【中国特許分析】炭素繊維に関する中国特許出願の状況は?《主な現地企業も紹介》

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炭素繊維

新世代の繊維である「炭素繊維(carbon fiber)」は、強くしなやかな繊維です。

炭素繊維は一般に炭素原子の含有率が90%以上のものを指しますが、その強度は鋼の7〜10倍、ヤング率はいわゆるケブラー繊維の2倍、従来のガラス繊維の2〜3倍です。

耐摩耗性、耐熱性、熱伸縮性、耐酸性、電気伝導性にも優れており、国防、軍事産業、航空宇宙、交通、自動車、スポーツの分野で広く使用され、21世紀の「ブラックゴールド」とも呼ばれています。

今まさに、ハイテク製造業における材料性能に対する要求と需要の高まりを受け、炭素繊維産業は急速な発展の時代を迎えています。

今回は、中国特許データベース“Incopat”を利用して、炭素繊維技術に関する中国特許出願状況を簡易的に分析してみました。

1.中国における炭素繊維産業

中国では、政府が炭素繊維とその複合材料の研究開発、工業化、応用を促進しています。国家の主要な戦略的材料とするべく、次々とサポートする政策を導入してきました。以下に概要を示します。

  • 2015年5月、中国国務院が発行した「中国製造2025」では、主要な戦略的材料の開発の焦点として高性能炭素繊維とその複合材料を挙げ、基礎研究とシステム構築を強化し、工業生産のボトルネックを打破することが提案されています。
  • 2015年9月、中国国家製造力建設戦略諮問委員会は「中国製造2025技術ロードマップの主要分野」を発表し、2020年と2025年の炭素繊維とその複合材料の開発目標を策定しました。
  • 2016年11月、中国国務院は「国家戦略的新興産業の発展のための第13回5カ年計画」を発表し、炭素繊維産業チェーンの上流と下流の協力を強化し、コラボレーションアプリケーションプラットフォームを構築することを目指しています。
  • 2017年1月、中国工業信息化部が「新素材産業開発ガイド」を発行し、高性能炭素繊維が国の重要な戦略的素材であることを明言しました。高強度・高弾性炭素繊維の工業化技術を打ち破り、炭素繊維応用のデモンストレーションを組織化することを提案しました。
  • 2017年4月、中国科学技術部は、材料分野における科学技術革新のための「“第13回5カ年”材料分野における科学技術革新のための特別計画」を発表し、主要な国家プロジェクトや国防建設の材料ニーズを満たすために、高性能炭素繊維と複合材料を精力的に開発、炭素繊維複合材料のサポート能力と国際競争力を強化することが提案されています。
  • 2017年11月、中国国家発展改革委員会は、「製造コア競争力強化のための3カ年行動計画(2018-2020)」を発表し、高性能炭素繊維などの新素材の開発とその応用に焦点を当て、先進複合材料の製造と応用レベルを向上させることを目指しています。
  • 2018年12月、中国工業信息化部が「初となる主要新素材の活用事例の推進計画書(2018年版)」を発行しました。推進計画書では高性能炭素繊維を含め、炭素繊維複合材料を扱う企業にこの新素材の使用を奨励しています。
  • 2019年10月、中国国家発展改革委員会は「産業構造調整手引書(2019年版)」を発行し、炭素繊維などの高性能繊維および製品の開発、応用、製造が、国の産業構造調整手引書に奨励されたプロジェクトとしてリスト化しました。

以上のように、炭素繊維材料開発政策の指導にはじまり、研究、応用分野の拡大、材料のローカリゼーションなどの着実な進展により、世界における中国の炭素繊維生産シェアも増加しています。

炭素繊維産業の分析データによると、中国の炭素繊維市場需要は2018年と比較して2774トン(16.5%)増加し、2019年には19,563トンに達しました。2022年までに、26,800トンに達すると推定されています。

では、その特許出願状況はどうなっているのでしょうか?
 

