3分でわかる テトラヒドロフラン(THF)の基礎知識|特徴・溶解力・用途を解説

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テトラヒドロフラン(THF)

テトラヒドロフラン(THF)は、幅広い物質に対して高い溶解力を示すことから、研究や工業のさまざまな場面で利用されている化合物です。
本記事では、THFの高い溶解力とその理由を、極性や溶解度パラメータの観点からわかりやすく解説するとともに、溶媒以外の主な用途や今後の展望についても紹介します。

1.テトラヒドロフランとは

テトラヒドロフランは、THFと略称される化合物です。
名称は、表1に示す通り、5員環の不飽和化合物フランに4個の水素を付加した構造を持つことに由来します。

 

【表1 テトラヒドロフラン】
テトラヒドロフラン

 

しかし、工業的にはフランの水素化以外の製法も用いられています。代表的な製法を式1に示します。

テトラヒドロフラン

 

2.テトラヒドロフランの高い溶解力

研究の場でも作業の場でもテトラヒドロフラン(THF)は幅広い物質をよく溶かす便利な溶剤として役立っています。
本記事では溶質としてポリマーと金属含有化合物を挙げて、この点を確認してみましょう。

 

(1)ポリマー

ポリマーの代表例として、非極性ポリマーのポリスチレン、極性ポリマーのポリ塩化ビニルを選んで考察してみましょう。

ポリスチレンに関しては、トルエンやメチルエチルケトンをはじめTHF以外でも、溶解性が高い溶剤は存在します。
しかし、ポリスチレンに対してもポリ塩化ビニルに対しても高い溶解性を示す点で、THFは幅広いポリマーに利用できる優れた溶剤の一つといえます。

このTHFの特性は何から生まれているのでしょうか。水と油は混じらない、似た者同士は溶け合うという基本原理はご存じだと思います。THFの溶解性も、この原理を拡張して解釈することができます。

 

① ラフな考察:極性

表2は代表的な溶剤の極性を比較したものです。THFが非極性でも強い極性でもなく適度な極性の溶剤であることが分かります。非極性ポリマーにも極性ポリマーにも親和性があることを表しています。

 

【表2 溶剤の極性比較】

溶剤 区分 比誘電率(εr) 双極子モーメント(μ)[D]
ヘキサン 非極性 1.9 0.0
THF 中極性 7.6 1.7
アセトン 極性(非プロトン) 21 2.9
水 極性(プロトン) 80 1.9

 

② ハンセン溶解度パラメータによる考察

二つの化合物の溶解性(親和性)の尺度としてハンセンの溶解度パラメータ(HSP)が知られています。
このパラメータは化合物の溶解性を、「分散項(δd)」「極性項(δp)」「水素結合項(δh)」の3つの成分で数値化したものです。

[※関連記事:【溶解度パラメータとは?】物質間の「親和性の物差し」の有効性を事例で解説]

下式で求める二つの物質(1と2)の距離Raが小さいほど、一般に親和性が高い傾向があります。

ハンセンの溶解度パラメータ

このように、溶解性を考える際には、極性だけでなく、分散相互作用や水素結合に関する性質も考慮することが重要です。
ただし、ポリマーの実際の溶解性は分子量や温度などにも左右されるため、Raだけで溶解の可否が決まるわけではありません。

 

(2)金属含有化合物

有機化学において有用な金属含有化合物として、水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4)とグリニャール試薬(RMgX)があります。
これらを利用するにはこれらの溶解性が高い溶媒が必要になりますが、その能力のある溶媒は限られています。ここでTHFが真価を発揮します。

THFをはじめとする各溶剤へのLiAlH4の溶解度を表3に示します。
THFは、ジエチルエーテルとともにLiAlH4の代表的な溶媒として利用されています。
また、グリニャール試薬の代表的な溶媒にも、THFやジエチルエーテルがあります。これらのエーテル系溶媒は、酸素原子が金属中心に配位し、溶媒和することで溶解を助けます。

 

【表3 LiAlH4の溶解度】

溶剤名 溶解度 (g/100ml) 特徴
ジエチルエーテル 35.0 ~ 40.0 最も溶解度が高い。引火性が極めて高い
THF 11.0 ~ 13.0 最も一般的で代表的
1,2-ジメトキシエタン 約 7.0 高温での反応が必要な際に使用される
ジグライム 約 5.0 沸点が高く、より過酷な条件で使用される
1,4-ジオキサン 0.1 以下 ほとんど溶けない
トルエン 0.0 不溶

 

3.溶媒以外の用途

以上述べた通りTHFはその高い溶解力が特徴ですが、工業的には主に図1に示すPTMEG(ポリテトラメチレンエーテルグリコール)の原料として使用されています。THFを開環重合することでPTMEGが得られます。

 

PTMEGの構造
【図1 PTMEGの構造】

 

このPTMEGはスパンデックス(=Spandex=ポリウレタン弾性繊維)の製造において、柔軟性を付与する成分として使用されています1)。スパンデックスは需要が拡大している素材です。

 

4.今後の予測

以上述べた通り、THFは高溶解性溶剤として今後も重要な役割を果たしつつ、スパンデックス等の高分子材料向けの需要が今後拡大するものと予想されます。
一方、石油由来原料ではなく、バイオマス由来の1,4-ブタンジオールから製造するバイオTHFの商業化も進められています。この面での進展も期待されています。

 

(日本アイアール株式会社 特許調査部 N・A)

 


《引用文献、参考文献》


 

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