化学

ナフサ分解のプロセスがわかる!エチレンプラントの仕組みと生成物を解説

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ナフサ分解

ナフサに関する連載の第1回目は「ナフサとは何か?」をテーマに、ナフサと原油との関係や用途、軽質ナフサ・重質ナフサなどの区分、日本における輸入事情について解説しました。

ナフサは、プラスチックや合成ゴムなど、さまざまな化学製品の原料となる重要な石油留分です。
しかし、ナフサがそのままプラスチックなどになるわけではありません。
まず「ナフサ分解」と呼ばれる工程によって、エチレンやプロピレンなどの基礎化学品へと転換されます。

今回は、このナフサ分解とはどのようなプロセスなのか、分解炉・急冷・圧縮・乾燥・深冷分離などの主要工程を順に見ながら、ナフサからどのような製品が得られるのか、さらにナフサ分解プラントを起点として形成される石油化学コンビナートについても解説します。

1.ナフサ分解とは

「ナフサ分解」とは、原料であるナフサを分解してエチレンやプロピレンをはじめとする化学製品を製造するプロセスを指します。

図1はそのプラントの模式図です。日本ではナフサ分解プラントを「エチレンプラント」と呼ぶこともあります。これは、ナフサ分解によって得られる主要製品の一つがエチレンであるためです。

 

ナフサ分解プラントの模式図
【図1 ナフサ分解プラントの模式図1)】

 

図1はあくまでも模式図であり実際のプロセスフローはもっと複雑ですが、原理は単純です。
ナフサを水蒸気と共に分解炉に供給して熱分解します。
なお「熱分解」というのは、触媒を用いずに熱のみで分解することを意味しています。

 

ナフサ分解のプロセス

ナフサ分解では、ナフサを高温で熱分解した後、急冷・圧縮・乾燥・分離などの工程を経て、エチレンやプロピレンなどの製品を取り出します。
以下では、ナフサ分解の主要な工程について順に解説します。

 

① 分解炉

プロセスの核心的な部分です。ナフサの熱分解で避けなければならないのは、過度の分解や、生成物がさらに反応する二次反応が進行することです。このため、約850℃の高温で約0.1秒の短時間で分解されます。炉中の管状部を原料が短時間で通過する構造になっています。水蒸気の添加には下記の効果があります。

ⅰ) ナフサを希釈して分圧を低下させ、製品収率を向上させる

水蒸気を添加してナフサを希釈し、炭化水素の分圧を低下させることで、エチレンやプロピレン等への選択性を高めることができます。また、炭化水素の分圧を下げることで、生成物がさらに反応する二次反応を抑え、製品収率の低下を防ぐ効果もあります。

ⅱ) 二次反応およびコークス生成の抑制

熱分解炉の内部は約850℃の高温になるため、炭化水素が過度に分解(過分解)されると、最終的に炭素質の析出物であるコークスが炉管内などに付着します。水蒸気を添加して炭化水素の分圧を下げることなどにより、コークスの生成・付着を抑える効果があります。

 

② 急冷

熱分解終了後は反応を素早く停止させる必要があります。そのための工程がこの急冷工程です。図1の②では水を噴霧するイメージで示しましたが、通常は熱交換器を用いて急冷されます。

 

③ 圧縮・酸性ガス除去

次は圧縮・酸性ガス除去工程です。皆さんの中にはここで圧縮が必要になる理由がよく分からない方もおられるかもしれません。圧縮は、後段の酸性ガス除去、乾燥、深冷分離などを効率よく行うために必要です。ガスを圧縮して圧力を高めることで、後段での冷却・分離を行いやすくします。

酸性ガス除去では、CO₂やH₂Sを取り除き、後段の深冷分離工程での支障や設備の腐食、製品への不純物混入などを防ぎます。通常はNaOH洗浄塔などが使用されます。

 

④ 乾燥

③圧縮・酸性ガス除去工程を経た留分(分解ガス)には、添加した水蒸気に由来する水分がppmレベルでまだ残っています。そのままでは⑤深冷分離工程でこの水分が凍結し配管を閉塞させる危険性がありますので、乾燥が必要になります。乾燥にはモレキュラーシーブ(分子ふるい)等が使用されます。

 

⑤ 深冷分離

分解ガスを−100℃前後まで冷却する深冷工程などによって、水素やメタンなどの軽質成分を分離します。その後、複数の蒸留・精製工程を経て、エチレンやプロピレン等の製品に分離します。

 

2.ナフサ分解からの製品

次にナフサ分解からの製品について解説します。

ナフサ分解から 1)エチレン、2)プロピレン、3)C4留分、4)分解ガソリン などが主要製品として得られます。

C4留分にはブテン類やブタジエンが含まれます。分解ガソリンには芳香族炭化水素が多く含まれており、BTXの抽出原料となります。

「BTX」とは、Benzene(ベンゼン)、Toluene(トルエン)、Xylene(キシレン)の頭文字を取った総称で、いずれも芳香族炭化水素です。石油業界と石油化学業界でよく用いられる用語です。主要製品以外に水素やC5以上の留分も生産されます。ナフサ分解から得られる各種製品や副生物は、化学品の原料やプラント運転用の燃料などとして有効に活用されています。

第1回の記事「ナフサとは何か?」で述べた通り、ナフサは軽質ナフサ、重質ナフサ、ホールレンジナフサに区分されます。
表1は、各ナフサ区分におけるナフサ分解の主要生成物収率の一例を重量%で示したものです。
実際の収率は、原料組成や分解条件などによって変動します。

 

【表1 各ナフサ区分でのナフサ分解の主要生成物, 重量%】

ナフサ区分 エチレン プロピレン C4留分 BTX分
軽質ナフサ 32-35 15-18 9-11 2-4
重質ナフサ 25-26 13-15 8-10 12-15
ホールレンジナフサ 28-31 14-16 9-10 7-10

軽質ナフサではエチレン収率が増加し、重質ナフサではBTX分の収率が高くなる傾向にあることが分かります。

 

3.ナフサ分解プラントを起点とする石油化学コンビナート

ナフサ分解プラントの周辺には、このプラントからの製品を用いて誘導体を製造するプラントが隣接して、いわゆる石油化学コンビナートを形成しています。図2はこの状況を示したものです。

 

ナフサ分解プラントを起点とする石油化学コンビナート
【図2 ナフサ分解プラントを起点とする石油化学コンビナート2)】

 

ナフサ分解の製品はタンクローリーや船舶で出荷される部分もありますが、大部分の製品は誘導体製造プラント(他社プラントを含む)にパイプラインを通じて直接届けられます。この一体化した運営により全体としての生産効率を高めるのがコンビナートの目的であり、またその強みでもあります。

エチレンからはポリエチレンの他、エチレンオキサイド/エチレングリコール、塩化ビニル等の誘導体が生産されます。
プロピレンからはポリプロピレンの他、アクリロニトリル、プロピレンオキサイド等が生産されます。
C4留分からはブタジエンやイソブチレン等の有用化学品が分離され、合成ゴム等の原料として利用されます。

ナフサからのこれら二次生産品については、次回の連載で詳しく解説いたします。

 

(日本アイアール株式会社 特許調査部 N・A)

 


《引用文献、参考文献》

  • 1) 下記情報に基づいて作成
    ・石油学会編, 新版 石油化学プロセス, 講談社(2018)
    ・化学工学会 website, 化学プロセス集成 エチレンプラント
    https://www0.scej.org/education/ethylene.html
  • 2) 石油化学工業協会, 石油化学ハンドブック 改訂8版(2025)を参考に作成

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