2.世界各国への出願動向

炭素繊維材料に関する世界各国の特許出願公開件数を見ると、中国の件数が一番多く、日本、米国の順で多くなっています。特許出願公開公報件数の推移(図1-1)によれば、かつては日本やアメリカがリード役として牽引していましたが、2009年に中国の年間件数が日本を抜き、2014年からはさらに急増し、2018年以後は年間1万件以上の特許出願が公開されていることが分かります。

炭素繊維材料に関する世界の特許出願公開公報件数の推移
【図1-1 炭素繊維材料に関する世界各国の特許出願公開公報件数の推移】

 
 

[PCT出願]出願人国籍別の公開公報件数割合
【図1-2 [PCT出願]出願人国籍別の公開公報件数割合】

 
 
なお、近年では、グローバルな特許出願戦略をとる企業が多くなってきており、PCT出願(WO)も年々増加しています。PCT出願では、米国籍が一番多く31.70%で、次いで日本国籍26.33%、ドイツ籍10.76%、中国籍6.55%、韓国籍4.97%、と続いています(図1-2を参照)。
 

3.直近10年間の中国特許・実用新案の出願状況

直近10年間の炭素繊維材料に関する中国出願の状況(公開件数推移)
【図2 直近10年間の炭素繊維材料に関する中国出願の状況(公開件数の推移)】

 
 
直近10年間の出願状況(図2)を見ると、特許だけではなく実用新案も年々拡大しています。実用新案の公開数の割合も、年々増加する傾向があります。

 

4.炭素繊維材料に関する中国特許出願のIPC分類状況

炭素繊維材料分野の中国特許において、よく使用されているIPC分類の上位を表1にまとめました。

IPC分類 定義
B32B 積層体,すなわち平らなまたは平らでない形状
B32B3/00 外面または内面にある一つの層が不連続または不均一なもの,または一つの層が平らでない形状のものから本質的になる積層体
B32B5/00 層の不均質または物理的な構造を特徴とする積層体
B32B9/00 本質的にグループB32B11/00~B32B29/00に包含されない特殊な物質からなる積層体
B32B27/00 本質的に合成樹脂からなる積層体
B32B33/00 特殊な性質または特殊な表面の特色,例.特殊な表面被覆,を特徴とする積層体;他の単一のクラスに包含されない特殊な目的のために設計された積層体
C08L 高分子化合物の組成物
C08K 無機または非高分子有機物質の添加剤としての使用
C08K3/00 無機物質の添加剤としての使用
C08K5/00 有機配合成分の使用
C08K7/00 形状に特徴を有する配合成分の使用
C08K13/00 メイングループC08K3/00~C08K11/00のいずれのメイングループにも包含されない配合成分であって,そのいずれの化合物も本質的な配合成分からなる混合物の使用
B29C プラスチックの成形または接合;他に分類されない可塑状態の材料の成形;成形品の後処理
B29C70/00 複合材料,すなわち補強材,充填材あるいは予備成形部品からなるプラスチック材料,例.挿入物,の成形
C04B 石灰;マグネシア;スラグ;セメント;その組成物,例.モルタル,コンクリートまたは類似の建築材料;人造石;セラミックス;耐火物;天然石の処理
C04B35/00 組成に特徴を持つ成形セラミック製品;セラミック組成(炭化物,ダイヤモンド,酸化物,ほう化物,窒化物,けい化物に結合しているか,または他の金属化合物,例.酸窒化物もしくは硫化物,と結合している巨視的な強化材としての使用以外の遊離金属を含有するセラミック組成物,例.サーメットC22C);セラミック製品を製造するための無機化合物粉末の処理
C04B35/83 ・・・・炭素基質の炭素繊維
C08J 仕上げ;一般的混合方法;サブクラスC08B,C08C,C08F,C08GまたはC08Hに包含されない後処理(プラスチックの加工,例.成形B29)
C08J5/00 高分子物質を含む成形品の製造
D01F 人造のフィラメント,より糸,繊維,剛毛またはリボンの製造において化学的な特徴をもつもの;炭素フィラメントの製造に特に適合した装置
D01F9/00 他の物質の人造フィラメントまたはその類似物;その製造;炭素フィラメントの製造に特に適合した装置
D01F9/12 ・・炭素フィラメント;その製造に特に適合した装置
B01D 分離
D06M 繊維,より糸,糸,織物,羽毛またはこのような材料から製造された繊維製品のクラスD06の他に分類されない処理
D06M101/00 処理される繊維,より糸,糸,織物またはこのような材料から製造された繊維製品の化学構造。
D06M101/40 ・炭素繊維
D06M14/00 繊維,より糸,糸,織物,またはこれらの材料から製造された繊維製品に対する炭素-炭素不飽和結合を含有する単量体のグラフト重合
D06M14/36 ・炭素繊維に対するもの
A41D 外着;保護衣;付属品

