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不具合未然防止の基本と実務への適用《事例で学ぶ FMEA/FTA/DRBFMの効果的な使い方》(セミナー)
2024/12/3(火)9:30~16:30
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ハードディスク装置は、高速回転する円板に磁気ヘッドを浮上・走査させ、表面に磁性膜が形成された円板に磁気ヘッドが情報を記録・再生する記憶装置です。
装置起動停止方式は、磁気ヘッドが円板に移動・退避する”ロードアンロード方式“と、円板上を離陸・浮上する”コンタクトスタートストップ方式“の2種類です。
磁気ヘッドは、円板の回転状態に対応し下表のように動作します。
時期 |
1980年代前半まで |
1980年代前半以降 |
方式 |
ロードアンロード方式 | コンタクトスタートストップ方式 |
装置起動時 |
円板外から回転中の円板に移動 | 回転数上昇中の円板上を摺動しながら離陸 |
装置停止時 |
回転中の円板から円板外に退避 | 回転数下降中の円板上を摺動しながら着陸 |
装置停止後 |
円板外に静止 | 円板上に静止 |
留意点 |
・ロードアンロード機構が必要 ・起動停止時にロード機構部材と「摺動」 ・起動停止に回転中の円板と「衝突」 |
・停止後に円板に「吸着」 ・起動停止時に円板と「摺動」 |
コンタクトスタートストップ方式の主な留意点は、停止後の円板と磁気ヘッドの「吸着」及び起動停止時の円板との「摺動」です。
とりわけ「吸着」は、製品が代替わりする毎に磁気ヘッドと円板の表面形状もより滑らかにしたため停止時の円板と磁気ヘッドの間隔が小さくなり吸着力が大きくなるため、問題は顕在化しました。
また装置停止時間が長いほど、また周囲環境湿度が高いほど吸着力は大きくなるため、在庫品や保守品のように保管時間の長い装置への対応、梅雨時の環境などにも気を配り心配の種は尽きませんでした。
円板のコンタクト領域の表面形状の工夫、磁気ヘッドに突出部を形成するなどの工夫をしましたが、なかなか決定打となる技術は見つかりませんでした。
「吸着」に対する技術的困難が増す中、1990年代後半、再びロードアンロード方式を適用した装置が製品化されました。
上表に示したようにロードアンロード方式自体は新しいものではありません。
しかし起動停止時のロード機構部材との「摺動」、円板との「衝突」などの品質留意点、ロードアンロード機構の追加に伴う、部品点数増加、装置組立・分解方法の複雑化の課題を克服して製品化したことは尊敬に値します。
またこのロード方式の製品は、装置動作制御技術の向上もあって、装置停止後だけでなく記録・再生動作以外の装置稼働時にも磁気ヘッドを円板外に退避できます。
これは記録・再生動作頻度が比較的少ない用途の場合には装置寿命・省電力などの観点で効果大です。
もちろん方式変更をせずに、精緻な工夫を重ねて性能、品質改善することは素晴らしいことです。
方式変更をせず、慣れた技術ならばリスクを大凡想定できる利点もあります。
同時に、方式変更に果敢に挑戦する行動が必要です。
方式変更に伴う留意点、検討中に発生した新たな課題を克服できた暁には、追加の成果も期待できます。
ものづくりに関わる技術者として、方式変更によるリスク発生を恐れるあまり、停滞することは避けたいものです。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 Y・O)