電気航空機は実現可能?バイオジェット燃料の意義とは

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バイオジェット燃料の解説

1.電気航空機は実現可能なのか?

電気自動車は今後ますます普及していくと予想されます。
しかし、航空機に電池を搭載するのは相当な重量増となるのが避けられません。電気航空機は理論上可能でも現実的ではありません。

航空機からの二酸化炭素排出削減には、使用する燃料の改良が必要になります。

ここで注目され、期待されているのが「バイオジェット燃料」です。バイオジェット燃料は、石油系ジェット燃料に混合する形で使用されます。
 

2.バイオディーゼル燃料とバイオジェット燃料は同じタイプ?

バイオディーゼル燃料の原料は植物油脂です。
また、バイオジェット燃料の原料として代表的なものも植物油脂です。

バイオディーゼル燃料では植物油脂を脂肪酸のメチルエステルへと転換し、これを石油系ディーゼル燃料に少量混合する形で、一部のバスやトラック等の燃料として使用されています。

バイオジェット燃料でも植物油脂を脂肪酸のメチルエステルへと転換したものを使用するのでしょうか?
答えはNOです。

零下50-60度の成層圏も飛行する航空機では、極低温でもフィルター閉塞等の問題が生じないよう、ジェット燃料に厳しい規格が定められています。脂肪酸のメチルエステルが含まれていると、この規格を満足できません。石油系ジェット燃料に混合するバイオジェット燃料とするためには、水素化処理という工程により、植物油脂を完全な炭化水素にまで転換する必要があるのです。

電気航空機は可能か

3.バイオジェット燃料の原料は植物油脂だけ?

バイオジェット燃料の原料は下記の3つに大別されます。

  • (1)植物油脂
  • (2)微細藻類由来の油脂
  • (3)廃木材等のバイオマス

現状では植物油脂利用が先行していますが、(2)や(3)の研究開発が進行中です。
 

微細藻類由来の油脂

微細藻類由来の油脂利用が検討されているのは以下の理由によります。

  1. 微細藻類の方がパーム油等の植物よりも油脂生産性が高い
  2. 微細藻類には適切な種類藻類を選定することにより、得られる油脂の炭素鎖長をバイオジェット燃料に好適な長さに制御することが可能である。

 

廃木材等のバイオマス

廃木材等のバイオマスは、これを一旦ガス化した後にフィッシャートロプシュ合成反応により、パラフィン系炭化水素へと転換されます。GTL(Gas to Liquid)技術開発等で蓄積された技術の応用が可能な方法です。
 

4.日本におけるバイオジェット燃料分野の取り組み

NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)では、2017年度~2024年度の間、上記の(2)と(3)を原料とするプロジェクトが進められるということです。1)
2021年6月にはこのNEDOプロジェクトで生産された国産のバイオジェット燃料を使用して、JALとANAの定期航空便での試験飛行が実施されました。2)

現状ではまだ高コストのため実用化可能な段階にはないとみられますが、今後の進展が期待されます。

 
(日本アイアール株式会社 特許調査部 N・A)
 


《参考文献》
1) https://www.nedo.go.jp/activities/ZZJP_100127.html
2) https://www.meti.go.jp/press/2021/06/20210618003/20210618003.html

《関連コラム》
バイオ燃料とは?主な種類と原料、処理工程、課題と可能性などの要点まとめ解説」はこちら


 
 

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