【表1 IPC分類説明】

 
 

中国特許出願のIPC分類別公開件数
【図3 中国特許出願のIPC分類別公開件数】

 
 
図3からわかるように、中国における炭素繊維材料の特許出願は、主に4つのIPC分類に集中しています。
B32B(積層体)、C08L(高分子化合物の組成物)、C08K(無機または非高分子有機物質の添加剤としての使用)、B29C(プラスチックの成形または接合、成形品の後処理)の4つです。

また、全体として、炭素繊維材料に関する研究が、産業チェーンの上流で炭素繊維の製造、処理、産業チェーンの中間での炭素繊維複合材料の開発などの基礎研究に専念していることもうかがえます。

 

5.注目されている技術効果

incoPatによって機械的に抽出したキーワードに基づいた統計結果を見てみましょう。

図4より、炭素繊維材料に関する中国特許は、技術効果や課題が、複雑性低減、コスト低減、強度向上、利便性向上、安定性向上に、集中していることがわかります。

技術効果ごと公開件数
【図4 技術効果ごとの公開件数】

 

6.炭素繊維材料分野の中国特許の出願人分析

(1)中国特許の出願人の国別割合

中国特許の出願人のうち、図5に示すように、中国籍の出願人が全体の93.37%と9割以上を占めています。外国籍の出願人の中では、日本籍が2.48%と一番多く、次いでアメリカ籍の1.62%、ドイツ籍の0.74%、韓国籍の0.45%となっています。

炭素繊維材料に関する中国特許の出願人の国別割合
【図5  炭素繊維材料に関する中国特許の出願人の国別割合】

 

(2)中国特許の出願人ランキング

中国特許の出願人上位10位のうち、外国籍の出願人は5位の東レ株式会社一つしかありません。つまり、中国籍の出願人の特許公開件数は外国企業に比べて圧倒的に優位となっています(表2)。

ここで注目すべきは、中国の主要な出願人は主に大学、科学研究機関であることです。上位10位のうち、1位の中国石油化工股份有限公司、8位の江蘇恒神股份有限公司、10位河南科信ケーブル有限公司以外は、すべて大学出願人になっています。

順位 出願人 公開件数 出願人国別
1位 中国石油化工股份有限公司 556 中国
2位 ハルビン工業大学 407 中国
3位 東華大学 344 中国
4位 北京化工大学 295 中国
5位 東レ株式会社 286 日本
6位 山東大学 281 中国
7位 中南大学 265 中国
8位 江蘇恒神股份有限公司 256 中国
9位 西北工業大学 225 中国
10位 河南科信ケーブル有限公司 216 中国

【表2 炭素繊維材料に関する中国特許出願人上位ランキング】

 

7.炭素繊維材料関連の中国現地企業の概要と特許出願動向分析

出願人上位10位にランクインした中国現地企業3社に着目してみます。
「中国石油化工股份有限公司」、「江蘇恒神股份有限公司」と「河南科信ケーブル有限公司」の特許公開状況をさらに調べてみました。
 

