3分でわかる イオン交換樹脂とは?種類(分類)/原理/特徴/用途など要点解説

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イオン交換

現代産業の「分ける・浄める・濃縮する」を支えるイオン交換技術。本シリーズでは、材料の基礎から高度なシステムまで全4編で解説します。

  • 第1編:イオン交換樹脂:不純物イオンを選択的に交換・除去する材料
  • 第2編:イオン交換膜:イオンを選択的に通し、電気透析などで分離・濃縮する膜
  • 第3編:水処理の全体像:原水から超純水まで、工程の組み方
  • 第4編:実戦選定・技術比較: 樹脂・膜・RO(逆浸透膜)の徹底比較

 

1.イオン交換樹脂とは

現代の産業において、水や溶液から特定の不純物を取り除いたり、有用な成分を回収したりする技術は不可欠です。その中核を担うのが「イオン交換樹脂」です。家庭用の浄水器から半導体製造の超純水、さらには医薬品の精製まで、目に見えないところで私たちの生活を支えています。

 

(1)イオン交換樹脂の定義と基本構造

「イオン交換樹脂」(ion-exchange resin)は、イオン交換基を持つ水不溶性の高分子材料です。多くは架橋した網目構造を持ち、粒状の製品として使われます。

イオン交換樹脂は主に溶液中のイオンを対象とするため、粒子や非イオン性物質の除去には、ろ過や吸着など別の処理を組み合わせる場合があります。

 

(2)内部構造の仕組み

樹脂骨格に化学結合したイオン交換基が電離すると、樹脂骨格に固定されたイオン性基(固定イオン)と、その電荷を打ち消す対イオンに分かれます。
対イオンは樹脂内を移動でき、溶液中の同じ符号のイオンと可逆的に交換されます(図1)。

 

イオン交換樹脂の構造イメージ図
【図1 イオン交換樹脂の構造イメージ図】

 

イオン交換樹脂は主に粒状で、繊維状の製品もあります。一方、固定電荷を持ち、陽イオンまたは陰イオンを選択的に透過させる膜材料をイオン交換膜と呼びます。

[※関連記事: 第2編:3分でわかる イオン交換膜の原理(仕組み)・種類・用途]

 

2.イオン交換樹脂の種類(分類)

 

(1)交換するイオンによる分類

 

① カチオン交換樹脂(陽イオン交換用)

  • 強酸性:スルホン酸基を持ち、幅広いpH域で交換基が電荷を保ち、イオン交換能を示す。
  • 弱酸性:カルボキシル基を持つ。

 

② アニオン交換樹脂(陰イオン交換用)(図2)

  • 強塩基性:第4級アンモニウム基を持ち、幅広いpH域で正電荷を保つ。
  • 弱塩基性:第1〜3級アミノ基などを持ち、pHによって交換能が変化する。

 

イオン交換樹脂の分類
【図2 イオン交換樹脂の分類】

官能基の酸・塩基としての強さにより、強酸性・弱酸性・強塩基性・弱塩基性に分類されます(表1)。
 

樹脂の分類 強酸性・強塩基性樹脂の代表的な交換基 弱酸性・弱塩基性樹脂の代表的な交換基
カチオン交換樹脂 スルホン酸基(–SO₃H) 主にカルボキシ基(–COOH)
アニオン交換樹脂 第4級アンモニウム基 第1~第3級アミノ基など

【表1 イオン交換樹脂の分類と代表的な官能基】
 

 

(2)特殊な樹脂 :キレート樹脂

キレート樹脂は、特定の金属イオンと錯体(キレート)を形成する官能基を持つ樹脂です。官能基や溶液条件に応じた選択性を利用して、金属イオンの回収・除去に用いられます。

 

3.イオン交換の仕組みと再生プロセス

 

(1)イオン交換の原理 (仕組み)

イオン交換樹脂では、樹脂に固定されたイオン性基の電荷を打ち消す対イオンが、溶液中の同じ符号のイオンと可逆的に交換されます。
交換の起こりやすさは、イオンと樹脂との親和性や溶液条件によって異なります。

