【早わかり電気回路】充電回路の基礎知識と用語、主な充電方法の種類を解説
二次電池に電気を蓄える、すなわち二次電池に充電する回路を「充電回路」と呼びます。
現在、我々は、スマートフォンの充電回路などで充電回路を使用しています。
今回は、一般的な充電回路の基礎知識を確認してみましょう。
1.充電の基礎
「充電」とは、二次電池においては、放電して電気エネルギーを使った電池に、外部の電源から電流を流して再び電気エネルギーを蓄えることを言います。
水が水圧により高い所から低い所に流れるように、電気も電圧の高い所から低い所へ流れるので、二次電池の電圧よりも少し高い電圧にすることで充電できます。
しかし、電圧が高ければ良いというものではなく、電圧が高すぎても、電池側はすべてを吸収できません。溢れた電気は熱になってしまいます。
充電方式に関する用語
普段、我々は、昼間スマートフォンを使用したら、夜に家で寝ている間に充電する、というようなことをしています。ある程度放電したら充電するということを繰り返すことを「サイクル充電方式」といいます。
また、スマートフォンを充電器につなぐとフル充電まで一気に進む、というのではなく、80%~90%まで進んだら、微弱な電流に切り替わって充電する、という場合があります。これを「トリクル充電方式」といいます。二次電池は、一次電池より自己放電しやすいので、トリクル充電方式は、その放電分を補うという働きもあります。
トリクル充電方式と似た方式で、「フロート充電方式」があります。これは、自動車の蓄電池(バッテリー)などに採用されています。蓄電池と負荷を並列に接続し、蓄電池に⼀定電圧を加えて充電状態とする方式です。満充電になると電流をバイパス回路に流して、蓄電池に負荷をかけないようにしています。
電池の容量と単位
また、電池には、容量があります。容量は電気容量とも呼ばれ、充放電により反応した電極材料の量を示したもので、一般には放電容量を示します。二次電池では、状況により充電容量を指すこともあります。
容量の単位は「Ah」で表示されます。「アンペア・アワー」と読みます。
「A(アンペア)」は電流を表す単位ですが、スマホなどに使われるバッテリーは容量が小さいため、1000分の1の単位「m(ミリ)」が付いて「mA(ミリアンペア)」と表すのが一般的です。
「h(アワー)」は単位時間で、この場合は1時間を意味します。
つまり、「mAh」は「1時間に流せる電流」を表します。
たとえば100mAhは、100mAの電流を1時間流せる容量であることを示しています。
2.充電回路の主な種類・分類
実際の充電回路は、ただ電圧をかけるだけではなく、電圧や電流を制御しながら充電していきます。
以下、様々な充電回路の分類について見ていきましょう。
(1)定電圧充電法
「定電圧充電法」は、二次電池に⼀定の電圧で充電し続ける⽅法です。
充電初期には大きな電流が流れ、充電電流は徐々に低下します。
電池の温度上昇のし過ぎを防ぐため充電初期は、電圧を低くして、段階的に電圧を上げる方式もあります。
図1は、定電圧充電法の電圧と電流の様子を示した図です。
【図1 定電圧充電法における電圧と電流のイメージ】
(2)定電流充電法
「定電流充電法」は、電流を一定に保って充電する方法です。
充電が進むにつれて端子電圧が上昇していきます。
小さな定電流で過充電を防ぎつつ充電したり、段階的に電流を変化させる方法もあります。
ニッケル水素電池の充電に採用されてきました。
図2は、定電流充電法の電圧と電流の様子を示した図です。
【図2 定電流充電法における電圧と電流のイメージ】
(3)定電流定電圧充電法
「定電流定電圧充電法」は、定電圧充電と定電流充電の短所を改善した充電方法です。
充電初期は定電流で急速充電し、その後、定電圧充電に切り替えて充電します。
過充電を防ぐことができ、リチウムイオン電池の充電に採用されています。
図3は、定電流定電圧充電法の電圧と電流の様子を示した図です。
【図3 定電流定電圧充電法における電圧と電流のイメージ】
(4)定電力充電法
「定電力充電法」は、充電初期は電圧が低いので電流を大きくし、電圧が上昇すると電流を下げる充電方法で、電力を一定にした充電方法です。
(5)パルス充電法
電流をオン・オフする周期的なパルス電流で充電します。
電流オフの間に電解液が拡散されて均一化し、またサルフェーションの生成を防ぐので、充電効率が高くなるという長所があります。
鉛蓄電池を長く使用していると、「サルフェーション」と呼ばれる、電解液の硫酸由来の固体が電極にこびりつくことによる劣化が起こります。
劣化した鉛電池に対してパルス充電を行うと、この固体をうまく取り除ける場合があり、鉛蓄電池の性能回復や長寿命化としてもパルス充電が行われています。
充電制御IC
ということで、今回は様々な充電方法について説明してきました。
実際には、色々な方法が組み合わされた充電制御ICが用いられ、電圧・電流・温度などを検出しながら、きめ細かく制御されています。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 E・N)