(1)中国石油化工股份有限公司

中国石油化工股份有限公司(http://www.sinopec.com/、略称:中国石化Sinopec)は、2000年2月、国有企業である中国石油化工集団公司から現業部門を引き継いで発足した民間企業です。

Sinopecは、中国で最大の総合エネルギー・化学企業の1つです。主に石油および天然ガスの探査と開発、パイプラインの輸送と販売、石油精製、石油化学、石炭化学、化学繊維、その他の化学製品の生産と製品の販売、保管、輸送、研究開発に従事しています。

Sinopecの傘下に、「上海石油化工」という持株子会社があります。上海石油化工は、中国最大の総合精製化学会社の1つであり、精製油、中間石油化学製品、合成樹脂、合成繊維の重要な国内生産拠点です。

2016年3月、上海石化は同社のアクリル繊維南工場で、自社生産の炭素繊維で作られた複合ギアを使用した1年間の産業応用試験を完了しました。試験に使われた炭素繊維複合ギアには、「g」クラスの3.5cmから「kg」クラスの20cmまで、さまざまなサイズがありましたが、どれも精度が高く、高強度、高温耐性を備えているため、風力発電、化学をはじめその他のギア応用産業が注目しています。

2018年、上海石化が開発・生産したCFRP(炭素繊維強化複合材料)引抜成形シートが、重慶の超長トンネルの補強・補修に初めて使用されました。また同年末には、同社の炭素繊維強化材が南京空港再建・拡張プロジェクトに採択されました。

2019年3月には、上海石化とハルビン工業大学によって起草された国内初の「炭素繊維複合材料による補強および化学パイプラインの修理に関する技術仕様書」が正式に公開・施行されました。これにより上海石化は、国内の建設補強プロジェクトにおける炭素繊維材料の応用分野に参入する数少ない企業の1つになりました。

2018年1月、上海石化がラージトウ(LT)炭素繊維の重合、紡糸、酸化炭化プロセス技術の開発に成功し、千トン級PANベースの48Kラージトウ炭素繊維の完全な生産加工量産化の技術基盤を形成しました。
3月には、国産48Kラージトウ炭素繊維の試作に成功しているように、国産による原糸製造技術も高めています。2020年3月には、「12,000トン/年48Kラージトウ炭素繊維」プロジェクトが正式に着工しました。その総投資額は35億元で、2024年完成予定の上海一大産業プロジェクトです。

2021年5月、上海石化の年産1,000トンの炭素繊維工場が立ち上げ準備段階に入りました。この工場は上海石化の炭素繊維プロジェクトの第2段階で、国内生産率を高め、生産開始後の同社の炭素繊維生産能力は、500トン/年から1,500トン/年にまで増加します。そして、中国のハイエンド製造業の発展を強力にサポートします。

図6-1に炭素繊維材料に関する中国石油化工股份有限公司の中国特許出願公開状況を示します。
2020年までの同社の炭素繊維材料に関する中国特許出願公開は556件あり、有効特許が311件、審査中が111件、失効が134件(拒絶43件、出願公開後の取下げ41件、放棄1件、特許料未納37件、存続期間満了12件)となっています。

また、中国国内での出願以外に、PCT出願(WO)1件、米国出願(US)1件、日本出願(JP)1件、台湾出願(TW)1件、イギリス出願(GB)1件もあります。

炭素繊維材料に関する中国石油化工股份有限公司の中国特許出願公開状況
【図6-1 炭素繊維材料に関する中国石油化工股份有限公司の中国特許出願公開状況】

 

(2)江蘇恒神股份有限公司

江蘇恒神股份有限公司(https://www.hscarbonfibre.com/)は、2007年8月に設立され、江蘇省丹陽航空工業団地に位置し、炭素繊維とその複合材料のライフサイクル管理に焦点を当てたハイテク企業です。

