《初心者向け》ナフサとは何か?原油との関係・用途・輸入事情を要点解説

中東情勢の緊迫化などを背景に、原油や石油製品の安定供給への懸念が高まることがあります。
こうした状況になると、プラスチック製品をはじめとする生活物資や建設物資・産業素材への影響もニュースで取り上げられます。こうしたニュースの中で、「ナフサ」という耳慣れない言葉を目にしたり、耳にしたりしたことがある方も多いのではないでしょうか。
今回から、この「ナフサ」について連載で解説します。
第1回目のテーマは「ナフサとは何か」です。ナフサは原油とどのような関係にあり、私たちの生活とどのように結びついているのでしょうか。
1.ナフサとは
現在の私たちの生活は依然として石油に大きく依存しています。
原油から得られる石油留分には、表1に示すように、ガソリンや軽油等の燃料として利用されるものと、プラスチック等の原料として利用されるものがあります。後者の代表的なものが「ナフサ(naphtha)」です。
【表1 原油から得られる石油留分と一般消費者への影響1)2)】
| 原油からの石油留分 | 一般消費者の視点 | |||
| 最終商品 | 原油からの変化 | 中間業界 | 原油高騰等の影響 | |
| 1) 燃料 | ガソリン、軽油等 | 小さい | ほぼ無 | 直接: 早期に表れる |
| 2) 化学原料:ナフサ | プラスチック製品、ゴム製品等 | 大きい | 数段階の存在 | 間接: 時間的に遅れる |
燃料留分は最終的にはガソリンや軽油等の商品になります。私たち一般消費者はガソリンスタンド等で直接購入します。
これらは原油から精製・改質等の工程を経て製品化されますが、ナフサ由来の化学製品に比べると、一般消費者に届くまでの中間段階は少なく、原油価格高騰等の影響が早期に表れる傾向にあります。
これに対して、化学原料であるナフサと私たちの間に直接的な接点はありません。ナフサは日常用語ではありません。知らない方がおられても当然です。
ナフサはプラスチック製品やゴム製品という、原油から大きく変化した最終商品に変換されてから私たちに届きます。即ち、ナフサを分解してエチレン等のモノマーに転換する段階、重合によりプラスチック等に転化する段階、プラスチック等を加工する段階、プラスチック等と他材料とを複合化する段階を経て私たちに届きます。途中に数段階の中間工程が存在します。
従って、原油価格高騰等の一般消費者への影響は間接的であり、時間的に遅れて表れる傾向にあります。
2.原油からのナフサ生産
日本は原油のほぼ全量を中東をはじめとする産油国から輸入しています。
この原油は多種類の炭化水素の混合物です。また硫黄等の不純物も含みます。
石油会社の製油所では、まず原油を蒸留して各留分に分け、その後、必要に応じて分解や水素化精製、改質等の工程を経て製品化します。
図1はその概略のイメージ図です1)。

【図1 原油からの石油製品生産のイメージ図】
各留分は基本的に沸点により分けられます。炭化水素は一般に炭素数が大きいほど沸点が高くなる傾向がありますので、おおむね炭素数の違いに対応していると考えていただいても結構です。
ここで覚えていただきたいのは、ナフサがガソリンとほぼ同等の沸点(炭素数)範囲にあるということです。それぞれの市場の需給状況により、ナフサ留分をガソリンの基材として利用するか、石油化学原料として利用するかという選択肢があります。
なお「軽質ナフサ」や「重質ナフサ」という用語を耳にした方もおられるかもしれません。これはナフサを更に軽質分と重質分に分けた場合の名称です。両者の区分を表2に示します。
ナフサは、これらに分留する場合と、分留せずホールレンジナフサ(フルレンジナフサ)として利用される場合の両ケースがあります。どれを選択するかは原料市況等により変動しています。
【表2 ナフサの区分3)】
| ナフサ区分 | 沸点, ℃ | 炭素数 | 代表的成分 | 日本での使用比率 |
| 軽質ナフサ | 30-140 | 5-6 | ペンタン、ヘキサン | 35〜40% |
| 重質ナフサ | 40-230 | 7-11 | トルエン、メチルシクロヘキサン | 20〜25% |
| ホールレンジナフサ | 30-230 | 5-11 | — | 35〜40% |
3.ナフサの輸入
日本の石油化学業界が必要とするナフサは、国内の製油所で生産されるナフサ(国産ナフサ)だけでは賄えません。このため海外の製油所で生産されたナフサが輸入されています。
図2に示すように、2000年以降その量は常に国産ナフサを上回っています。

【図2 日本国内のナフサ供給4)】
ガソリンとナフサは、既に述べた通り、沸点範囲が大きく重なっています。
日本では国産ガソリンへの配分比率が高いために、輸入ナフサ量が多くなっている面があります。
2024年の輸入実績では、ナフサ輸入量の73.6%を中東産油国からの輸入が占めており、原油と同様に中東依存度が高い状況です。
一方で韓国等のアジアの非産油諸国からも輸入されています4)。
以上の説明で、ナフサに関する基本事項はお分かりいただけたかと存じます。
次回は、ナフサを熱分解してエチレン等を得るプロセスについて解説します。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 N・A)
《引用文献、参考文献》
- 1) 石油学会編, 新版 石油精製プロセス, 講談社(2014)
- 2) 石油学会編, 新版 石油化学プロセス, 講談社(2018)
- 3) ENEOS(株), 石油便覧, ナフサ
- 4) 経済産業省 資源エネルギー庁「石油統計」から作成


































