【資料・ツール解説】8Dレポートの記載事項と活用法
品質不具合対応などの問題解決においては、基本的なプロセスを守り、対応した結果をドキュメント化し、関係者の理解のレベリングと共有を図り、技術的な知見やプロセス・手法を伝承していくことが重要です。
「8Dレポート」という名前で呼ばれるドキュメントは、これらの目的を実現するためのツールです。
目次
1.8Dレポートのメリットと活用
8Dの”D”は、”Discipline“(規律)のDです。
しっかりした原理・原則に基づいた活動を行うことを目指し、あるべき問題解決プロセスのステップの確認と記録のために各ドキュメントが構成されています。
問題解決のためのQCストーリー(図1)や、課題解決プロセス管理のためのPDCAサイクル(図2)と共通する考えが盛り込められています。
8Dレポートは、0Dレポート、1Dレポート、・・・8Dレポートから構成されており、次のようなメリットと活用法があります。
- 詳細レポートとは別に、簡潔なレポートにより、関係者が状況を素早く理解できる
- 根本原因(ルートコーズ)や不具合メカニズムに迫っているかなどを当事者と関係者が確認できる
- 対策が根本的なもので、さらなる本格対策が必要かを検討できる
- 対応策が類似例の対応に役立つようにアクションされているか、仕組みに反映できているかを確認できる
次に実際の各レポートのポイントとフォーマットの説明をします。
2.0Dレポート~8Dレポートの概要と書き方・使い方
0Dレポート
0Dレポートには、「背景・状況と要求日程」についてをまとめ、以下内容を記載します。
- 不具合などの状況、活動を必要とする背景
- 要求される日程・期限
8Dレポートは、状況について関係者が速やかに理解して判断するためのものですので、内容欄の説明文や図表は簡潔で最低限としなければなりません。
一方、内容は、事実やデータに基づいている必要があります。このため基となる詳細な関係資料・報告書No.を別途記入する参照書類欄を設けます。説明時の質問へ回答する際に一部引用したり、説明後に詳細を確認したり検討する際にも利用することができます。以下1D~8Dレポートでも同様です。
0Dレポートの関係資料欄には、以下のような書類のNo.を記入します。
- 直接の不具合情報、調査報告書、議事録など
図3はExcelの資料に文章や図表を記入・挿入していく場合のフォームの例です。内容は同一でパワーポイント資料として作成する場合もあります。いずれにしても管理番号を記して、記録文書として管理されるようにしておくことが必要です。(以下1D~8Dレポートフォームについても同様)
【図3 Excel形式での8Dレポートの例】
1Dレポート
1Dレポートには、「活動チームと関係・協力部署」についてまとめ、以下内容を記載します。
- 実務チーム
- 協力・コミュニケーションを必要とする関係部署・関係者
- 合意・承認が必要な顧客、関係部署
- 議事録など
参照書類欄には、以下のような書類のNo.を記入します。
2Dレポート
2Dレポートには、「問題の明確化」についてまとめ、以下内容を記載します。
- 現場、現物、現実(現象)に関して、明確な事実、不明な事実
- 机上検討など数値・理論解析の結果と考察
- 不具合再現テストの結果、実験評価結果、不具合メカニズム仮説
- 直接の不具合情報、調査報告書、机上検討報告書、実験報告書など
参照書類欄には、以下のような書類のNo.を記入します。
3Dレポート
3Dレポートには、「暫定対策/流出防止策」についてまとめ、以下内容を記載します。
- 実施計画
- 期待される効果とリスク
- 関係先との協議・合意状況
- 詳細計画書、効果とリスクの検討・評価報告書、議事録など
参照書類欄には、以下のような書類のNo.を記入します。
4Dレポート
4Dレポートには、「根本原因の究明」についてまとめ、以下内容を記載します。
- 理論的および実験的な分析結果と不具合メカニズム仮説の立案
- 現場、現物、現実(現象)に関する知見と分析結果・仮説との整合性
- n増し(追加試験)テストの必要性、日程
- 直接の不具合情報、調査報告書、机上検討報告書、実験報告書など
参照書類欄には、以下のような書類のNo.を記入します。
5Dレポート
5Dレポートには、「是正処置」についてまとめ、以下内容を記載します。
- 対策内容
- 期待される効果とリスク
- 合意・承認の状況・日程
- 効果とリスクの検討・評価報告書、詳細日程計画書、議事録など
参照書類欄には、以下のような書類のNo.を記入します。
6Dレポート
6Dレポートには、「対策効果の確認・検証」についてまとめ、以下内容を記載します。
- 理論的・実験的な分析結果、暫定対策と不具合メカニズムの一致
- 暫定対策による現場、現物、現実(現象)への影響の合理性
- n増し(追加試験)テストの必要性、日程
- 机上検討報告書、実験報告書、暫定対策の効果調査書など
参照書類欄には、以下のような書類のNo.を記入します。
7Dレポート
7Dレポートには、「再発防止策」についてまとめ、以下内容を記載します。
- 情報が助けになる部署への展開(ヨコ展、水平展開)状況
- しくみ、規則への反映状況
- 変更規則書類No.、ヨコ展通知書など
参照書類欄には、以下のような書類のNo.を記入します。
8Dレポート
8Dレポートには、「顧客承認と活動評価」についてまとめ、以下内容を記載します。
- 顧客承認の状況
- 今回の活動における改善すべき点と、継続すべき良かった点
- 議事録など
参照書類欄には、以下のような書類のNo.を記入します。
3.将来を見据えて8Dレポートの有効活用を
ドキュメントの作成には膨大なエネルギーを必要とする場合もあります。
しかし、作成した結果だけではなく、作成過程自体も考察力や知識などの技術的ポテンシャルを高めることに役立ちます。
8Dレポートを、質の高い活動を行うためのチェックシートとして活用し、さらにプロセスも含めた技術の伝承に活用できれば、現在の問題解決だけでなく、将来の不具合防止と人材の育成にも役立ちます。
(アイアール技術者教育研究所 H・N)
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