同社は、主に炭素繊維、複合材料、構造部品の設計、研究開発、生産、販売、技術応用サービスに従事しています。原糸、炭素繊維、サイジング剤、ファブリック、液体樹脂、接着剤、プリプレグ、炭素繊維複合材料部品、航空複合材料構造部品を製品ポートフォリオとしている唯一の国内企業です。

江蘇恒神股份有限公司が生産する炭素繊維製品は、ポリアクリロニトリル系炭素繊維に属し、主に航空宇宙、鉄道輸送、風力タービンブレード、海洋機器、ケーブルワイヤ、建物補強、圧力容器、自動車用途などで使用されています。

5つの単一ラインの1,000トン炭素繊維生産ラインがあり、年間5,000トンのさまざまなタイプの炭素繊維、1500万平方メートルの様々な仕様のファブリックとプリプレグ、及び1,200トンの強化樹脂と5,000トンの複合製品を生産できます。

製品モデルには、HF20シリーズ(T300グレード)、HF30シリーズ(T700グレード)、HF40シリーズ(T800グレード)、HF50シリーズ(T1000グレード)、高強度高弾性率HMシリーズなどの高強度炭素繊維が含まれ、製品仕様には、1K、3K、6K、12K、24K、50Kなどが含まれます。

同社は、江蘇省PANベースの炭素繊維工学技術研究センター、江蘇省炭素繊維複合材料工学センター、国家複合材料企業ポスドク研究室、科学技術省炭素繊維複合材料産業技術革新拠点を順次設立し、同時に、英国には恒神ヨーロッパ技術センターが設立されました。

国際的な先進技術と設備を吸収することにより、同社は独立した知的財産権を持つ炭素繊維と複合材料の製造技術を形成し、炭素繊維材料領域で高い技術競争力を有し、この分野での今後の展望が期待されています。

図6-2に炭素繊維材料に関する江蘇恒神股份有限公司の中国特許出願公開状況を示します。
2020年までの同社の炭素繊維材料分野に関する中国特許出願公開は256件あり、有効特許が114件、審査中が69件、失効が73件(拒絶46件、出願公開後の取下げ16件、放棄8件、存続期間満了2件、特許料未納1件)となっています。

炭素繊維材料に関する江蘇恒神股份有限公司の中国特許出願公開状況
【図6-2 炭素繊維材料に関する江蘇恒神股份有限公司の中国特許出願公開状況】

 

(3)河南科信ケーブル有限公司

河南科信ケーブル有限公司(http://www.hnkosen.com/)は、2005年に設立され、架空線、電力ケーブル、電気設備ケーブル、通信ケーブル、通信設備の研究開発、生産、販売、輸出貿易を統合したハイテク企業です。

2008年、高圧および大型の架空導体製品、炭素繊維複合コアアルミ撚り線、パワー光ケーブルOPGW等の生産ラインを建設し、5万トンの生産能力を有します。

2009年8月、同社は炭素繊維複合コアアルミ撚り線の材料からプロセスまでの独立した研究開発に成功しました。2010年には、100,000トンの炭素繊維裸線製品の新しいプロジェクトを立ち上げました。

2008年以来、同社は電力用炭素繊維複合材料の全国・地方共同技術研究所、中原炭素繊維産業化推進サービスセンター、河南省炭素繊維複合材料技術研究所、河南省炭素繊維多容量線技術研究センターを設立しました。

同社が開発した炭素繊維光電複合ダブル容量ワイヤー製品は、中国のこの分野の遅れを取り戻しました。また、中国国家電網の1100KV UHVケーブルの研究開発と製造に参加し、全国ケーブル業界の裸線製品の総合力でトップ3になりました。

今日では、炭素繊維導体の生産能力は国内で第1位です。同時に、同社は中国国家電網の炭素繊維複合コア導体の2つの認定サプライヤーの1つでもあります。

図6-3に炭素繊維材料に関する河南科信ケーブル有限公司の中国特許出願公開状況を示します。
河南科信ケーブル有限公司の炭素繊維材料に関する公開された中国特許出願は216件あり、有効特許が110件、失効が106件(出願公開後の取下げ56件、放棄1件、特許料未納49件)となっています。また、PCT出願(WO)1件があります。

