3分でわかる イオン交換膜の原理(仕組み)・種類・用途

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イオン交換膜を初心者向けにわかりやすく解説

膜分離技術は、精製したい溶液を分離膜に通して、圧力差などを駆動力として膜ろ過を行う分離方法です。
以前に掲載したコラム「分離膜(濾過膜)の種類と用途」の回では、圧力差を駆動力とする分離膜と分離技術についてご説明しました。

今回のコラムでは、イオン交換膜の基礎知識をわかりやすく解説します。

 

1.イオン交換膜とは?(イオン交換膜の駆動力)

「イオン交換膜」は、圧力差を駆動力とする膜ではなく、電荷をもつ多孔質膜です。
電気泳動によりイオンは反対の極に引き寄せられて膜を通ることで、膜ろ過を行います(図1)。
つまり、溶液中のイオンを選択透過させる膜ということです。膜に固定されたイオンの対イオンしか通さない性質をもちます。
 

イオン交換膜(カチオン交換膜)の電気泳動による駆動力
【図1 イオン交換膜(カチオン交換膜)の電気泳動による駆動力】

 

2.イオン交換膜の種類

イオン交換膜の種類は、大まかに陰イオン(アニオン)しか通せないアニオン交換膜(A)と、陽イオン(カチオン)しか通せないカチオン交換膜(C)があります。
例えば、アニオン交換膜(A)は、膜に固定している陽イオン基のため正に帯電し、陽イオンは反発されて通ることができず、陰イオンだけが通れます。逆に、陽イオン交換膜は、膜に固定している陰イオン基のため負に帯電し、陰イオンは反発されて通ることができず、陽イオンだけが通れます(図2)。
 

アニオン交換膜とカチオン交換膜の原理
【図2 アニオン交換膜とカチオン交換膜の働き(原理)】

 

3.電気透析法

イオン交換膜を利用する分離技術は、濃度などの圧力差とは関係なく、膜の所帯電荷によりイオンの選択透過ができるため、濃縮、脱塩、減塩などの様々な場面で用いられます。これらの場面では、イオンの選択通過は直流電気エネルギーによって行われます。このような分離方法を「電気透析法」といいます。
電気透析法を利用して、水に溶けているイオン成分(ナトリウム、カルシウムなどの無機塩類やアミノ酸など)を濃縮したり、反対に除去したりすることができます。この分離法は、濃度の高い塩分処理の場合に最適です。
実際、電気透析法が使われるときは、カチオン交換膜とアニオン交換膜を組み合せて利用することが多いです。例えば図3に示したように、有機物脱塩純水(脱塩水)製造ができます。
 

電気透析法の基本な仕組み
【図3 電気透析法の基本な仕組み】

 

電気透析法の主な用途

電気透析法の主な用途として、以下が挙げられます。

  • 有機酸・アミノ酸の脱塩
  • 醤油の脱塩
  • ワインの酒石安定化
  • 果汁の脱塩・脱酸
  • 天然エキスの脱塩
  • 水溶性大豆多糖類の脱塩
  • 純水製造

 

4.イオン交換膜と逆浸透膜との比較

イオン分離、脱塩の場面で活躍するイオン交換膜ですが、用途面で逆浸透膜と似ていると思いませんか?
実はこの二つの大きな違いは、イオン交換膜は、イオンを通過させる一方で、水はほとんど通過させないという点にあります。逆浸透膜は、サイズの小さいイオンと水を通過させます。
したがって、海水中の非イオン性物質は脱塩水側に残留するため、飲料水としての質は逆浸透膜による濾過水のほうが高く、製塩としての質はイオン交換膜の方が高くなるのです。

 
ということで今回は、イオン交換膜に関する基礎知識をご紹介しました。

 

(日本アイアール株式会社 特許調査部 H・L)

 

 
 

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