3分でわかる技術の超キホン 糖鎖や特殊な糖の配糖体医薬品・9選

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この連載コラムこれまでにご紹介してきた配糖体医薬品以外にも、多くのものがあります。

今回は、糖鎖や特殊な糖も含めてその他の医薬品をご紹介したいと思います。

① イベルメクチン(Ivermectin)駆虫剤

静岡県伊東市川奈の土壌から分離された放線菌Streptomyces avermitilisの発酵産物から単離されたアベルメクチン類から誘導された半合成経口駆虫薬です。

熱帯や亜熱帯地方に広く分布する寄生虫疾患の一つとして、糞線虫症(Strongyloides stercoralisによる感染症)があり、これに対して高い有効性と安全性を示す薬剤としてイベルメクチンが開発されました。

線虫の神経・筋細胞に存在するグルタミン酸作動性クロライドチャンネルに選択的かつ高い親和性を持って結合することが示唆されており、線虫の神経又は筋の細胞膜のクロライドに対する透過性を上昇させ、細胞の過分極を引き起こすことが示唆されており、その結果、寄生虫を麻痺させ駆虫活性を発現するとされています。

イベルメクチン
 

② エノキサパリンナトリウム(Enoxaparin Sodium)
 血液凝固阻止剤

低分子量ヘパリンで、ブタ由来の未分画ヘパリンのベンジルエステルを解重合することで得られる、分子量の異なる成分から成るグルコサミノグリカン(平均分子量約4,500)です。

アンチトロンビンⅢ(ATⅢ)と複合体を形成し、ATⅢの第Ⅹa因子活性および第Ⅱa因子活性を増強することで抗凝固作用を発現する血液凝固阻止剤です。
その作用は、ヘパリンと異なり、第Ⅱa因子より第Ⅹa因子に対して選択的とされています。

エノキサパリンナトリウム 
 

③ オーラノフィン(Auranofin)RA寛解導入剤

関節リウマチ症状に対し遅効性の改善効果を発揮し、疾患進展阻止及び寛解誘導能があります。
作用機序はまだ明らかではないものの、免疫系への関与、抗炎症作用により効果を発現すると考えられています。

オーラノフィン
 

④ フィダキソマイシン(Fidaxomicin)
 クロストリジウム・ディフィシル感染症治療剤

フィダキソマイシンは、Dactylosporangium aurantiacum によって産生され、細菌RNAポリメラーゼを阻害することによりRNA合成を阻害、抗菌活性を示します。

フィダキソマイシンは、C. difficile(抗菌性関連下痢症・腸炎の原因菌))をはじめとする一部のグラム陽性菌に抗菌活性を示し、ほとんどのグラム陰性菌に対しては抗菌活性を示さないとされています。
フィダキソマイシン
 

⑤ ミグルスタット(Miglustat)
 グルコシルセラミド合成酵素阻害薬

ニーマン・ピック病C型に効能・効果を承認取得したグルコシルセラミド合成酵素阻害薬です。

ガングリオシドはグルコシルセラミドを経て産生されるスフィンゴ糖脂質で、ミグルスタットはこのスフィンゴ糖脂質の生合成経路の最初の段階を触媒するグルコシルセラミド合成酵素を阻害し、二次的にガングリオシドの生合成を抑制し、神経細胞内のガングリオシドの蓄積量を減少させることによりニーマン・ピック病C型の神経症状の進行を遅延させるとされています。

ミグルスタット
 

⑥ ミガーラスタット(Migalastat Hydrochloride)
 ファブリー病治療剤

ミガーラスタットは国内で発見された低分子量のイミノ酸であり、ファブリー病でリソソーム内に蓄積するスフィンゴ糖脂質の一つであるグロボトリアオシルセラミド(GL-3)の末端ガラクトースの類似体です。

ミガーラスタットはα-Gal Aに対する薬理学的シャペロンとして作用し、小胞体上で特定の変異型α-Gal Aに選択的かつ可逆的に結合して、そのリソソームへの適切な輸送を促進します。
リソソーム内では、ミガーラスタットが解離し、遊離したα-Gal Aによる蓄積したGL-3の分解作用を促すとされています。

ミガーラスタット
 

⑦ フォンダパリヌクス(Fondaparinux)合成Xa阻害剤

アンチトロンビンⅢ(ATⅢ)に選択的かつ特異的に結合し、ATⅢの抗第Xa 因子活性を増強することにより、トロンビン生成を阻害し、フィブリン形成を抑制する新規の抗凝固薬です。
静脈血栓塞栓症の発症を抑制します。

フォンダパリヌクス
 

⑧ ラクツロース(Lactulose)
 生理的腸管機能改善・高アンモニア血症用剤

fructoseとgalactose各1分子からなる天然には存在しない人工の二糖類です。
1943年に、カラメル化した牛乳が人工栄養児の腸内乳酸桿菌の育成を促進することが着目され、その有効成分がラクツロースとして単離同定されました。

経口投与されると未変化のまま大腸に達し、下部消化管においてあたかも高繊維食摂取に似た生理的な排便作用を発揮するとともに、腸内細菌により分解され生成した有機酸(乳酸、酢酸等)が腸管運動を亢進させます。
また、有機酸の生成は腸管内pHを低下させ、アンモニアの産生・吸収抑制による血中アンモニア濃度低下作用を示します。

ラクツロース
 

⑨ ラクチトール(Lactitol)高アンモニア血症治療剤

糖アルコールのラクチトールを肝性脳症に使用し、病態をコントロールすることが可能であることが確認されました。

経口投与後ほとんど吸収されず、腸内細菌により資化され、腸管内pHの低下作用、アンモニアの産生・吸収抑制、及び腸管内輸送能亢進により、血中アンモニア濃度を低下させます。

ラクチトール

 
 
以上、全7回にわたり配糖体の医薬品をご紹介いたしましたが、配糖体は医薬品以外にも広く存在します。
関心のある方は、ぜひ医薬品以外についても調べてみてください。
 
(日本アイアール株式会社 特許調査部 S・T)
 


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