炭素繊維材料に関する河南科信ケーブル有限公司の中国特許出願公開状況
【図6-3 炭素繊維材料に関する河南科信ケーブル有限公司の中国特許出願公開状況】

 

なお、上記の特許出願人ランキングに入っていませんが、中国現地で良く知られている炭素繊維材料関連上場企業の「威海光威複合材料有限公司」、「中簡テクノロジー股份有限公司」、「浙江精功テクノロジー股份有限公司」、「吉林化学繊維股份有限公司」の企業概要と炭素繊維材料に関する情報も調べました。
 

(4)威海光威複合材料有限公司

威海光威複合材料有限公司(http://www.gwcfc.com/)は、1992年に設立され、炭素繊維とその複合材料の研究開発、生産、販売を専門とするハイテク企業であり、国内の炭素繊維業界で最初のA株上場企業です。

同社の開発はハイエンドの機器設計および製造技術に基づいており、炭素繊維から複合製品までの完全な産業チェーンを確立しています。威海光威は多品種、高度な生産技術、完全な産業チェーンを備えた国内の炭素繊維業界のリーディングカンパニーの1つといえます。

威海光威の主な製品には、GQ3522/GQ4522/QZ5526/QM4035などの炭素繊維および織物製品シリーズ、炭素繊維プリプレグ、ガラス繊維プリプレグ、炭素繊維複合製品があり、主に国防、軍事産業、民生用の分野で使用されています。

また、同社は炭素繊維および炭素繊維複合材料の生産設備および生産ラインの建設を製造する能力を持っています。

加えて、「ポリアクリロニトリル系炭素繊維」と「炭素繊維プリプレグ」という2つの国家規格の策定を主導し、国立炭素繊維準備工学研究所、国家企業技術センター、山東炭素繊維技術革新センターなど、多くの国と地方の研究開発プラットフォームがあります。

さらに、科学技術省の863プロジェクトや国家発展改革委員会の工業化実証プロジェクトなど、80項を超えるハイテクR&Dプロジェクトを実施しています。

このうち同社と内蒙古九原区、包頭市人民政府、九原工業団地管理委員会、Vestas Wind Technology (China)Co., Ltd.は共同で「万トン級炭素繊維工業団地プロジェクト参入協定」を締結し、総投資額は20億元を計画しています。
 

(5)中簡テクノロジー股份有限公司

中簡テクノロジー股份有限公司は、2008年4月に、中国科学院のT700炭素繊維技術チームと常州三毛紡績集団有限公司、常州東方化学有限公司およびその他の投資家によって共同で設立された、高性能炭素繊維と炭素繊維織物を生産するハイテク企業です。

同社は、創業以来、航空宇宙分野向けの炭素繊維製品の開発・製造に注力し、航空宇宙分野での使用が可能な炭素繊維製品ZT7シリーズを量産化しています。

また、科学技術省の国家ハイテク研究開発計画(863計画)における高性能炭素繊維の重点プロジェクトの実施に加え、年産50トンの高強度中型高性能炭素繊維プロジェクトを新設し、さらには「1000トン/年(12K)」または「300トン/年(3K)」の国内T700級炭素繊維拡張プロジェクト」も立ち上げました。
 

(6)浙江精功テクノロジー股份有限公司

浙江精功テクノロジー股份有限公司(http://jgtec.com.cn/)は、1968年に設立されました。
同社は特殊設備技術のリーダーであり、産業高度化の推進者として位置付けられ、主に太陽光発電特殊設備、炭素繊維複合設備、建築用省エネ特殊設備、繊維用特殊設備、知能ロボット設備等のハイテク新製品の研究開発、生産、販売及び技術サービスに従事しています。

