3分でわかる技術の超キホン 3Dプリンタの方式にはどのようなものがある?
今回のコラムは「3Dプリンタ」のお話です。
プリンタと聞くと、通常インクジェットプリンタのような平面に印刷するイメージが浮かびます。
これが3Dプリンタとなると立体を形成することになります。
したがって、このプリンタに入力するデータも、3D-CAD、3D-CGなど立体を形成するためのデータの入力が必要です。今回は立体を形成するプリンタにはどのような方式(種類)があるのかを中心にご説明します。
目次
1.3Dプリンタの方式(種類)と各方式の特徴・用途
3Dプリンタの歴史は今から40年ほど前に国内で考案されました。
当初は産業用途でプロトタイプの部品などを製作するために利用され、当時は大変高価なものでした。
しかし、時間の経過とともに低価格化が進み、民生用の製品を見かけるようになり、ずっと身近な存在となりました。
現在では、使用する材料や加工法により、主に以下のような方式があります。
① 光造形方式 (SLA: Stereo Lithography Apparatus)
「光造形方式」は、光硬化性の液体樹脂の材料を使用して、紫外線レーザー光の照射により一層ずつ積層して形成します。
比較的に大型の部品の製造も可能で、微細性に優れています。
② 熱溶解積層方式 (FDM: Fused Deposition Modeling)
「熱溶解積層方式」は、熱可塑性の樹脂のフィラメント材料を高温で溶かし、ノズルから一層ずつ積層させることで形成します。
高い耐久性や耐熱性に優れていますが、表面の滑らかさなどに欠けます。
③ 粉末焼結積層方式 (SLS: Selective Laser Sintering)
「粉末焼結積層方式」では、粉末状の樹脂や金属に、高出力のレーザー光を照射することで焼結させて形成します。
微細性や耐久性に優れており、鋳型などの製造にも用いられます。
④ インクジェット方式
「インクジェット方式」には、光硬化性の樹脂をインク状にして吹き付けて、紫外線を照射して固形化させる「MJ方式 (Material Jetting)」と、粉末状の素材に「バインダー」と言われる結合剤を吹き付けて加熱により固める「BJ方式 (Binder Jetting)」があります。BJ方式は「粉末固着積層方式」とも言われます。
いずれも表面が滑らかな仕上がりで、微細性に優れています。
⑤ シート積層方式
シート積層方式には主に2つの方式があります。
「積層製造方式 (Laminated Object Manufacturing)」は、熱可塑性樹脂の薄いシート間に特殊な接着剤を用いて積層していく手法です。
もう一つは「超音波結合方式(Ultrasonic Consolidation)」で薄い金属シートを超音波により積層結合する方式です。最終工程でカット作業などが生じるため後加工する用途にメリットがあります。
なお、使用に際しては、その機器の設置環境により空調設備が必要となったり、洗浄装置などの付帯設備が必要となる方式もあります。
以下に方式ごとの特徴などをまとめました。
【3Dプリンタ・方式別の特徴まとめ】
2.従来技術(鋳型・金型)と比べた3Dプリンタのメリット
先に3Dプリンタの方式を説明しましたが、このような立体を製作するための従来技術としては、「型」によるものがあります。「鋳型」とか「金型」とかいう言葉を聞かれた人もいるかと思いますが、これらを使って立体を作り出すことが一般的です。
鋳型に溶かした金属を入れて作ったものが「鋳物」であり、いわゆる「射出成型」では金型内にプラスチックなどの合成樹脂を加熱溶融させて注入して成型物を作成します。
このように鋳型、金型という型を一旦作成すると同じものが量産できます。
しかし型を作成するには大量の時間を費やし、完成するまでに何回か試作を行うことが必要となります。
もちろん、旋盤やフライス盤などを使用して、型物が必要でない「削り出し」という加工で作ることもありますが、これも高価であり単品ものなどの製作に使用されます。
これに対して、3Dプリンタは、短期での製作が可能となりました。また、材料を強化することで耐久性が必要な単品・小ロット品の製造などにも用いられることもあります。
さらに、部品の組合せや機構の検証が、素早く容易にすることが可能という点も大きなメリットです。
3.3Dプリンタの選択のポイントと注意点
3Dプリンタを選択(選定)する場合は、以下の点を確認・注意しましょう。
- 材料の入手しやすさ、また安価である。
- 付帯環境の必要性ができるだけない。
- 造形前後の材料の取り扱い上の安全性。
- 作成の目的が、実使用に耐えられるものを求めるのか、機構検証など確認用などか?
- 仕上がり具合への要求レベル。例えば表面の滑らかさ追求するのか 積層時の段差は許容できるか? など
3Dプリンタの市場は当初工業用などプロ向けが主流でしたが、最近では家庭向けなど数万円で買えるものまであり、急速に裾野が広がっています。
主な購入の目的として試作品を作る、治工具を作る、機構検証を行うなどがあります。
3Dプリンタについては、著作権侵害となる模造品を作成する行為や、銃を違法に作成する行為など、法的あるいは倫理的に様々な問題点もでてきています。
使用にあたっては、当然ながら法に触れない使い方をすることが重要です。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 T・T)