AC-DCコンバータとは何か?仕組み・方式・回路構成・用途を基礎から解説

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AC-DCコンバータの基礎知識

私たちの身の回りには、家電製品、産業機器、通信機器、車載機器など、さまざまな電子機器が存在しています。これらの多くは内部で直流電源を必要としていますが、家庭や工場から供給される電力は交流(AC)です。そこで重要な役割を果たすのがAC-DCコンバータです。

本記事では、AC-DCコンバータとは何かという基本から、仕組み・原理・役割、代表的な基本回路構成、さらに100V入力から得られる14Vや24V出力の用途例まで含め、基礎知識を体系的に解説します。

1.AC-DCコンバータの概要

AC-DCコンバータは、電子機器の動作を支える基盤技術であり、電源回路の中核を担っています。

そもそも、ACは「Alternating Current」の略で交流DCは「Direct Current」の略で直流を意味します。
交流は、電圧の極性や電流の向きが周期的に変化する電気です。1秒間に波形が繰り返される回数を周波数といい、Hz(ヘルツ)で表します。一方、直流は、電圧の極性や電流の向きが時間の経過によって反転しない電気です。

日常生活で身近な例を挙げると、家庭用コンセントから供給される電気は交流で、乾電池やバッテリーから供給される電気は直流です。

[※関連記事:電源回路の基礎をやさしく解説|交流/直流/インバータ/コンバータ/レギュレータ

 

(1)AC-DCコンバータとは

AC-DCコンバータ」とは、交流(AC)を直流(DC)に変換する回路または装置の総称です。
日本の一般家庭では100Vの交流電源が供給されていますが、電子回路の多くは直流電源で動作します。
そのため、AC-DCコンバータは、商用電源で動作する多くの電子機器に内蔵されるほか、外付けのACアダプタとしても使用されています。
代表的な例として、ノートパソコンのACアダプタや、産業用制御盤内の電源ユニットなどが挙げられます。

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(2)AC-DCコンバータの役割

AC-DCコンバータの役割は単なる電圧変換にとどまりません。主な役割として、以下が挙げられます。

  1. 交流から直流への変換
  2. 必要な電圧値(14Vや24Vなど)への変換
  3. 出力電圧の安定化
  4. 過電圧・過電流・短絡などから機器を保護

特に産業用途では、安定した直流電源を供給することが装置全体の信頼性を左右します。

 

2.AC-DCコンバータの仕組み

AC-DCコンバータは、複数の回路ブロックの組み合わせによって構成されています。それぞれが重要な役割を果たし、最終的に安定した直流出力を実現します。

 

(1)全体構成の流れ

AC-DCコンバータの仕組みを理解するためには、電力がどのような段階を経て交流から直流へ変換されていくのか、その全体の流れを把握することが重要です。
AC-DCコンバータは単一の回路で構成されているわけではなく、複数の機能ブロックが順序立てて配置され、それぞれが異なる役割を担っています。ここでは、現在主流となっているスイッチング方式を例に説明します。

基本的な構成の流れは、以下のようになります。

  1. 交流入力(100V)の受電
  2. 入力フィルタ回路によるノイズ抑制
  3. 整流回路による直流化
  4. 平滑回路による電圧変動の低減
  5. 電圧変換・制御回路による所定電圧への調整
  6. 出力側での最終的な平滑・安定化

まず、AC-DCコンバータには商用電源である100Vの交流電圧が入力されます。
AC100Vが入力される部分には、ヒューズやサージ保護素子、突入電流を抑える回路などが設けられます。また、入力フィルタ回路によって、電源ラインから侵入するノイズや、コンバータ内部から電源ラインへ流出する高周波ノイズを抑えます。

次に、整流回路によって交流電圧が直流電圧へ変換されます。ただし、この時点で得られる直流には、「脈動」と呼ばれる周期的な電圧変動が残っており、電子機器がそのまま使用できる状態ではありません。そのため、続く平滑回路においてコンデンサなどを用い、脈動を抑えて、よりなめらかな直流に近づけます。

その後、電圧変換・制御回路によって、目的に応じた電圧値へ調整が行われます。例えば、100Vの交流入力から14Vや24Vといった直流電圧を生成する場合、この工程が非常に重要です。スイッチング素子やトランス、制御ICなどが連携し、効率よく電圧を変換します。

最後に、出力側でもう一度平滑や安定化が行われ、負荷変動があっても安定した直流電圧が供給されます。このように、AC-DCコンバータは各工程が連続的に機能することで、電子機器を安定して動作させるための直流電源を実現しています。

 

(2)整流回路の仕組み

整流回路は、交流を一方向に流れる電流へ変換する部分です。
一般的にはダイオードを使用したブリッジ整流回路が用いられます。
交流の正負両半周期を利用して直流に変換できるため、効率的な電力利用が可能です。
整流後の電圧は、脈動を含んだ波形となります。