たとえば、H⁺形の強酸性カチオン交換樹脂にNaCl水溶液を通すと、樹脂の対イオンであるH⁺がNa⁺と交換されます。樹脂はNa⁺形となり、溶液側にはH⁺が放出されます(図3)。
塩化物イオンと合わせて考えると、流出液は酸性になります(式1)。

R-SO3H + NaCl ⇄ R-SO3Na + HCl  ・・・・・・式1

R :樹脂の高分子骨格

 

(2)イオン交換樹脂の再生

樹脂の交換基がNa⁺などで占められると、処理を続けても交換できる量が少なくなります。この状態の樹脂に酸を通すと、溶液中のH⁺との交換が進み、樹脂をH⁺形に戻せます。この操作を再生といいます。
再生は、酸を高濃度で供給してイオン交換平衡をH⁺形側へ移す操作です。再生後には、樹脂から置き換えられたイオンを含む再生廃液が生じます(図3)。

 

イオン交換と再生のイメージ図
【図3 イオン交換と再生のイメージ図】

 

4.イオン交換樹脂の特性・特徴

イオン交換樹脂がどのイオンを優先的に交換するかは、樹脂の交換基、樹脂の架橋度、イオンの価数や水和状態、溶液のpH・濃度などによって変わります。
一般には、多価イオンは一価イオンより強く保持される傾向があります。
同じ価数のイオン間では、水和半径や分極しやすさなども選択性に影響します。
H⁺形カチオン交換樹脂は、溶液中の陽イオンとH⁺を交換します。
陰イオンまで除去して水を脱塩する場合には、通常、アニオン交換樹脂も組み合わせます。

 

5.イオン交換樹脂の構造

イオン交換樹脂にはさまざまな高分子骨格があります。
ここでは、代表的なスチレン・ジビニルベンゼン共重合体を例に説明します。
スチレンと少量のジビニルベンゼンを共重合すると、ジビニルベンゼンが高分子鎖どうしを架橋し、水に溶けにくい網目構造ができます。
この共重合体を粒状に調製した後、目的に応じて官能基を導入します。たとえば、スルホン酸基を導入すると強酸性カチオン交換樹脂、アミノ基や第4級アンモニウム基を導入するとアニオン交換樹脂になります(図4)。

 

スチレン・ジビニルベンゼンのイオン交換樹脂の作り方
【図4 スチレン・ジビニルベンゼンのイオン交換樹脂の作り方】

 

6.イオン交換樹脂の用途

イオン交換樹脂は水処理をはじめ、様々な産業で幅広く使われています。

[※関連記事:イオン交換水とは?純水の作り方・原理を解説 ]

  • 食品・飲料:脱塩、脱色、糖液や飲料の精製
  • 化学工業:物質の精製、触媒、バイオディーゼル製造、排水・排ガス処理
  • 鉱業・冶金産業:金属イオンの回収・除去
  • バイオテクノロジー・製薬:アミノ酸、タンパク質、抗生物質などの分離・精製
  • 半導体・電子産業:純水・超純水の製造、排水処理

 

7.まとめ

イオン交換樹脂は、その網目構造と官能基の特性を活かし、水処理から最先端技術まで幅広く貢献しています。多種多様な樹脂の中から、目的のイオンに対する選択性や交換容量を考慮して最適なものを選ぶことが、技術運用の鍵となります。

次は、イオンを選択的に透過させ、電気透析などに用いられる「イオン交換膜」について解説します。
第2編 「3分でわかる イオン交換膜の原理(仕組み)・種類・用途」

 
(日本アイアール株式会社 特許調査部 H・L)

 


《引用文献、参考文献》

  • 1)細川 利雄, “イオン交換樹脂”, 有機合成化学協会誌, 42巻2号, pp. 173–174(1984).
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/yukigoseikyokaishi1943/42/2/42_2_173/_pdf/-char/ja
  • 2)板垣 孝治, “イオン交換樹脂”,日本醸造協会雑誌, 77巻4号, pp. 200–205(1982).
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbrewsocjapan1915/77/4/77_4_200/_pdf/-char/ja

 

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