3分でわかる バリアフィルムの基礎知識|評価指標と用途別の特性を解説

食品の鮮度保持や医薬品の品質維持、さらには電子材料の信頼性確保まで、私たちの生活や産業を陰で支えている重要な材料が「バリアフィルム」です。目立つ存在ではありませんが、その性能は製品の寿命や安全性を大きく左右します。
本記事では、バリアフィルムの基本的な仕組みや性能評価の考え方について、わかりやすく解説します。
目次
1.バリアフィルムの基本
(1)バリアフィルムとは?
「バリアフィルム」は内容物を守る保護フィルムのことです。
では、どんな内容物を何から守るのでしょうか。図1はそのイメージ図です。

【図1 バリアフィルムのイメージ図】
バリアフィルムは、食品・医薬品・電子材料等の保護対象への酸素・水分・臭気・光等の有害因子の侵入を防いで、品質を維持するために使用されます。有害因子の中では酸素と水分が特に警戒されます。
(2)バリア性能の評価法
バリアフィルムの性能は主に透過率により評価され、表1に示す①酸素透過率と②水蒸気透過率が特に重視されます。当然ながら、これらの数値が小さいほどバリアフィルムとして優れていることになります。
①は小さいが②は大きいというフィルムもあり得ます。通常は①も②も共に小さいフィルムが求められます。
【表1 バリアフィルムの主な性能指数】
| 指標 | 単位 |
| ① 酸素透過率(OTR) | cc/m2・day・atm |
| ② 水蒸気透過率(WVTR) | g/m2・day |
ご留意いただきたいのは、透過率は同じ材料であっても厚くすれば値が小さくなるという点です。即ち、透過率(Permeance)は膜厚に依存する実用性能であって、材料の物性値ではないことです。
物性値の方は「透過度」(Permeability)と呼ばれ、その単位はBarrerで表されます。
(3)バリアフィルムに対する要求性能
バリアフィルムに対する要求は用途により大きく異なります。表2は食品分野と電子材料分野における典型的な要求性状を示したものです。電子材料では食品よりも桁違いに高いバリア性能が求められますので、製造コストも増加します。
【表2 バリアフィルムに対する要求性能:食品と電子材料】
| 食品分野 | 電子材料分野 | |
| 設計思想 | 劣化を遅らせる | 劣化をゼロに近づける |
| 酸素透過率, cc/m2・day・atm | 1~10 | 10-3以下 |
| 水蒸気透過率, g/m2・day | 0.1~1 | 10-6以下 |
| 許容される欠陥サイズ | μmレベル | nmレベル |
(4)バリアフィルムの区分
バリアフィルムは無機蒸着膜の有無により大別されています。ポリマー単独系フィルムの場合もありますが、これで要求が満足されない場合には、無機蒸着膜付きフィルムが使用されます。
2.ポリマー単独系(無機蒸着膜なし)バリアフィルム
まずは基本となるポリマー単独系フィルムについて、その透過特性の考え方を整理します。
(1)ポリマーの透過度
ポリマーの物性値である透過度には、そのポリマーが持つ以下の3因子が影響します。
これらの因子と透過ガスとの相互作用によって、各ポリマーの透過度が決まります。
- a) ポリマー鎖間の結合の強さ
- b) ポリマー鎖間の隙間の大きさ
- c) ポリマーの結晶化度
(2)代表的なポリマー材料の特徴と用途
図2は代表的なポリマーの酸素透過度と水蒸気透過度をプロットしたものです。
図2から以下のことが分かります。
- 1) 酸素透過度と水蒸気透過度の間にはゆるやかな正の相関があります。即ち酸素透過度が高ければ水蒸気透過度も高い傾向があります。
- 2)しかし、ポリビニルアルコールとエバールは酸素透過度が非常に低い一方で、水蒸気透過度はそれほど低くはありません。両ポリマーは、酸素バリア性に優れる一方、高湿度下では透過度が増大するという弱点があります。これは両ポリマーが水酸基を有することに起因しています。両ポリマーの酸素透過度の低さを活かしつつ、この弱点を補うために、これらのフィルムを他のポリマーフィルムで挟み込む形での複合化が行われています。
- 3) ポリ塩化ビニリデンは酸素透過度も水蒸気透過度も低い、バランスがとれたポリマーです。魚肉ソーセージのオレンジフィルム等に採用されています。

【図2 ポリマーの透過度】
3.無機蒸着膜付きフィルム
ポリマー単独系フィルムでは要求が満足されない場合には無機蒸着膜付きフィルムが使用されます。蒸着には高額装置の導入が必要になりますので、コスト上昇につながります。
無機蒸着膜は金属系と金属酸化物系に区分されます。表3は両者に関する大まかな特性比較です。
金属系では通常アルミニウムが、金属酸化物系ではアルミナ又はシリカが使用されます。
無機膜の中では比較的穏やかな条件で蒸着できる金属系の方が相対的に低コストであり、バリア性も総合的に優れています。また遮光が必要な場合には金属系が必須となります。しかし、透明性を保持したい用途や導電性が障害になる用途では、金属酸化物系が採用されています。
【表3 無機蒸着膜付きバリアフィルムの比較】
| 金属系 | 金属酸化物系 | |
| 無機素材 | アルミニウム(Al) | アルミナ(Al2O3) シリカ(SiO2) |
| コスト (無機膜間の相対評価) |
〇 | △ |
| バリア総合性能 | ◎ | 〇 |
| 遮光 | ○ | △ |
| 透明性 | × | 〇 |
| 導電性 | あり | なし |
以上、バリアフィルムのエッセンスを解説しました。
現実の用途では、バリアフィルムへの要求性状は多項目に及び、また性状間のバランスも必要になりますので、高度の複合化や各層の膜厚最適化等が行われています。詳細は成書を参考にしてください1)。
本記事がその理解の一助となれば幸いです。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 N・A)
《引用文献、参考文献》
- 1) 伊藤義文, バリアフィルムと高機能化技術 情報機構(2016)






































