流となっています。
粉体の粒子径の違いによる沈降速度を利用する方法で、下記のものがあります。
また、分級は乾式分級と湿式分級に分けられますが、医薬品製造には、乾燥操作が必要な湿式分級が用いられることは少ないといわれています。
医薬品製造で、分級に用いられる機械としては、主にふるいが用いられているようです。理由としては、医薬品等で使用される原薬や賦形剤は凝集性が強く、また、摩損性が高いためといわれています。
網面を振動させて分別する方法です。ロータップ式振動機、電磁式振動ふるい、円形振動ふるい機等があります。ふるいはJIS規格の標準網ふるいが使用されます。
100μm程度以ドの製品を得る場合に用いられることが多いようです。自然気流式は、粉体が気流中で旋回する事により遠心分級するものです。強制気流式は、分級ブレードを強制的に回転させて遠心分級します。粒度調整が容易とされています。
なお、日本薬局方には、 3.04粒度測定法の第2法 ふるい分け法が記載されていますのでご参照ください。
J-Platpatを用いての特許を調査してみました。(調査日:2021.10.27)
※A61k9/00:特別な物理的形態によって特徴づけられた医薬品の製剤
分級のFタームとしては、4C076GG04[医薬品製剤 ・固形製剤の製法 ・・粉末化法 ・・・分級,篩別]があります。
上位概念としては、
これらの調査結果の中には、「分級方法および分級装置」「予備分級技術を用いて乳糖を製造する方法及びその乳糖から形成させた医薬製剤」等々多数の特許が検出されました。
JSTが運営する文献データベース「J-STAGE」で簡単な文献検索を行ってみました。(調査日:2021.10.27)
「医薬品原薬及び賦形剤用気流分級機の開発」「乾式分級機」「円筒堅形分級機」「ふるい分け・分級」などの文献が見られました。
以上、今回は医薬品製剤技術のうち、「分級」に関する基礎知識をご紹介しました。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 S・T)