千トン級の炭素繊維複合設備の生産規模と技術は中国では一流とされ、世界中にあらゆる種類の炭素繊維を供給する能力を持つ有名な企業です。

同社の主な製品は、炭素繊維の生産ラインと炭素繊維のマイクロ波黒鉛化の生産ラインです。

2020年6月、同社は吉林炭素谷炭素繊維生産ラインプロジェクトの入札を3億7000万元で落札し、2019 年の会社の収益の42.76%を占め、同社の炭素繊維の生産と販売の規模を大幅に拡大し、生産能力は6,500トン/年に達しました。
 

(7)吉林化学繊維股份有限公司

吉林化学繊維股份有限公司(http://www.jlhxjt.com/)は、1960年に設立された、主にビスコース繊維と無水酢酸の生産と研究開発を行う一流上場企業です。

製品には、ビスコース短繊維、ビスコースフィラメント、アクリル繊維、化学繊維パルプ、糸、紙製品の6つのシリーズで450種類以上が含まれ、中国の化学繊維業界でトップ10に入る企業の1つです。

2018年6月、吉林化学繊維と精功複合材料有限公司は産業改革の「戦略的協力協定」を締結し、炭素繊維事業を拡大し続け、現在、吉林化学繊維の年間炭素繊維生産能力は4,000トンに達し、風力発電ブレード、自動車軽量化、圧力容器、海洋工学などの産業分野での炭素繊維製品の応用をさらに加速しています。

2019年5月、吉林化学繊維は48Kラージトウ炭素繊維原糸の輸出注文120トンの初ロットの出荷を完了しました。国内の48Kラージトウ炭素繊維原糸が海外で承認されたのはそれが初めてです。
同年6月20日、吉林化学繊維と浙江精功集団が合弁で設立した吉林金公炭素繊維有限公司は、ラージトウ炭素繊維の炭化プロジェクトフェーズI No.2の2000トン生産ラインの稼働に成功しました。

2020年、同社の第1四半期の炭素繊維原糸の販売量は3,126万トンで、前年比63%の伸びを示しました。また、小繊維束の炭素繊維は表面装飾布分野でも成果をあげ、ラージトウ炭素繊維は前年比233%増の997トンの売上を達成しました。

 

以上になりますが、今回は、簡易的な検索により、中国における炭素繊維材料分野の特許出願状況について分析してみました。

自社の具体的な技術開発競争や市場競争に関しての現状の分析と、将来の展望の立案、研究のサポートとしては、より詳細な技術動向の調査を行うことが必要になってきます。

具体的な技術テーマについて中国特許の分析をしてみたい方は、お気軽に日本アイアールの特許調査部までお問い合わせ下さい。
 

8.参考:簡易的な検索式

No 検索式 件数
1 IPC=(C04B35/83 or D01F9/12 or D04H1/4242 or D06M101/40 or D06M14/36 or D21H13/50 or H01H1/027 or H01R39/24) 36,756
2  (IPC=(D01F9 or B29C70 or C08K7 or C08J5 or C08K3 or C04B35 or B32B5 or B32B27 or C08K9)) AND (TIABC=(碳纤维 or 炭纤维 or 碳素纤维 or 石墨纤维 or “carbon* fiber” or “carbon* fibre*” or “fibre* of carbon*” or “fiber* of carbon*” or “FIBROUS CARBON”)) 103,831
3  TIAB=(碳纤维 or 炭纤维 or 碳素纤维 or 石墨纤维 or “carbon* fiber” or “carbon* fibre*” or “fibre* of carbon*” or “fiber* of carbon*” or “FIBROUS CARBON” or “CFRP” or “CFRC”) 171,642
4  1 or 2 or 3 235,847
5 PD=[20010101 TO 20201231] 92,830,488
6 4 and 5 178,291
7 PD=[18000101 TO 20201231] 148,329,603
8 4 and 7 228,378

[検索日:2021/5/18]
 

(日本アイアール株式会社 特許調査部 J・X)

 


中国の技術情報調査、特許調査・分析サービスは日本アイアールまでお気軽にお問い合わせください。


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