ナフサから何ができる?エチレン・プロピレン・BTXなどから生まれる誘導品を解説

ナフサについて解説している当連載の第2回「ナフサ分解のプロセスがわかる!」では、ナフサを分解して得られるエチレン、プロピレン、C4留分、BTXなどの基礎製品について解説しました。
これらの基礎製品は、そのまま利用されるだけでなく、さらに化学反応や重合などを経て、さまざまな誘導品へと展開されます。ポリエチレン、ポリプロピレン、PET、ナイロン、合成ゴムなど、私たちの身近な製品につながる材料の多くも、こうした流れの中で生産されています。
今回は、エチレン、プロピレン、C4留分、BTXを原料として、どのような誘導品が生産されるのかを、代表的な反応経路とともに解説します。
1.誘導品の生産
ナフサからの基礎製品を原料にして多種類の誘導品が生産されています。その大部分はポリマー(重合体)であり、さらに加工されて様々な商品となります。図1はこの状況を表したものです。

【図1 ナフサ由来のポリマー生産の概況1)】
エチレンであればそのまま重合して得られるポリエチレン、プロピレンならばポリプロピレンの生産が主体です。
しかし基礎製品を別のモノマーに化学的に変換してからポリマーを生産するルートがあります。図1ではこの別のモノマーを「誘導されるモノマー」と表記しています。
以下、基礎製品ごとに、反応式を用いて誘導品の生産について解説します。
2.エチレンからの誘導品
エチレンの用途のほぼ50%はポリエチレンの製造です2)。
ポリエチレン以外の用途では、まずポリ塩化ビニルというよく知られたポリマーが挙げられます。配管等に使用されています。このポリマーは、式1に示すように、エチレンを原料にしてジクロロエタンを経由してモノマーである塩化ビニルを製造するルートで生産されています。

式2に示すように、エチレンを酸化してエチレンオキサイドとした後に水和するとエチレングリコールが得られます。これがポリエチレンテレフタレート(PET)生産の原料となります。PETはボトル材料としておなじみのポリマーです。

式3に示すようにエチレンはポリスチレンの原料でもあります。ベンゼンと反応させて得られるエチルベンゼンを経由してモノマーのスチレンが得られます。ポリスチレンは発泡スチレン等の形で、私たちの生活を支えています。

3.プロピレンからの誘導品
プロピレンの用途の約60%はポリプロピレンの製造です2)。
ポリプロピレン以外の用途では、まずポリアクリロニトリル(PAN)が挙げられます。アクリル繊維として、あるいは炭素繊維の原料として利用されています。PANは、式4に示すように、プロピレンをアンモニア/酸素と反応させることにより、モノマーであるアクリロニトリルを製造するルートで生産されています。

式5に示すように、プロピレンを酸化してアクロレインとし、さらに酸化することでアクリル酸が得られ、これを重合するとポリアクリル酸となります。

ポリアクリル酸系のNa塩は、架橋構造を持たせることで、おむつ向け等の高吸水性樹脂として幅広い分野で利用されています。
4.C4留分からの誘導品
C4留分中のブタジエンは、ポリブタジエンゴムの原料であることに加え、スチレンとの共重合ゴムであるSBRやアクリロニトリルとの共重合ゴムであるNBRの原料でもあります。タイヤをはじめとするゴム製品生産に不可欠の成分です。
5.BTXからの誘導品
ベンゼンは上述のポリスチレンの原料ですが、式6に示すように、ナイロン-6の原料でもあります。

ベンゼンを水素化して得られるシクロヘキサンを酸化してシクロヘキサノンに転換し、さらにオキシムを経由してε-カプロラクタムとします。このε-カプロラクタムの開環重合によってナイロン-6が得られます。ナイロン-6は丈夫な繊維として知られていますが、強靭なエンジニアリングプラスチックであり、成形体としても広く利用されています。
[※関連記事:開環重合とは?反応機構や特徴などをわかりやすく解説]
パラキシレンは、式7に示す通り、酸化によりテレフタル酸に転換され、PETの原料として利用されています。

6.おわりに
今回は、ナフサ分解によって得られるエチレン、プロピレン、C4留分、BTXなどの基礎製品から、どのような誘導品が生産されるのかを見てきました。
これらの基礎製品は、そのまま利用されるだけでなく、さまざまな化学反応や重合を経て、ポリエチレン、ポリプロピレン、PET、ナイロン、合成ゴムなど、多様な材料へと展開されます。こうした材料は、包装材、繊維、自動車部品、日用品など幅広い用途に使われており、ナフサが私たちの生活や産業を支える重要な原料であることが分かります。
一方で、日本ではナフサの多くを海外からの輸入に依存しています。そのため、原油価格や為替、国際情勢、物流などの影響を受けやすいという側面もあります。
次回は、これまでの内容を踏まえながら、ナフサを巡って日本が抱える課題や脆弱性と、その解決に向けた考え方について解説します。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 N・A)
《引用文献、参考文献》
- 1) 下記情報に基づいて作成
・石油学会編, 新版 石油化学プロセス, 講談社(2018)
・石油化学工業協会, 石油化学ハンドブック 改訂8版(2025) - 2) 石油化学工業協会, 石油化学工業の現状 2025年


































