3分でわかるPFASの基礎知識|PFAS汚染の概要/人体への有害性/規制・対策など

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PFASとは

「PFAS」について近年急速に関心が高まっています。新知見の報告が相次ぎ、状況が変化し続けています。
最新の状況はセミナーや近刊成書1)等でご確認いただくのが望ましいと思います。
当記事では、その状況を理解する上で役立つと思われるPFASの基本事項を解説します。

1.PFASとは?《PFAS関連用語を含めて整理》

PFAS関連の用語は紛らわしいので表1でこれらを対比し、包含関係を図1に示します。

 

【表1 PFAS関連の用語の対比】

略称 略称呼び名 正式名称 構造式 備考
POPs ポップス Persistent Organic Pollutants
残留性有機汚染物質
ポリ塩化ビフェニル(PCB),DDT,
PFAS等を含む総称
PFAS ピ-ファス Per-and polyFluoroAlkyl Substances
ペル/ポリフルオロアルキル物質
有機フッ素化合物としての総称
PFOA ピ-フォア PerFluoroOctanoic Acid
ペルフルオロオクタン酸
F(CF2)7COOH PFASの一種の化合物名(炭素数8)
PFOS ピ-フォス PerFluoroOctane Sulfonic Acid
ペルフルオロオクタンスルホン酸
F(CF2)8SO2OH PFASの一種の化合物名(炭素数8)
PFHxS ピーエフヘクスエス PerFluoroHexane Sulfonic Acid
ペルフルオロオクタンスルホン酸
F(CF2)6SO2OH PFASの一種の化合物名(炭素数6)
PFNA ピーエフエヌエー PerFluoroNonanoic Acid
ペルフルオロノナン酸
F(CF2)8COOH PFASの一種の化合物名(炭素数9)
 

PFAS関連用語の包含関係
【図1 PFAS関連用語の包含関係】

 

即ち、「PFAS」とは有機フッ素化合物の総称であり、PFOAやPFOS等の個別の化合物はPFASに含まれます。
またPFASは 上位概念であるPOPs(残留性有機汚染物質)の一部を構成します。

 

2.PFAS問題を考えるための観点

PFAS問題は、以下の観点からとらえることが重要です。

 

(1)PFAS汚染

何がPFAS汚染の源であり、その結果として何が汚染されているのかが第一の観点です。

 

a 汚染源

PFASの汚染源は、下記の5項目に大別されます。
a1やa2だけならば限定的とも言えますが、広範囲に及んでいるのが実態です。

  • a1:PFASの製造工場
  • a2:製品製造の工程でPFASを使用する工場
  • a3:PFASを成分として含む泡消火剤を使用していた基地や飛行場
  • a4:処理場に持ち込まれた、あるいは不法投棄されたPFAS含有廃棄物
  • a5:PFASで表面処理された繊維等の製品

 

b 汚染物

PFASの汚染物は、下記3項目に大別されます。
いずれも世界および日本で各地のデータが蓄積されつつありますが、その全貌はまだ明らかにはなっていません。水によく溶けて揮発しないというPFASの性質が、問題を深刻なものにしています。

  • b1:飲料水
  • b2:土壌
  • b3:人体

なお、汚染物が含むPFASの濃度は、飲料水では ng/L≒ppt (ナノグラム/リットル)が、人体の血中濃度は ng/mL≒1000ppt=1ppb (ナノグラム/ミリリットル)が単位として使用されています。

 

(2)PFASの化学的安定性

PFASが厄介なのは化学的に極めて安定であり、分解されずに残留し続ける点です。このためPFASは別名「永遠の化学物質」とも呼ばれています。

安定性はC-F結合の結合エネルギーが大きいことに由来します。
ご関心のある方は、別コラム「3分でわかる フッ素樹脂とC-F結合」をご参照ください。

 

(3)PFAS の人体への有害性

一例として、PFOAについてはこれまでコレステロール値の上昇、腎臓がん、精巣がん、潰瘍性大腸炎、妊娠高血圧症候群、甲状腺疾患を起こす可能性が指摘されています1)
ただし、これは他のPFAS なら安全ということでも、他の有害性がないということでもありません。現在は解明途上であり、全貌は未解明です。ここでは下記2点の客観的事実を紹介するにとどめます。

  • PFASのメーカーである米国3M社がPFOAとPFOSの製造を自主的に中止すると2000年に発表し、話題となりました。
  • 2023年12月にWHOの専門機関であるIARC(国際がん研究機関)がPFOAの発がん性を、4段階中の3番目に高い「可能性がある」から最も高い「ある」に引き上げました。

 

(4)PFASの規制値

飲料水中の濃度や血液中の濃度も、絶対安全な濃度を誰も保証できないのが実情ですので、規制値についても暫定的なものであり、今後、より厳しくなるとみるべきでしょう。

飲料水については、

  • 日本ではPFOA+PFOSの合計濃度が50ng/Lという暫定目標値が2020年5月に設定されました。この目標値は緩いとの批判もあります。
  • 米国ではPFOA濃度4 ng/L、PFOS濃度4 ng/Lとの基準値が2024年4月に決定されました。

 

3.現況で可能なPFAS対策

深刻なPFAS汚染が既に起きてしまった事実を踏まえて、どのような対策が可能でしょうか。

 

(1)一般市民として

水道水中のPFASは、活性炭等で大部分を吸着除去できると報告されています。
最も簡便で今すぐ実行可能な対策です。
ただしPFASが吸着した活性炭を適切に処理しないと、それが新たなPFAS汚染源となる可能性もあります。

 

(2)社会的な対策

根本的にはPFASを無害な物質に分解することが必要です。
環境省はPFOAとPFOSは1000℃以上の高温に置けばほぼ完全に分解できるとしています2)
一方でより低温で効率的にPFAS等を分解する手法も神奈川大学の堀久男教授が検討中です3)

PFAS対策の研究開発について、今後の進展が期待されます。
 

 

(日本アイアール株式会社 特許調査部 N・A)

 


《引用文献、参考文献》

  • 1) 原田浩二, 「PFAS」から命を守る方法, 河出書房新社(2024)
  • 2) 環境省, PFOS及びPFOA含有廃棄物の処理に関する技術的留意事項, 2022年9月
    https://www.env.go.jp/content/000077696.pdf
  • 3) 堀久男, 亜臨界水を用いた次世代有機フッ素材料の分解・無機化反応の開発, 環境技術, 51(5), 246-250(2022)

 

 

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