 

(3)平滑回路の役割

整流後の脈動を抑えるために用いられるのが平滑回路です。
主にコンデンサが使用され、電圧の谷間を補うことで、より直流に近い電圧波形を作り出します。
この工程により、電子回路が安定して動作できる電源環境が整います。

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3.AC-DCコンバータの原理

AC-DCコンバータの原理は、電気の基本法則と電力変換技術(スイッチング技術など)に基づいています。
ここでは、線形方式とスイッチング方式の違いを含めて解説します。

 

(1)線形方式の原理

線形方式のAC-DCコンバータは、トランスで交流電圧を下げた後、整流・平滑して直流電圧を得る方式です。さらに安定した出力電圧が必要な場合は、平滑回路の後段にリニアレギュレータなどの安定化回路を追加します。構造がシンプルで、スイッチングノイズが少ないという利点があります。

一方で、商用周波数用のトランスを使用するため、装置が大きく重くなりやすいという欠点があります。
また、リニアレギュレータを追加した場合は、レギュレータの入力電圧と出力電圧の差が大きいほど発熱が増え、効率が低下します。

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線形方式のAC-DCコンバータの基本構成
【図1 線形方式のAC-DCコンバータの基本構成】

 

図1は、線形方式のAC-DCコンバータの基本構成を簡単に示した図です。図1の回路は、主に電圧変換部、整流部、平滑部で構成されています。
なお、図1には安定化回路を記載していません。出力電圧を一定に保つ必要がある場合は、平滑部の後段にレギュレータなどの安定化回路を追加します。

  • 電圧変換部: AC100Vを、必要なAC電圧に変換します。部品としては、トランスが用いられます。
  • 整流部: AC(交流電圧)→DC(直流電圧)に変換します。整流回路には、ダイオードブリッジが用いられることが多いです。
  • 平滑部: 整流直後の電圧には脈動が含まれています。コンデンサを用いてこの脈動を抑え、よりなめらかな直流に近づけます。ただし、図1の基本構成だけでは、入力電圧や接続する負荷の変化によって出力電圧が変動する場合があります。そのため、安定した出力電圧が必要な場合は、平滑部の後段に安定化回路を追加します。

 

(2)スイッチング方式の原理

現在主流となっているのがスイッチング方式です。スイッチング素子を高速でON/OFFしながらエネルギーを制御することで、高効率化と小型化を実現しています。

スイッチング方式は、図1の線形方式とは原理的に異なり、図2のような構成です。
AC100Vを整流・平滑したDCを、スイッチング回路で高速にON/OFFして高周波の電圧に変換し、トランスへ加えます。その後、二次側で再び整流・平滑して直流を得ます(図3参照)。
出力電圧の変動を検出し、スイッチング動作を調整するフィードバック制御によって、出力電圧を一定に保ちます。

この方式では、50Hz/60Hz用の大型トランスではなく、数十kHz以上で動作する高周波用トランスを使用できるため、電源装置を小型・軽量化しやすく、一般に変換効率も高くなります。

 

スイッチング方式の構成
【図2 スイッチング方式の構成】

 

スイッチング方式の電圧と電流
【図3 スイッチング方式の電圧と電流】

 

なお、スイッチング方式では、スイッチング素子(MOSFETなど)を数十kHz~数百kHzの高い周波数でON/OFFするため、「スイッチングノイズ」が発生します。例えば、AMラジオなどの機器では、このノイズの影響を受ける場合があるため注意が必要です。

 

(3)制御回路の重要性

出力電圧を14Vや24Vなど所定の値に保つためには、フィードバック制御が不可欠です。
出力電圧を監視し、スイッチング動作を調整することで、負荷変動があっても安定した電圧が維持されます。

 

4.AC-DCコンバータの基本回路構成

AC-DCコンバータを理解するには、回路全体を機能ごとのブロックに分けて考えるとわかりやすくなります。
ここでは、一般的な絶縁型スイッチング方式の基本回路構成を説明します。

 

(1)基本的な回路ブロック

主な回路ブロックは、以下のとおりです。

  • ① 入力フィルタ回路
  • ② 整流回路
  • ③ 平滑回路
  • ④ スイッチング回路
  • ⑤ 出力整流・平滑回路
  • ⑥ フィードバック制御回路

それぞれのブロックを分けて理解すると、回路全体の動作が把握しやすくなります。

 

① 入力フィルタ回路

入力フィルタ回路は、図4に示すXコンデンサやYコンデンサなどで構成されます。

Xコンデンサは、電源ライン間に接続される安全規格対応コンデンサです。高周波ノイズをバイパスすることで、主にノーマルモードノイズを低減します。「相間コンデンサ」とも呼ばれます。

