3分でわかる アセチレンの特徴と用途|燃料ガスからアセチレンブラック・CNTまで

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アセチレンの基礎知識

アセチレンは、溶接や切断などに用いられる高温の燃料ガスとして知られていますが、化学品原料としても幅広く利用されています。特に、アセチレンを原料とするアセチレンブラックは、優れた導電性を持つ材料として、電池などの分野で活用されています。
この記事では、アセチレンの化学的な特徴や燃焼特性を解説するとともに、アセチレンブラックやカーボンナノチューブ(CNT)などへの応用について紹介します。

1.アセチレンとは?化学的特徴と製造方法

アセチレン(別名:エチン)は、分子式C₂H₂で表される、炭素間に三重結合を持つ不飽和炭化水素です。
エタンやエチレンと同じく、炭素原子を2個含むC2炭化水素ガスの一種です。

表1はこれら三者を比較したものです。
アセチレンが炭素間の三重結合を持つことはよく知られていますが、これに加えて、H/C比が1と小さいのもアセチレンの特徴です。

 

【表1 C2炭化水素ガスの比較】
C2炭化水素ガスの比較

 

アセチレンは三重結合を持つ熱力学的に不安定な物質であり、加圧下で熱や衝撃などが加わると、下式に示す激しい発熱を伴う自己分解を起こす危険性があります1)。

 C2H2 →2C +H2 + 54.5kcal

なおアセチレンは、石灰石とコークスを原料とするカーバイド法のほか、天然ガスや石油系炭化水素を高温で分解する方法でも製造されています。現在も中国などではカーバイド法が広く用いられています。

 

2.燃料ガスとしてのアセチレンの特性

アセチレンが溶接等に使用されるのはその火炎温度が他のガスよりも高いためです。
表2をご覧ください。空気中でも酸素中でも火炎温度は[アセチレン>エチレン>エタン]の序列であり、他のガスを大きく上回っています。酸素中でのアセチレンの火炎温度は約3,300℃に達します。

 

【表2 C2炭化水素ガスの火炎温度】
C2炭化水素ガスの火炎温度

 

一方で、燃焼熱の大きさは[エタン>エチレン>アセチレン]の順であり、アセチレンが高い訳ではないことが表2から分かります。

燃焼熱が大きくはないのに、アセチレンの火炎温度が非常に高いのは何故なのでしょうか?
これには表1でも触れたH/C比が関係しています。火炎温度を支配する因子としては、燃焼熱以外に、燃焼後の生成ガスの量と組成が挙げられます。燃焼熱は生成ガスの昇温にも消費されるからです。
表2中の燃焼の反応式をご覧いただくと、原料ガス1分子から生成するCO2はどれも2分子ですが、H2O分子はエタンで3分子、エチレンで2分子、アセチレンで1分子です。アセチレンでは生成するH2O分子が少ないために、火炎温度を高く維持できるのです。

 

3.化学原料としてのアセチレン

アセチレンはその特性を活かして、燃料以外に化学原料としても利用されています。
その一つがアセチレンブラックの原料としての利用です。

皆さんはカーボンブラックという材料をご存じだと思います。黒色で導電性を有する粉末状素材であり、プラスチック製品等の様々な製品に混合されています。
このカーボンブラックの中の特殊グレードがアセチレンブラックです。
表3は、このアセチレンブラックを通常のカーボンブラックと比較したものです。

 

【表3 アセチレンブラックと通常のカーボンブラックとの比較】
アセチレンブラックと通常のカーボンブラックとの比較

 

通常のカーボンブラックが重質油を空気で不完全燃焼させて製造するのに対して、アセチレンブラックはアセチレンの自己分解で製造します。
このためにアセチレンブラックは結晶性が高く、また、図1に示すように粒子が高度に連結した構造を持ちます。こうした構造によって高い導電性を示します。

また、酸素を必要としない製法のため純度も高く、EV向け電池材料として好適であり、需要が伸びています。ただし、価格は通常のカーボンブラックよりも高く、生産量も限られています。

 

アセチレンブラックと通常のカーボンブラックのストラクチャー
【図1 アセチレンブラックと通常のカーボンブラックのストラクチャー】

 

アセチレンはポリアセチレンの原料としても利用されています。ポリアセチレンは、白川英樹教授らが研究を進めた高分子であり、ドーピングによって高い導電性を示します。白川教授らは、導電性高分子の発見と発展に貢献した功績により、2000年にノーベル化学賞を受賞しました2),3)。

 

4.高機能炭素材料への応用

アセチレンは、アセチレンブラック以外の高機能炭素材料の製造にも利用されています。
その一例が、図2にイメージ図を示したカーボンナノチューブ(CNT)です。

 

カーボンナノチューブ(CNT)のイメージ図
【図2 カーボンナノチューブ(CNT)のイメージ図】

 

CNTは炭素系新素材として期待されている材料です。
CNTの成長に関わる前駆体の一つがアセチレンであり、アセチレンを原料として用いる製造方法も報告されています4)。

[※関連記事:3分でわかる カーボンナノチューブの基礎知識]

 

5.おわりに

アセチレンは、炭素間の三重結合やH/C比の小ささなど、他の炭化水素とは異なる特徴を持ち、溶接・切断用の燃料ガスや化学品原料として幅広く利用されてきました。

今後は、優れた導電性を持つアセチレンブラック向けの利用が拡大するとともに、カーボンナノチューブ(CNT)などの新規分野での利用も進むと予想されます。従来の燃料ガスとしての用途にとどまらず、高機能炭素材料の原料として、さらなる用途の広がりが期待されています。

 

(日本アイアール株式会社 特許調査部 N・A)

 


《引用文献、参考文献》

  • 1) 高圧ガス保安協会, 高圧ガス保安技術(甲種化学・機械講習テキスト)第20版(2024)
  • 2) H. Shirakawa and S. Ikeda, Infrared Spectra of Poly(acetylene), Polymer Journal 2, 231–244 (1971)
  • 3) 白川英樹, 導電性高分子から何がみえるか, 三田出版会(1990)
  • 4) G. Zhong et al., Acetylene: A Key Growth Precursor for Single-Walled Carbon Nanotube Forests, J. Phys. Chem. C 113(40), 17321–17325(2009)

 

 

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