機械の警報を無視すべからず(技術者べからず集)
警報は機械からの訴え
機械とは外部から動力(エネルギー)を与えられて人力では不可能な仕事を行うもので、回転運動、往復運動など様々な動きを伴います。
機械が健全な状態で稼働しているかどうかを監視するために、機械にはいろいろな測定計器(計装品)が装着されています。回転機械であれば、振動計や軸受温度計が一般的です。
計装品から送られてくる測定値には、ある値を超えた場合には機械内部に何らかの異常が発生したことを示すための閾値が設定されます。
ある警戒値に達すると警報(Alarm)が発報され、さらにある値を超えた場合には安全のために運転を停止(Trip)するよう設定されるのが通常です。
閾値を超えた時は、機械が内部の異常発生(体調不良)を訴えていると考えなければいけません。
警報を無視すべからず
警報が発報された場合に無視してそのまま運転を継続すると、機械の内部異常が限界を超えて破損などの重大事象を引き起こすことになります。
警報が発報されたときには、測定データ自体の分析、他の監視計器からの測定信号や運転データと突き合わせての解析など、詳細な調査を行います。回転機械であれば回転速度を落とすなど負荷を下げると共に、なるべく早い段階で機械を停止して、分解点検を行わなければいけません。
また警報値を超えて、停止値(Trip)に到達した場合には、直ちに緊急停止するようにしなければいけません。
間違っても、設定されたTrip値を無視して運転継続などしてはなりません。
警報無視であわや大事故へ?膨大な修理・復旧コストのリスクまで考慮した判断を!
かなり前ですが、某工場のある回転機械でこんなことがありました。
振動値がだんだん高くなって遂に停止レベルに設定された値に到達したのですが、工場操業に支障を来すという理由からなのか、そのまま運転されていました。
その結果、回転機の内部で過大振動のため接触による噛り付きが発生して回転体が内部で固着しました。この機械を駆動するモータは回転動力を送り続けますから、機械とモータを連結するカップリング(接手)が耐え切れなくなって、機械のシャフト先端が45度の角度に曲がり、接手が吹っ飛びました。
接手は周囲のラックに引っ掛かって止まり、幸い人的被害はありませんでしたが、一歩間違えば大惨事になっていました。また機械は内部が固着して損傷がひどい状態でしたから修理に多大な時間が必要となり、停止レベルで直ちに止めて分解点検した場合に比較して、操業復旧まではるかに長い日数を要することになりました。
機械の警報・停止の閾値は根拠があって設定されたものですから、これを無視するようなことは絶対にしてはいけません。
(アイアール技術者教育研究所 S・Y)