Yコンデンサは、電源ラインと接地側との間などに接続される安全規格対応コンデンサです。主に、電源ラインに同じ方向で現れるコモンモードノイズを接地側などへバイパスし、ノイズを低減するために使用されます。効果が得られる周波数帯は、コンデンサの容量や回路構成、配線などによって異なります。「ラインバイパスコンデンサ」とも呼ばれます。

 

入力フィルタ回路
【図4 入力フィルタ回路】

 

② 整流回路

整流回路は、図1にあるように、一般的にはダイオードを使用したブリッジ整流回路が用いられます。
交流の正負両半周期を利用して直流に変換できるため、効率的な電力利用が可能です。

 

③ 平滑回路

平滑回路は、図1の平滑部にあるようにコンデンサが主な部品です。
整流後の脈動を抑えるために用いられます。

 

④ スイッチング回路

スイッチング回路には、スイッチング電源用のパワーMOSFETが使用されることが主流になっています。

[※関連記事:パワーMOSFETの動作原理

 

⑤ 出力整流・平滑回路

出力整流・平滑回路は、一般的には図5のような回路となります。ダイオードとコンデンサの組み合わせが基本です。これらにチョークコイルが追加されたり、安定化のための回路が追加されたりします。

 

出力整流・平滑回路
【図5 出力整流・平滑回路】

 

⑥ フィードバック制御回路

フィードバック制御回路は、出力電圧を安定化する制御回路ですが、トランジスタやオペアンプなどの個別素子を使用して構成することも可能です。
しかしながら最近では、正確な安定化制御はもちろん、さまざまな保護機能も提供してくれることから、AC-DC変換用ICを使用することが多くなってきています。
特にAC-DC電源を回路基板上に載せる場合は、AC-DCコンバータ用ICを中心に設計をすることが多いです。

 

(2)AC100Vを扱う際の注意点

100V交流を扱う回路では、安全性と絶縁が非常に重要です。
絶縁型のAC-DCコンバータでは、トランスによって電力を伝達しながら、一次側と二次側を電気的に絶縁します。また、出力電圧の情報を二次側から一次側へ伝える場合は、フォトカプラなどを用いて、絶縁を保ったままフィードバック信号を伝達します。
回路図上でも、一次側と二次側は明確に区別して描かれるのが一般的です。

なお、AC100Vを整流・平滑すると、一次側には約140Vの直流電圧が生じます。また、電源を切った直後も内部部品が高電圧になっている場合があります。
感電や発火などの危険があるため、回路の設計・製作・測定には、十分な知識と安全対策が必要です。

 

5.代表的な出力電圧と用途

AC-DCコンバータは用途に応じてさまざまな出力電圧が設定されます。ここでは14Vと24Vを例に、その使われ方を解説します。

 

(1)14V出力の用途

14V前後の直流出力は、12V系バッテリーの充電器や、12V系の車載機器を商用電源から動作させるための電源などに使用されます。
バッテリーを充電する場合は、対象となるバッテリーの種類や仕様に応じた電圧・電流制御が必要です。

 

(2)24V出力の用途

24Vは産業機器や制御機器で広く使われている標準電圧です。
PLC、センサ、リレーなどの駆動電源として利用され、安定性と信頼性が強く求められます。
100V交流から24V直流を生成するAC-DCコンバータは、工場設備において欠かせない存在です。

 

6.AC-DCコンバータの選定ポイント

最後に、AC-DCコンバータを選定する際の基本的なポイントを整理します。

 

(1)入力・出力仕様の確認

入力電圧が100Vに対応しているか、出力電圧が14Vや24Vなど目的に合っているかを必ず確認します。
また、必要な出力電流・電力容量にも注意が必要です。

 

(2)安全規格と信頼性

AC-DCコンバータは商用電源に接続する電源装置であるため、安全規格やEMC規格への適合が重要です。
用途に応じて、産業機器用、情報機器用、医療機器用などの規格に対応した製品を選定します。
また、過電圧保護、過電流保護、短絡保護、過熱保護などの保護機能についても確認します。

[※関連記事:電気製品の信頼性・安全性に関する基礎知識

 

7.まとめ

AC-DCコンバータは、家電製品から産業機器まで、さまざまな電子機器を支える重要な電源装置です。交流を直流へ変換するだけでなく、必要な電圧への調整、出力電圧の安定化、機器の保護など、複数の役割を担っています。

AC-DCコンバータとは何かを理解し、整流・平滑・電圧変換・フィードバック制御といった基本的な仕組みを押さえることで、回路図の理解や電源装置の選定がしやすくなります。また、実際に選定する際は、入力・出力仕様だけでなく、安全規格、保護機能、使用環境なども確認することが重要です。

本記事が、AC-DCコンバータに関する基礎知識を身につけ、電源回路への理解を深めるための一助となれば幸いです。

 

(日本アイアール株式会社 特許調査部 E・N)

 

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