3分でわかる技術の超キホン ツェナーダイオードとは?原理と特性、使い方などミニマム解説
電子回路を構成する部品のなかに、「ツェナーダイオード」という部品があります。
ダイオードの一種で「定電圧ダイオード」とも呼ばれ、名前の通り一定の電圧を得ることができるダイオードです。
形状は、図1(a)のようなダイオードと同様の形をしています。他に表面実装用のものもあります。
また、回路記号は、図1(b)のようになります。
【図1 ツェナーダイオードの形状と回路記号】
ツェナーダイオードの原理と特性
それでは、ツェナーダイオードの原理を見ていきましょう。
図2は、ツェナーダイオードの電圧電流特性を示す簡単なグラフです。
【図2 ツェナーダイオードの電圧電流特性】
図のように、ダイオードに逆電圧を加え、徐々に電圧を上げて行くと、最初はわずかしか流れなかった逆方向電流が、ある電圧を超えると急に大きくなる現象が起こります。
これを「降伏現象」といい、またこの現象が起こる逆方向電圧の大きさを「降伏電圧」(ツェナー電圧)といいます。(※図では、約4V)
ツェナー現象とアバランシェ現象
実は、降伏現象は2つの現象が起こっています。
それは、ツェナー現象とアバランシェ(電子雪崩)現象です。
「ツェナー現象」は、ダイオードに逆電圧を掛けると「空乏層」ができますが、不純物濃度が高い半導体を用いると空乏層が薄くなります。ここに高電界がかかると、トンネル効果でキャリアが空乏層を突き抜けて電流が流れます。これが「ツェナー効果」です。
逆電圧をかけられたツェナーダイオードは、降伏電圧に等しくなるように電流が流れます。
また、「アバランシェ現象」とは、半導体などの内部に非常に強い電界がかかった場合、最初はわずかに存在した電子や正孔が、その電界で急激に加速され、他の半導体原子に衝突しながら複数の電子や正孔をたたき出し、たたき出された電子がまた加速され…という風に雪崩のように急激に増加する現象を言います。
電圧を上げようとしても、電流がどんどん増加するので、ツェナーダイオード両端に生じる電圧はほとんど一定になります。
このツェナー現象とアバランシェ現象とは、一般には降伏電圧が小さいときはツェナー現象が優位になり、降伏電圧が大きいときはアバランシェ現象が優位になります。
さらに、不純物濃度を制御すると、降伏電圧(ツェナー電圧)を制御することができるので、任意の電圧のツェナーダイオードを作ることができます。
ツェナーダイオードの役割・使い方
ツェナーダイオードには、主に以下の2つの役割があります。
(1)一定の電圧を得る
一つ目のツェナーダイオードの役割は、「定電圧ダイオード」といわれるように一定の電圧が得られるということです。
図3の回路は、12Vの電源から5Vの電圧を作ることができる基本的な回路の例です。
抵抗とツェナーダイオードで構成されています。
電流はあまり流せませんが、「システム全体は12Vだが、部分的に5Vが欲しい」といった場合などに用いられます。
【図3 ツェナーダイオードを用いた回路の例】
(2)ノイズ保護
2つ目のツェナーダイオードの役割は、ノイズ保護という役割です。
図4は、マイクロコンピュータの入力ポートに外部から信号線が接続されている図です。
【図4 ツェナーダイオードによるノイズ保護の例】
外部から何らかのサージ電圧が加わった場合には、ツェナーダイオードが無いと、入力ポートに過大な電圧がかかりマイクロコンピュータが故障してしまう可能性があります。
そこで図4のようにマイクロコンピューターの入力ポートのラインにツェナーダイオードを入れると、外部からのツェナー電圧以上の電圧は、ツェナーダイオードがグランドに流すことによって、入力ポートには過大な電圧がかからないようにすることができます。
このように、ツェナーダイオードには、ノイズからICなどの部品を保護できるという役割もあります。
以上、今回は地味ながら重要な役割がある電子部品「ツェナーダイオード」の基本を解説しました。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 E・N)