3分でわかる技術の超キホン フロン冷媒の基礎知識

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フロン冷媒

フルオロカーボン(炭素とフッ素の化合物)は、一般にはデュポン社の商品名の「フレオン」(freon)で呼ばれますが、日本ではよく「フロン」と呼ばれます。フロンは人工物で、自然界には存在しません。

フッ素に関する前回のコラム 「フッ素化学」入門 の中でもご説明しましたが、フッ素原子Fは炭素原子Cと最も強固な結合(C-F結合)を作れます。フロンは主にフッ素と炭素の組み合わせで、化学的・熱的に極めて安定であり、不燃性の性質を有し、冷媒として優れた性能を有しています。

今回は、フロン冷媒の基礎知識を解説します。

 

1.冷媒の作用・原理

冷媒は、冷蔵庫やエアコンなど機器の中で、熱を温度の低い所から高い所へ移動させるために使用されます。

液体が気体になるときには周囲から熱を奪います。逆に、気体が液体になるときには周囲に熱を放出します。
冷蔵庫やエアコンなどの多くの機器は、冷媒の液化と気化のサイクル(蒸気圧縮冷凍サイクル)を繰り返しながら、冷却を実現します。

冷房の際、エアコンの動きを例として説明します。
室外機では、冷媒蒸気が圧縮機に流入して、ここで加圧されることによって高温高圧ガスとなります。圧縮機から流出した後、凝縮器に流入して外気へ熱を放出し、高温な冷媒ガスは冷たい液体に変化します。
そして冷媒液体は室内機の蒸発器に流入し、液体からガスに変わるときに部屋の熱を奪い、冷媒と室内空気の間で熱交換を行うことによって熱が冷媒に移動します。
熱を奪った蒸気は、再び室外にある圧縮機に流入して、このサイクルを繰り返します。

 

2.フロン冷媒の進化と冷媒の種類

1920年代に炭素、フッ素と塩素だけから成るフロン族CFC)が開発されました。
不燃で毒性が殆ど無いものでしたが、CFCに含まれている塩素(Cl)がオゾン層を致命的に破壊してしまうので、南極上空のオゾン層に穴(オゾンホール)ができていることが社会問題となりました。

その後、その代替として登場したのがHCFC族で、CFC族に水素を含ませることでオゾン層を破壊する力は弱くはなっていますが、ゼロではありません。CFC族とHCFC族は「特定フロン」と呼ばれ、その生産は先進国では2020年までに全廃されることになっています。

現時点での冷媒の主流は塩素を含まない、水素、フッ素と炭素の化合物即ち代替フロンHFC)です。
代替フロンはオゾン層破壊係数(ODP)がゼロですが、温室効果(GWP:温暖化係数)は二酸化炭素の140-11,700倍もあります。

そのため、更なる冷媒転換が求められています。
現在では、HFO(ハイドロフルオロオレフィン)や改めて自然冷媒に注目が集まっています。
しかし、これらの冷媒の多くは微燃性を有しており、地球温暖化物質でもあるため、冷媒の適正管理と新たな冷媒の開発が求められているところです。

 

【表1 主な冷媒の種類】
冷媒の種類(CFC/HCPC/HPC/HFO))

 

3.地球温暖化の原因としてのフロン類

そもそも「温室効果」「地球温暖化」はどういうものでしょうか?

地球の表面は主に窒素や酸素などの大気に覆われています。大気の中には水蒸気、二酸化炭素、メタンなどがわずかに含まれており、これらの気体は赤外線を吸収し再び放出する性質があります。つまり、太陽光中の赤外線は、地球の表面から地球の外に向かって放出されます。
赤外線の多くは熱として大気に蓄積され、再び地球の表面に戻ってきます。
戻ってきた赤外線が地球の表面付近の大気を温めることを「温室効果」(greenhouse effect)、温室効果をもたらす気体を「温室効果ガス」(greenhouse gas, GHG)といいます(図1)。

 

温室効果の仕組み
【図1 温室効果の仕組み】

 

温室効果のため、地球の平均気温はおよそ14℃に保たれています。
しかし、産業革命以来、人類が化石原料を大量に利用することによって、大気への二酸化炭素排出が急速に増加しました。これにより温室効果が強くなり、地表温度も大幅に上昇しています。その結果、北極や南極の氷が解け、海面が上昇するなど、様々な自然災害ももたらされています。

地球温暖化物質の代表は二酸化炭素です。しかし、フロン類は二酸化炭素の数千倍もの地球温暖化効果(GWP)があるとされており、新たな冷媒の開発が急務となっています。

 

(日本アイアール株式会社 特許調査部 H・L)
 


《引用文献、参考文献》


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